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セラミックの激うま恐竜レシピ  作者: 印朱 凜
エピソード1 恐竜カレー
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恐竜カレー 1皿目

  第1話 恐竜カレー


「行ってきま~す!」


 アニメの主人公のようにクロワッサンを咥えたまま、自転車に乗るセーラー服の女の子。前カゴを改造してランチプレートを置けるようにしている。振動でこぼれないように工夫されたスクランブルエッグ用のトレー、ソーセージ用ラック、ナイフとフォーク用ホルダー、牛乳パック保冷庫まで装備。手が汚れても大丈夫なようにハンドルグリップには紙ナフキンが巻かれていた。セミロングの黒髪がかかる肩口には紙エプロンがはためく。

 自転車で走行しながら食事しても決して下品ではなく、どこか優雅で周囲をほのぼのとした気分にさせる雰囲気は、彼女の生まれ持った天性なのかもしれない。まるで滋賀県の守山市においては当たり前のような、とても絵になる風景なのだ。

 セラミックこと瀬良美久は、まだ高校2年生であるが、恐竜が闊歩しているジュラ紀に繋がっているという謎の穴、通称“ジュラアナ長野”を探検するために毎日自己流の修行に励んでいる。

 彼女の夢は世界初の恐竜料理専門店を開店する事……。


 翼竜が年間数百匹も現代世界に飛来する今日では、恐竜の存在はすっかり新鮮味や価値を失ってしまった。逆に人類の安全を脅かしたり、畑を荒らす厄介な害獣扱いに成り下がっている。日本人らしいと言うか、政府が取った政策は意外にも……いや、当然のごとく『食材として利用しよう』だった。

 誰かさんが恐る恐る調理して食べて気付いてしまったのだ。

 恐竜肉が、とてつもなく美味しい肉である事実を。

 鳥類に進化する恐竜、いわゆる竜盤類の中の獣脚類は温血動物で羽毛に覆われており、見た目も行動も鳥そっくりだった。当然肉質も鶏肉そのもの。いや、高級地鶏と比べてもはるかに上質なコクと旨味と脂のノリは、一度でも口にしたら忘れられなくなる夢のような味と食感なのだ。


 セラミックの自宅は店舗兼自宅で、父親はカレー店を家族経営で切り盛りしている。黄色い看板にカレー皿のトレードマークは、とあるカレー専門店を彷彿とさせるが、ここは黙っておこう。

 彼女の場合、中学生の頃は服にカレーの匂いが染み付いていないか常日頃から気にしていたが、今ではカレー臭をむしろ誇りに思うようになっていた。脱サラした後、独学で料理を学びながら飲食店を起ち上げ、家族を扶養するまでになった父親を心から尊敬しているからだ。

 まさか、そんな父親と対立する事になろうとは、登校中のセラミックには知る由もなかったのである。


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