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セラミックの激うま恐竜レシピ  作者: 印朱 凜
エピソード4 恐竜ステーキ 
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恐竜ステーキ 11ポンド目


 洞窟に戻ったセラミックは、早速焚き火を始めて湯を沸かし、松上に貰った恐竜の卵を2個茹でた。

 そして大きな茹で卵を作ると固い殻を剥き、サバイバルナイフで縦に半分に切ったのだ。


「恐竜の卵とランチョンミート缶で、何を作るつもりなんだ?」


 まさかこの場で料理するとは思わなかった松上が、セラミックの手際いい作業を不思議そうに眺める。


「えへへ……セラミック風デビルドエッグですよ!」


 セラミックは固茹で卵から黄身だけをくり抜くと、シエラカップの中でランチョンミートと一緒に潰して和えた。そして味を付けた黄身を丁寧に元の白身に戻して盛り付けたのだ。


「さすが恐竜狩猟調理師を目指しているだけあって、料理のアイデアがすごいな。ちょっと俺には無理だ」


「いや、それほどでも~」


 セラミックが謙遜していると、シンプルな卵料理を口にした松上から意外な言葉が発せられた。


「セラミック、君の恐竜料理は本当に美味いな……」


 松上のしみじみとした言葉に、セラミックは一瞬……固まった。大きな茹で卵のように。

 これこそ、セラミックが今まで願って止まなかった、欲しがっていた台詞なのでは?

 ――松上に心から言わせたかった言葉がついに出た。

 セラミックが作った料理で、とうとう松上に美味いと言わせたのだ。


「黄身の料理ですか? それとも君の料理ですか?」


 プルプル震えながらセラミックは、意味不明な質問を真顔で聞き返してしまった。


「何言ってんだ、セラミックが作った茹で卵はイイねと言っただけだ。こんな状況で腹が減ってりゃ、何を食べても誰でも美味しく感じるはずさ」


 少し戸惑い気味の松上は、ひねくれた言葉に置き換えてきた。それでも嬉しかったセラミックはデビルドエッグを持ったまま、松上と背中合わせになって体重をぐいっと掛けた。


「や、やめろよ! せっかくの卵を落としちまう!」




 それからはまた、ただ静かな時間だけが過ぎてゆき、セラミックと松上は焚き火の炎を見ながら、とりとめのない会話をした。


「原始人の生活ってこんなだったのかしら」


「そうだな、我々の先祖は外敵の肉食獣に怯えながら穴居生活していたはずだぜ」


「もし助けが来なかったら、私達このままジュラ紀でサバイバル生活しながら生きていくのかな」


「馬鹿言え、すぐ救援隊がやってくるさ。心配しなくても大丈夫だよ」


 大きな瞳に炎を映しながらセラミックは夢想する。

 太古の昔に取り残された2人は、アダムとイブになりました。

 誰からも邪魔されないこの地でエデンの園を築き上げました……。




「……さあ、かわいい娘達。パパが夕食を仕留めて帰ってきたわよ!」


「わ~い!」


「ほら、今日の獲物はキリンのように首が長い竜脚類、ディプロドクスの尻尾だよ! 残念ながら本体の方は逃がしちまった! ごめんよぉ」


「もう、何やってんのよ!」


「ママ、おっぱいがはみ出しているでちゅ!」


「いやぁ! ジュラ紀はブラが売ってないから困るわ~」


「ブラどころかパンツも売ってないからノーパン生活だぜ」


「そんな事より、この子達の学校教育はどうするのよ!」


「俺が読み書きから面倒見てやるよ。こう見えても非常勤講師として、大学で講義していた経験もあるんだぜ」


「パパ、おヒゲが長いでちゅ」


「ああ、髪の毛もボサボサだな。コンタクトもなくしちまったけど、生きていく上では特に問題ないな」


「はぁ~、ケータイもテレビもなしか……。電気はいいとして私が心配なのは、怪我したり病気になった時よ。病院も薬もないのよ」


「1億年前の世界だけど、自然に即して生きる事……これこそが本来あるべき生物のスタイルなのかもしれない。寿命が短くても、ある意味これほど幸せな生き方はない。セラミック、俺より早く死ぬんじゃないぞ」


「あなた……恐竜に襲われるのだけはイヤだわ」


「俺達は奴らより1億年以上も進化しているんだぜ。生物としての完成度が違うよ。当然、頭脳もケタ違いだ。返り討ちにしてやるまでさ!」


 

 


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