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セラミックの激うま恐竜レシピ  作者: 印朱 凜
エピソード4 恐竜ステーキ 
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恐竜ステーキ 5ポンド目


 綺麗好きな中山健一は、汚物が付着したブーツを狂ったように地面に擦り付けたりしているが、滑り止めの凹凸が多い靴底は簡単には拭えない。もはやチームの歩調は乱れに乱れ、前進する意思は失われてしまったかのようである。


「おい! 健一君、先頭はもっとクールになれよ。そんなに動揺しなくてもいいだろう」


 松上リーダーが諭すと、彼は半泣き状態の顔を上げ、感情を露わにした。


「あなたには分からないの? 踏んでしまった人の精神的なショックが。昔の、小学生時代のトラウマが蘇る~!」


 彼の心の痛みは、大体察しが付いたが、チームの先導役の人間としては少々沈着冷静さが足りない。


「しょうがねえな~。……落ち着くまで一旦ここで休憩でもするか」


 丁度、丘陵地帯の崖上辺りだったので、周囲の見晴らしは最高だった。

 休憩中に、松上晴人は嬉しそうに荷物を降ろすと、リュック上に背負ったドローンを起動させた。

 吉田真美は、セラミックと顔を見合わせると、呆れたように言う。


「ちょっと、こんなとこで何するつもりなの?」


「松上さん、近くに恐竜がいるんですよ」


 松上晴人は注意深く周囲の安全確認を行うと、VRゴーグルをはめてドローンの小型カメラから送信されてくる映像の同期具合を確かめた。


「セラミック、近くに恐竜がいるからこそ、このドローンで観察しに行くのだよ!」


「ダメだこりゃ! まるで新しいオモチャを買い与えられた子供だわ」


 真美さんが目をつぶって、頭を抱えるのも無理はない。業者からのレンタル品である新兵器の性能を試す絶好の機会に、松上リーダーは興奮を隠しきれない様子だったのだ。


「それではジュラ紀の空中散歩、いや恐竜の偵察飛行に行って参りますゆえ、宜しくお願いします」


 平らな地面に置いた4ローターのドローンは、LEDの光を放ちながら軽快なモーターの駆動音と、プロペラが巻き起こす強い風を残して、10メートル以上を一気に垂直上昇した。


「わお~! 素晴らしい! まるで自分が空を飛んでいるみたいだ」


 松上は頭部に固定したVRゴーグルを通して、限りなく現実に近い飛行を絶賛体験中である。

 映像はパソコンのモニターを通じて、真美さんとセラミックも見る事ができた。


「凄いね~、確かに。ドローンのカメラが見た映像を、我々もリアルタイムで見ることができるって訳か」


「きゃ! 空中から見る古代の風景なんて、ホント初めてで、何だか新鮮!」


 セラミックは後で松上からVRゴーグルを貸して貰おうと、真美さんの肩を揺さぶった。


「ははは、俺は翼竜の翼と眼を得たかのようだ!」


 送信機のコントロールスティックを器用に動かしながら松上は、丘の上にいたカンプトサウルスの数頭に向かってドローンを飛翔させた。


 身長5メートルはあるカンプトサウルスは、頭上から迫ってくる見慣れない飛行物体に若干警戒心を強め、手で引き寄せた葉っぱを口で千切る動作を中断したのだ。


「これは本当に使える! 恐竜ハンターの眼となり耳となり、将来において必需品となるかもな」


 次の瞬間、松上はドローンのVR映像を通して異常を察知した。奴らが、草食恐竜達が、警戒音を発したのだが、どうも視線が明後日の方向を凝視しているように思えたのだ。空中のドローンを全く見ておらず、別のより大きな脅威に対して怯え、緊張が走っているように見える。


「オイオイオイ、まさか……」


 その時VRゴーグルをした松上晴人の聴覚に、中山健一からのイヤな情報が飛び込んできた。


「ちょっと! 私が踏んじゃったのは、草食恐竜の糞だけじゃないわよ! 未消化の骨が混じっている臭い物も混じっている!」

 





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