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セラミックの激うま恐竜レシピ  作者: 印朱 凜
プロローグ
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序章

  第一部 ようこそジュラ紀


 プロローグ


 

 どうして、こんな事になってしまったのだろう。

 洞窟の外は土砂降りの雨が降っており、濡れるのを嫌う恐竜達は、どこか森の奥に姿を潜めてしまったようだ。小型の恐竜などが雨宿りに入ってこないように、入口近くで焚き火をしているが、乾いた燃料がいつまで保つか分からない。

 掃除をしたものの得体の知れない大小の虫が、暗い岩だらけの床を歩き回る。湿った天井には蝙蝠の代わりに蛾のようなハゴロモがびっしりと集合し……煙に燻されて驚いたのか、飛び回ってウザい。


「……大丈夫ですか? 松上さん」


「ああ、傷はそんなに深くはないようだ。すぐよくなるよ。すまないな、セラミック」


 セラミックのすぐ隣に横たわる松上晴人は、彼女を安心させるためなのか、そんな事を嘯いたようだ。しかし左肩に巻いた包帯には血が滲み、傷を負った反応なのか熱があるようで、呼吸が若干苦しげに見えた。

 荷物の大半を失ったので、僅かな医薬品しか使えないし、すぐに底を着くだろう。


「それと寒くはないですか? 幸いな事に、ずぶ濡れにならずには済みましたけど」


「君が火を起こしてくれたおかげで、何ともないさ」


 手当てのため薄着になった松上だが、そうは言いつつも、大きなくしゃみをした。洞窟の奥から何だか冷たい風が吹いてきて、焚き火の炎をちろちろ揺らしている気がする。

 セラミックは黙って地面のお尻をずらしながら寝ている松上の傍に行き、ゆっくりと上半身を抱き起こすと、ぴったりとくっ付いた。


「セラミック……」


「ごめんなさい、松上さん。いやβチームの()()()()。一緒に生き残るためですよ。無事にここから脱出して現代に帰りましょう」


「そうだな、ところで携帯無線機は本当になくしてしまったのか?」


「はい、私の分も探しましたが見付かりません」


「俺の分は、ぶつけて壊しちまったようだ、電波が出ているかどうかも分からん。当然GPSなんてないしなあ。まあ、帰還予定時刻を過ぎて通信も途絶えたら、救援隊が捜索に出動してくれるがな」


「そうですね。真美さんと健一君が必ず助けを呼んできてくれるはず。あの2人なら、きっと中生代エレベーター基地に自力で戻ってますよ」


 セラミックと松上晴人は、現時点で残された装備を再確認した。基本ダイブは半日間で、ジュラ紀に寝泊まりは想定していないので必要最低限だ。


 武器はナイフ以外ではセラミック用の89式小銃が1丁で、残弾は20発弾倉に11発のみ。


 食料はランチョンミート缶1個にレトルトカレー1袋にビスケットバー3個とカップ麺1個、それにチョコレートとキャンディ少々。


 水は500mlペットボトル入りが1本だけだが、豊富な雨水を煮沸すれば何とかなりそう。


 救急キットの中身は包帯、滅菌ガーゼ、三角巾、絆創膏、サージカルテープ、ハサミ、ポイズンリムーバー、あとはニトリル手袋だけ。エマージェンシーブランケットも含めて殆ど使ってしまった。医薬品は手持ちの消毒薬と痛み止めの錠剤、各種軟膏ぐらいしか持ってきていないのだ。


 残りは着替えの類いで、セラミックは松上の下着を掴み取ってしまったが、すぐ元に戻した。そして軽く溜め息をついて、洞窟の外を焚き火越しに見た。


「う~ん、あと何時間、いや何日ここに留まる事になりそうですかね」


「無理に移動しない方がいいだろう。場合によっては食糧確保のために出て行く必要があるかもな」


 洞窟の奥にできた水溜まりに雫が垂れるのだろうか、不連続な音が妙に心をザワつかせる。






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