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セラミックの激うま恐竜レシピ  作者: 印朱 凜
エピソード3 恐竜ずし
31/74

恐竜ずし 4貫目


 斜め前方の針葉樹林の影から、中型の獣脚類と思われる恐竜が頭をもたげた。特徴的な3つの角を見せた姿から、肉食のケラトサウルスと考えられる。


「――! 出やがったか……」


 松上は刺激しないよう、慎重にステアリングを操作しながら迂回するルートを選んだ。すると突如、停車した2番目の車両の屋根からM2重機関銃の12.7㎜弾が短いサイクルで斉射された! この口径の弾に当たると、どんな生物だろうがズタズタに引き裂かれ、血煙と肉片と化する。


「やったぜ! 凶暴な恐竜を一撃で倒したぞ!」


 興奮状態のジョンが、金網の屋根に転がった薬莢とベルトリンク片を払い落としながら、マックスに向かって叫んだ。


「すげえ! 写真に収めて、俺の彼女にパソコンで見てもらおう」


 松上が急ブレーキをかけたので、シートベルトが真美さんとセラミックの柔肌にくい込んだ。


「こら! 誰が発砲していいと言った! ふざけるな!」


「What!? 何だと!」


 ジョンとマックスがサングラス型のゴーグルを光らせた。


「何言ってやがる、この頓痴気な野郎は! ここはジュラ紀の世界だぜ。つまりいくらぶっ放そうが、日本の法制とかは全く関係がないのさ」


「そうとも、ジョンの言った通りダイブ後は治外法権って訳だ。てめえの生意気な口にライフル弾をお見舞いしても、誰からも罪を咎められたりしないって事なんだぜぇ」


 運転席から降りたマックスは、背の方に回していたSCAR(MK17)と呼ばれる強化プラスチックを多用した銃の安全装置を外す仕草を見せた。……2人は日本語を自由に使いこなす事ができるという基準で、今回のダイブにおける護衛役に抜擢されたらしい。つまり特殊部隊員としての品格や実際の戦歴に関しては、あまり選考基準として重視されていないのだ。


 松上晴人も狭いシートから降り立ち、ゴーグルを外した。


「無闇に恐竜を殺すなんて、本当にあり得ない。今撃ち殺したのは、希少なケラトサウルスだぞ。草食恐竜より肉食恐竜の方が圧倒的に数が少ないって事実を知らないのか」


 ジョンは胸のポケットからタバコを取り出すと、オイルライターで火を付けた。


「もし撃たなかったら襲われていたかもしれないぜ、俺達チーム内の誰かがよ……」


「そうさ、とっくに恐竜からは見付かっていたしな。進路上に存在する脅威と危険性を、前もって排除しただけじゃないか」


 無骨なシールズ隊員達がそう言うと、今度は最後列の松野下佳宏が答えた。2人に向かって溜め息混じりに言ったのだ。


「……1頭殺した事で、その血の臭いを嗅ぎつけてスカベンジャー(腐肉あさり)どもが四方八方から集まってくるんだ。この場所は、もうすぐ大小恐竜どもが集まるお祭り会場になるぜ。ほら! あれを見てみなよ!」


 上空には早くも中型翼竜の姿が、木々の梢の隙間から刹那に影を落とし込んでみせた。深い森の奥からは、今まで聞いた事もない不気味すぎる鳴き声が、毛羽立つ精神を逆撫でするビープ音のごとく、あちこちから響き渡ってくる。


 森岡世志乃の前に座るDr.のハンクは、英語で何か聞き取れないような文章を小声でブツブツと繰り返していた。彼は冷や汗びっしょりで震えが止まらず、胸元から取り出したロザリオに向かって何か祈りを捧げていたのだ。


「さあ、先を急ごう。松野下リーダー、一応ケラトサウルスのサンプルを回収しておこう」


 松上はそう言うと、吉田真美とセラミックをキャラバンに残し、アメリカ調査隊に5分間だけの調査を許可したのだ。当然、子供のように騒ぐ調査隊の作業は、時間内に終わりはしないだろうが……。







 

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