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セラミックの激うま恐竜レシピ  作者: 印朱 凜
エピソード3 恐竜ずし
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恐竜ずし 2貫目


 ここは松上晴人の本拠地でもある鹿命館大学の大学院。世間の喧噪から解き放たれたかのような閑静な丘陵地帯にある。いつも通り白衣姿の彼は、自然科学研究科の研究室があるブロックにいた。

 この度は依頼された仕事の特異性から、松上がタッグを組む恐竜ハンターのうち主要メンバーが招集されたのだ。2Fにある会議室で、ミッション参加の是非について5名で話し合いが行われている。


 αチームからはワイルドな服装の松野下佳宏と清楚な森岡世志乃のペア。


「天然のワームホールであるジュラアナ長野は、寸分違わず長野県……日本国領内に存在している。それにも関わらず諸外国が、その莫大な権益を狙って暗躍していると聞く。このままでは領土や主権まで脅かされかねない」


「う~ん、それは、すごく当然の事でしょうに。中生代のジュラ紀に繋がる世界唯一の貴重なルートですよ! 少し考えただけでも天井知らずの価値があるのは、小学生にだって分かりますよ」


 βチームは白衣姿の松上晴人とスーツの吉田真美、それになぜか学生服のセラミックだ。


「アメリカは同盟国である事を最大限に利用して、あの手この手で日本政府に食い込み、無理な要求を突きつけてきている。すでに共同調査権なるものも認めさせられた。アメリカに弱みを握られ、言いなり状態の日本は外交努力を放棄し、国益の事を考えるのを止めてしまったみたいだな。自国に不利な条件を鵜呑みにしている」


「ここで何とか踏ん張って、長野の至宝に対する独占的利権を守りつつ、うまく立ち回ったりして不当な外圧と戦って見せれば、日本の政治家の力量を随分見直したのに――ダメだね~。やっかいなのは利権を狙うのはアメリカだけじゃないって事! 貪欲で礼儀知らずの周辺国家が、すぐ近くにぶら下がってるお宝を喉から手が出るほど欲しがってるみたい。このままじゃ海を渡って長野県ごと占領されかねない状況よ」


 セラミックは遠慮がちに周りを見回すと、真美さんの発言に付け加えた。


「ジュラアナ長野は、無尽蔵の石油が湧き出す油田以上の価値があって、国に莫大な利益をもたらす……って事ですよね?」


 αチームのリーダー松野下は、うんうんと頷いた素振りを見せて言う。


「政府は、お人好しで事なかれ主義。生来の島国根性を絶賛発揮中って感じかね。今日も作り笑いで弱腰外交を続けているのが、情けないったらありゃしない。逆に共同開発を他国に持ちかけているほどだぜ」


 ホワイトボードの横に立つ松上晴人が、飾りっ気のない無機質な机に並ぶ一堂の顔を見回した後に言った。


「さて、諸君。今回のミッションの概要は配った資料の通りだ。どうするか……受ける、受けないは、もちろん個人の自由。皆の意見を聞かせて欲しい」


 βチームの吉田真美は意外にも即答した。


「いいんじゃない? 海までの案内役とバックアップだけなんでしょう。自分がハンティングに参加する訳でもないし、危険性は低いと思うわ」


 αチームもだいたい同じ意見。


「俺も大丈夫だとは思う。アメリカ様の物量と装備、それにネイビー・シールズの護衛が付いてりゃ、無敵だろう。ただしそれは人間相手の戦いに限っての事ではあるがな」


 目を輝かせる森岡世志乃は楽観主義であった。


「βチームの松上さんと一緒に行動できるなら、問題ないですわ。ジュラ紀の碧い海までのお仕事……海は初めてなのですが貴方となら……」


「おいおい、決して楽なミッションじゃないぜ。αチームのリーダーとして忠告する」


 セラミックは松上と目が合った。黙ってニッコリして意思を表明すると、彼は咳払いしてホワイトボードに向き直った。


「……無論、考える猶予と時間は十分に与えるつもりだ。外国のチームと組む事は珍しくもないが、各自よく考えて今回の依頼を受けるかどうか、また意見を持ち寄ろう」




 


 



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