表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
128/132

番外編 港町に行こう!

「あ、ユッテ! 来週クラウディアとフォアムへの買い付けに行くけどお土産なにがいい?」

「あ?」


 朝食の皿を片付けていると、ルカが脳天気な顔で笑いながら言ってきた。フォアムとはここからずっと南の港町だ。


「クラウディアってあの……商学校の同級生?」

「うん、すごいんだ。一番の成績で卒業した後は頑張って家業を手伝って、ついに一番重要なフォアムでの仕入れを任されたんだって」

「へー……」


 何度か金の星亭(うち)に食事に来た事もある。茶色い髪に白い肌の美人だ。おっとりしたお嬢さんであたしとは正反対だなって思ったけど……。


「すごいだろ!」

「うん……」


 美人で育ちも良くてその上仕事もばりばりこなすのか……。あ、やだなこんな考え方。素直に頷けない自分にうんざりしながらあたしは黙々と皿を洗う。


「それで、僕も一緒にどうかって言われたんだよね。行きたい行きたいと思いながら忙しくて今まで行けてなかったから、この機会に行ってみようって。海だよ海! そうだ、ユッテには貝殻のネックレスとかがいいかな?」

「うーん、いらない」

「そう? じゃあ……食べ物がいい?」

「そうじゃなくてお土産はいらない。あたしも行く」

「えっ」


 ルカがその青い眼を見開いてこちらを見てる。そんなにびっくりしなくてもいいだろ。


「仕事はなんとかするよ。この頃みんな仕事覚えてきたし……なんだよ。あたしがいちゃ邪魔か?」

「ううん……ただ、ユッテが仕事を放り出すなんて……明日は雨かなって」

「なんだよそれ」

「でもそうだよねぇ……ユッテも海見たいよねぇ……」


 海はそんなに見たい訳じゃないけど。ただクラウディアと一緒なのが引っ掛かるからついて行きたいだけ。こんな事ルカに言ったら調子に乗りそうだから言わないけど。


「海、海って……。ルカなら海を越えてヘタしたら外国まで行きそうだったのにな」


 あたしはチラリと暖炉の上の宝石の嵌まった短剣を見た。これはまだルカが小さかった頃の活躍で領主様から貰ったものだ。あの頃のルカの行動力はすごかった。思いもかけない思いつきで周りを巻き込んで、色んな常識を変えてしまった。


「ははは、そんな事もあったね」


 ルカは照れくさそうに頭を掻いている。ルカは丁度この金の星亭の別館が軌道に乗った頃から大人しくなっていった。もちろん宿に対する情熱に変わりはないんだけど。


「今さらだけど、商業ギルドとかからも声かかってたろ? なんで断ったんだ?」

「うーん、自分のやりたい事がなにか考えた時にそれは違うなって」


 ルカは薄く笑いながらあたしを見てくる。


「僕のしたい事はね、家族とこの宿のみんなが笑顔でいてくれる事だよ。それが僕の幸せなんだ。だからその幸せの為に、僕は頑張れたんだと思う」

「そっか……じゃあさ、その夢叶ってるね」

「……うん!」


 あたしがそう言うと、ルカは顔をくしゃくしゃにして頷いた。


「海……楽しみだね」

「ああ、新鮮な魚が一杯食べられる!」

「本当に魚が好きだな、ルカは」


 そして週が明けてフォアムに向かう日がやってきた。みんなが出口で送り出してくれる。


「ユッテちゃん、ルカが迷子にならないようによく見張っててね」

「はい、ハンナさん」

「ならないよ! 子供じゃないんだから」

「お兄ちゃん、お土産忘れないでね!」

「はいはーい。じゃ、行ってきます!」


 あたし達はそっからディンケル商会に向かった。この仕入れ用の荷馬車でフォアムまで向かうのだ。


「あ、ルカくーん」


 クラウディアが手を振っている。あー……やっぱ美人だな。別にあたしだってブスじゃないと思うけどこう顔立ちがキツくて……。


「あ、ユッテちゃんにも紹介するね、こちら今回一緒にフォアムに同行します婚約者のロベルト」

「どうも、はじめまして」

「こ、婚約者……?」


 あたしはそれを聞いてずっこけそうになった。


「クラウディア、よかったね。初恋が実って!」

「うふふ。ほんとね」


 ほんのりと頬を染めて嬉しそうにロベルトさんの横に並ぶクラウディア。


「あはは……よろしく」


 あたしはそれを見てなんかいいな、と小さく呟いた。


新作はじめました! ハーブがテーマの恋愛ファンタジーです。


魔法の薬草辞典の加護で『救国の聖女』になったようですので、イケメン第二王子の為にこの力、いかんなく発揮したいと思います。


https://ncode.syosetu.com/n4306fz/



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

2022年10月17日 コミック発売! よろしくお願いします。

百花娘々奮闘記~残念公主は天龍と花の夢を見る~

作画 朱子弘清 原作 高井うしお

書籍情報:https://www.kadokawa.co.jp/product/322206001020/

✿発売記念キャンペーンもやってます✿ https://maho.jp/comic/campaign/flos2022/

i681377
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ