再録SS ユッテ、スカートを作る
過去、活動報告にのせたものの再録です。
「ううーん……こっちだと汚れが目立つか……こっちは薄すぎる……」
「お嬢ちゃん、何をお探しだい」
「え! ああ……あの布を……」
「生地屋で布を探してると言われてもねぇ……」
苦笑しながらこちらを見るお店のおばさんを見て、私はハッとなった。何をやってんだか。あたしは市場の露天の生地屋で布地を見繕っていた。
「あのその……す、スカートを作ろうと思っていて」
「ああ、そうかい。お嬢ちゃんに似合いそうなのは……はいこれ」
山と積まれた生地の中からおばさんが引っ張り出したのは鮮やかな黄色い生地だった。
「……ちょっと明るすぎません?」
「なに言ってんだい、お嬢ちゃん。あんたくらいの歳の子はこういうのが好きかと思ったんだけどねぇ」
「やっぱちょっと……あとあんまり予算もないから」
「そうかい」
ちょっと残念そうな顔をされてしまった。さすがに真っ黄色のスカートを毎日はいて生活する勇気はない。
お財布をと相談しつつ、スカートに適当な厚みの地味目の布地を見つけるとあたしはそれを購入した。
「この長さだと、お嬢ちゃんが着るには長すぎないかい?」
「いいんです、これで」
抱えた布はずっしりと重い。なんでこんなに布を買い込んだかというと……決めていないのだ。どんなスカートを作るのか。
「うーーん」
『金の星亭』の屋根裏の自室であたしは布とにらめっこしていた。ワンピースにするか……ううん、それだと袖周りをどう縫ったらいいのか分からない。
「やっぱ、あたしに作れそうなのは単純なスカートか」
買ってきた布地をくるりと体に巻き付ける。長さはこんなもんか。
「……どうしたらいいんだ……?」
繕い物ならいくらもしたけど、服を作ったことなんてない。市場で布じゃなくて古着を買ってくれば良かったかな。でもせっかくだから新品でって思ったんだ。このまま首を傾げていても時間の無駄だ。ハンナさんに作り方を聞こう。
「ええ……? スカートの作り方?」
「はい、布を買って着たんですけど……簡単な作り方を教えてもらえますか」
「あらこんなに買ってきたの……だったらここをこうたたんで……」
ハンナさんに作り方を聞くと、すぐに教えてくれた。ついついと布に印をいれていくハンナさん。
「こうやって切ってこことここを縫ったらまた続きを教えるわ、腰には紐を通せばいいんじゃないかしら」
「ありがとうございます!」
言われたとおりにスカートの布地を切り取り、端を縫い合わせる。うーん? なんかちょっと大きいような……。
「あのハンナさん、出来たんですけど……」
「はいはい、では次はすその始末を……ってあら?」
ハンナさんがハッとした顔でこちらを見る。あたしもやっぱりかと思ってハンナさんを見た。
「これ、大人サイズですよね」
「あは……ごめんなさいユッテちゃん」
「いいんです大きい分は腰は紐で縛ればいいし、裾は……切るのはもったいないかな」
「それじゃあ多めに裾をたたんで……あら? あら?」
ハンナさんに手伝って貰いながらあたしの身長にスカートを会わせると布地の半分くらいが折りたたまれてしまった。図らずもたっぷりの布地をつかったせいで出来上がったスカートは歩く度にフワンと揺れる。
「はは……まぁ、これはこれでいいか」
背丈が伸びれば裾を出せばいいし……。うん、無駄にはなってない。そうだ、これルカに見せてやろう。どんな顔をするかな?
あたしは出来上がったスカートを身につけると、スカートに足を取られながらも階段を一気に駆け下りた。
新作はじめました。
ほのぼの日常、恋愛もちょっと。な作品です。
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