大好きな貴方
ねえ、私は貴方が大好きだったわ。過去形になっているけど、今でも好きよ。
けど、貴方はあの子を選んだじゃない。人気者のあの子を。
いえ、別にあの子を恨んでいないわ。あの子は、愛されなければいけなかったと言う事よ。
だから、貴方も恨んでいないわ。貴方は、どうせ私と別れる事位分かっていたもの。
何故、そんなことを言うのかって?
だって、貴方。私と居ても笑わなかったじゃない。だから、私と居ても楽しくなかったのでしょう。
緊張?そんな事思わなかったわ。だって、貴方。私と出会って最初の一言を覚えている?
お前みたいな女を、好きになる男は居るはずがない
貴方は、そう言ったのよ。覚えてなさそうだけど、ね。私は、忘れなかったわ。
だから、貴方が告白して来た時も、驚いたじゃない。だから、言ったわよね。
分かりました。貴方が、私を好きである限り付き合ってください。
はい、と貴方は即答したわよね。だから、私は貴方が罰ゲームで私に告白してきたのだと思ったの。
貴方は、優しくしてくれた。だから、私は貴方を好きになってしまったの。
別れると分かっていたのに。
どうして、言わなかったって!?こんな、気持ちを伝えられても迷惑でしょ!
好きでもない奴に!!その場しのぎの身代わりなのに!!
だから、貴方はあの子と幸せになれば良いじゃない!今更、優しくしないで!!
これ以上、私を惚れさせてどうするのよ!貴方と、付き合いたくなるわ!
だから、私は違う学校に行くの!!全寮制の学校に!!
良かったじゃない!私の顔なんて見なくて済むわよ!
私も、貴方が私の事なんて好きって言う戯言を聞きたくないわよ!
私に希望を見させて、何が楽しいのよ!
えっ・・・?私の事が好き?最初の一言は、照れ隠し?あの子と付き合ったのは、嫉妬してもらいたかったから?
あははは!貴方までそんなこと言う。大丈夫、信じないわ。
ほら、あの子が見ているわよ!傍に行ってあげて。
今すぐ、私の前から消えて。 大丈夫、そんなに念を押したって、貴方達の邪魔をしないわ。
だから、そんな事言わないで。泣きながら言われたら、信じたくなるから。
あの子と幸せになって。
だから、さようなら
私の大好きな、愛しい人。
ある所にある、病院。そこの一室で一人の少女が寝たきりになっていた。色んな機械に繋がれ、身体中に包帯が巻かれている。大事故に遭い、幼児を庇った少女は、何とか一命を取りとめたが、意識は戻ってない。
ふと、少女の腕が伸ばされる。天井に向かって、まるで、何かを掴もうかとするように。
ゆるゆると、少女は瞼を開く。焦点が定まっていない瞳。声にならない声が、空気を震わせる。
さようなら 大好きな貴方
バンッ
ドアが開く音と共に、少女の腕は、崩れ落ちた。まるで、糸が切れた人形のように。入って来た彼は、力を失った腕を握りしめる。
ピー
無機質な機械音が鳴り響き、少女がこの世の者では無くなった事を告げた。
彼は、彼女にしがみ付きながら、泣き叫んだ。そうしていれば、少女は戻ってくるとしんじているかのように。
大切な物を失ったのであれば、失くさないようにしがみ付けばよかったのに。
少女を、追い駆けたら、もう遅かった。
少女は、もう手が届かない所に行ってしまった。
しかし、彼の気持ちが分かったのだろう。少女の閉じられた瞼から、涙が溢れていた。そして、微笑んでいた。
それは、ある学校での、都市伝説。
それから、その学校では、恋人の幽霊が現れる。
二人の幽霊は、微笑んでいて仲睦まじい姿だそうだ。
死後の世界で結ばれる。
悲劇と呼ばれるロミオとジュリエットを見てそう思いました。