表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レベル1の時点で異世界最強  作者: ろーたす
魔王と魔神、災厄再び
89/257

第86話 魔導王と語る夜

「あっ、ご主人さま!おかえりなさーい!」

「お〜マナ、ただいま」


玄関の扉を開けた直後、相変わらず可愛いうちの娘が抱きついてくる。


嬉しそうにしっぽを振りながら満面の笑みで見上げてくるマナ。その破壊力は凄まじく、この世界にもカメラという物があればなぁと本気で思った。


「あのね、ちゃんとおるすばんできたんだよ!ひとりでおふろも入ったし、ひとりでねれたの!」

「はは、さすがだなぁ。マナはやればできる子だって、ご主人さまは知ってたぞ〜」

「えへへへ」


可愛らしく笑うマナを抱っこし、リビングに向かう。床には暇潰しに描かれたのであろう絵が沢山散らばっている。


うーん、素晴らしい作品だ。全部金賞。


「それで、どうだったー?ねっこ・・・だっけ。ぜんぶあつめなきゃなんでしょー?」

「あー、それが・・・」


ちらりと後ろを見ると、俺と目が合ったテミスは困ったように頬を掻いた。


全てのポイントで全員が根の回収に失敗し、初代魔王が神罰の使徒の手によって復活させられる可能性がかなり高くなった。


最悪の結果だ。さっき王都に行って報告してきたけど、案の定ソンノさんは激おこぷんぷん丸だったし・・・。


「でも、ご主人さまはがんばったもんね!よしよし」

「マナちゃんッ・・・!」


なんて言ったらいいのか分からずに困ってたら、抱っこしてる最中のマナが頭を撫でてくれた。


今のであと十年は頑張れる、そんな気がする。


「よし。しばらくはソンノさんからの命令待ちだから、今日は思う存分マナと遊ぶかー」

「わーい!」


ぴょんぴょん跳ねるマナを見てると思わず口元が緩む。そんな俺を見て、テミスも優しい笑みを浮かべていた。
















▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼















「・・・・・・」

「何だお前、私の顔に何か付いてるか?」


部屋は薄暗い。時計を見る。午前2時。視線を戻す。いつも通り髪はボサボサだけど、目の下にクマが無い幼女が俺の身体の上に乗っかっている。


「どわああああッ!!?」

「っ、馬鹿」


驚きすぎて叫んだ直後、気がつけば俺は外で寝転がっていた。空には数え切れないほどの、様々な色の星が輝いている。


どうやら家の屋根上に転移させられたみたいだ。体を起こせば、何故かイラついているらしい幼女と目が合った。


「お前なぁ、時間を考えろよ。今のでテミスが起きてたら、私がお前を襲ってるみたいな感じになってたかもしれないんだぞ」

「な、何してんですかソンノさん・・・!」


俺に乗っかっていたのはソンノさんだった。あんな暗い所で急に登場されたら心臓に悪いわ。


「ま、なんとなく話がしたくなってな」

「・・・今の時間は」

「午前2時」

「明日でもいいでしょうが・・・」


眠い、とても眠い。

我慢出来ずに欠伸をしてしまった俺とは違い、ソンノさんは全然眠そうじゃない。何でだよ、いつも常に眠いだるいしんどいって言ってるくせに。


「ま、コーヒーでも飲んで落ち着け」

「寝かせる気ないでしょ」


渡されたコーヒーを飲み、伸びをしてからソンノさんに聞く。


「話とは?」

「最近テミスとはどうだ?」

「え、うーん、結構ラブラブだとは思うんですけど」

「接吻は?」

「接吻て。そりゃまあしましたけど・・・って、普通に見てたじゃないですか」

「くっくっくっ、いいねぇ」


空間魔法というのは本当に便利だ。好きな場所に好きなタイミングで移動したり、相手の硬さとか関係なくぶった切ったり。


神罰の使徒の連中も転移魔法は使えるみたいだけど、空間を切断したり空間を振動させたり出来るのはソンノさんだけだろう。なんだかんだでやっぱり凄い人だ。


「早めにやることやっとけよ?そろそろ連中との争いも激化するだろうし、初代魔王の野郎が復活しやがったら、こうしてのんびりできる時間なんて無くなるしな」

「・・・ですね」

「エリスの馬鹿も出てきやがったしなぁ。まったく、面倒な悪役共だ」

「エリスって、テミスの師匠って人ですよね」

「そうだ。正直今の状態のあいつは化物だ。テミスじゃ絶対勝てないだろうし、ベルゼブブでも厳しいだろう」

「ソンノさんは?」

「あ?余裕に決まってるだろう」


そう言ってソンノさんは溜息を吐いた。


「まさかあいつがテミスをあそこまで痛めつけるとは。弟子思いのいい奴だった。意識があっても命令には逆らえない。だが、普通なら可愛い弟子を自分が傷つけてしまっているあの状況で笑うなんて無理だ」

「ん、そういえば、〝王国に復讐する〟って師匠は言っていたとテミスが・・・」

「復讐?ん〜、そうか。あの場であいつが戦闘を行ったのは王国第二騎士団の連中。エリスが騎士団を裏切って何処かの組織に情報を流してると言っていたのも第二騎士団の連中、いや、騎士団長。私は第二騎士団の連中を信じていないが、まさかエリス第二騎士団を・・・?」


ソンノさんが何かをブツブツ言ってるけど聞こえない。どうしたんだろうか。何か分かったのだったら教えてほしいけど。


「ああもう、疲れる!」

「じゃあもう寝ましょう」

「寝ない!」

「はぁ、じゃあ一つ質問が」


いつもと違って子供っぽいソンノさんが、若干ムスッとしながら俺を見てくる。


「テミスの師匠がソンノさんに〝何者なのか知っている〟って言った時、動揺したらしいですね」

「っ・・・」


目を逸らされた。


「それって、どういう意味なんですか?」

「さ、さあな。私は私だ。別にこれがいつもの私なんだから」

「知ってます。でも、それなら動揺なんてしないはず」

「別にしてないけどな〜」

「ソンノさん」


そんな彼女の肩を掴んで目を見つめる。珍しい。ちょっと顔を近づけすぎたからか、ソンノさんの頬が若干赤くなっている。


「・・・言えない。でも、私はお前達の味方だ。仲間だ。それだけは信じてほしい」

「信じてますよ、そりゃ」

「え・・・」

「別に隠し事の一つや二つ、誰にでもありますしね」


俺だって『別の世界から来た』というとんでもない話を、まだ誰にも言ったりしてないんだし。


「ま、いいです。いずれ話せるようになった時、そのことについて教えてくれれば」

「・・・」


ぽかーんとしてるソンノさん。やがて彼女は優しい笑みを浮かべ、そっと俺から離れた。


「ほんと、いいやつだな」

「いやぁ・・・」

「分かったよ、近いうちに必ず話す」


そう言うソンノさんは普通に可愛かった。いつもこんな感じなら、きっと誰からも愛されるだろうに。


「そういやタロー。ディーネとは話をしたりしてないのか?」

「ディーネ?いや、してますけど」

「いつもの会話じゃない。あいつ、最近様子が変だぞ。島で神罰の使徒と争ってからずっとだ」

「え・・・?」

「気付いてなかったのか。ベルゼブブの野郎も多分知らないだろうし、早めに何とかしてやった方がいいと思うんだが」


様子が変?ディーネが?


「・・・あ、いや、確かに。ペア決めの時に声をかけたら怒鳴られた・・・。でも、あれは俺がしつこく聞きすぎたからで・・・」


多分そのことについてまた聞けば、ディーネは嫌がるだろう。ううーん、むずかしいなこりゃ。


「ま、とりあえず明日・・・いや、もう今日か。一応話はしておけよ。全然眠くないけどなんか満足したから、私はそろそろ王都に戻る」

「え、あ、はい・・・」

「それから、明日・・・いやいや、今日だ。1回二人きりでデートしよう、デート」

「はい?デート!?」

「はは、また明日な」

「ちょ・・・!」


ソンノさんが消える。いや、多分冗談なんだろうけど、急にとんでもないことを言うなあの人は。


「なーんか、明日は忙しくなりそうだな」


やれやれと溜息を吐き、立ち上がる。もう寝よう。そう思いながら窓から部屋に戻り、ベッドに潜る。


平和だ。こんな日々が壊れるかもしれないなんて思いたくない。ずっと皆で、平和にのんびり暮らしていたい。


やがて自然と意識は薄れ、俺は二度目の眠りについた。

マナ(マーナガルム)

ーーーーーーーーーーーーー

年齢:不明

身長:114cm

体重:・・・?

特技:匂いで誰か当てること

趣味:お絵かき

好みのタイプ:ご主人さま!

ーーーーーーーーーーーーー

長い期間封印されていた神獣種の子供。太郎にかなり懐いており、太郎もマナを実の娘のように可愛がっている。


獣人モードの時で四天王のテラをパンチ1発で戦闘不能にできるほど強く、神狼モードの時は超広範囲を破壊する雷魔法を自在に操る。


最近はラスティと共にテミスのスタイルの良さを羨ましがるようになり、どうすれば胸が大きくなるかについて子供なりに真剣に考え始めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ