第84話 魔王封印五つのポイント
「「「「魔神復活!!?」」」」
「あーうるさい」
皆が一斉に大きな声で同じことを言ったので、ソンノさんは耳を塞ぎながらそう言った。
でもまあ、そりゃ皆驚くと思う。
「先に言っておくぞ。もし復活を阻止出来なかったら世界は終わりだ。お前達の役目は魔神が復活する前に神罰の使徒をぶっ潰して平和な日常を取り戻すこと、以上」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」
「あ〜?」
「魔神復活って、まさか初代魔王のこと!?」
「そうだが」
「っ〜〜〜〜〜!?」
ベルゼブブがとんでもなく驚いてる。
はぁ、まさか本当に奴らの目的が魔王復活だとは。超強かった女神が自分を犠牲にしても封印するのが精一杯だったレベルの化物が、再び蘇ろうとしている。
ある程度覚悟は決めておいた方がいいかもなぁ。
無人島で戦闘が勃発してから一週間
突然ソンノさんに呼ばれたから王都に行くと、他の六芒星の人達やベルゼブブ達まで居た。
それで何の話が始まるんだろうと思ってたら、まさかの魔王復活まであと僅かとは。
「しかしギルド長。魔神復活を阻止するというのは分かったんですが、奴らはどのような方法で魔神を復活させるんですか?」
「魔神封印の根だ」
「根?」
「この世界の五箇所に、かつて女神が魔神──初代魔王を封印する時に使用した世界樹の根っこが存在する。それが全て敵の手に渡れば、魔神復活は現実となる」
突然ベルゼブブが机を叩いて立ち上がった。全員の視線が集中する中、ベルゼブブはソンノさんに言う。
「そうだ、お父様を屍人にした神罰の使徒の男が私に言ってたのよ、魔神封印の根はどこにあるって」
「それって、俺達が魔界に行った時か?」
「ええ、そうよ。まさかとは思うけどあの男、その根とやらを手に入れる為に魔界に・・・?」
なるほど。なら魔神封印の根入手が第一目的で、魔界を荒らしたのはそのついでみたいな感じだった可能性もあるのか。
「お前なぁ、今更言うなよ」
「うるさいわね。仕方ないでしょう、忘れていたんだから。というか、どうして貴女は初代魔王についてそんなに詳しいの?」
「ギルドマスターだし、入ってくる情報の量が多いからな。個人的に大昔に起こった大戦について調べたこともある」
「ふぅん、そうなんだ」
じーっとベルゼブブに見つめられてるけど、ソンノさんはそれをガン無視して懐から紙を取り出し、そして机の上に広げた。
「地図、ですか?」
「そうだ。この地図のバツ印が付いている場所に、お前達には今から向かってもらう」
「今から!?」
「魔神封印の根がある五つのポイントだ。奴らが全ての根を回収し終わるよりも先に根を入手し、可能ならばそこで敵の戦力を削る。話は以上だ」
「またそんな急に・・・」
皆がやれやれと溜息を吐く。
まあでも仕方ないと思う。もし初代魔王が復活したら、ユグドラシルの魔力を持ってる俺も勝てない可能性が高い。だから、できる限り早く根を回収しなければ。
「ねーねーソンノさーん。ポイントに行くのは分かったけどさ、誰がどこのポイントに行けばいいの?」
「それは後で言うつもりだが、とりあえず二人一組で行動してもらう。タローとテミス、私とハスター、アレクシスとラスティ、ベルゼブブとディーネ、ワカメとテラ。マーナガルムはお留守番だ」
「僕はワカメじゃない!」
「アレくんとペアかぁ。いっつも一緒に行動してるからちょっと飽きたかも」
「お・ま・え・なぁ・・・、いつも俺がどんな思いでお前の暴走を止めていると思って・・・!」
「うそうそ、冗談だってー!」
アレクシスが拳を握りしめたのを見て、かなり焦りながらラスティがその場から逃げ出そうとしている。相変わらず仲良しだ。付き合えばいいのに。
さて。それはそうと、気になることが一つだけ。
「ソンノさん、まだテミスの右腕は治ってないと思うんですけど」
「平気だぞ?まだ前のように力を入れるのは難しいけど、回復魔法である程度痛みは消えているからな」
「無理すると悪化するかもしれないだろ?それに、相手がとんでもなく強いヤツって可能性もあるんだし・・・」
「タローが守ってくれるから大丈夫」
若干頬が赤いテミスにそう言われた。こりゃ駄目だ、意地でもついてこようとしてるのが目を見れば分かる。
「はぁ、だったら全力で守らなきゃな」
「おーおー、お熱いですなぁ」
「やめい」
茶化してくるラスティにチョップする。その時、俯いているディーネが見えたので、俺はそんな彼女に歩み寄る。
「ディーネ、どうした?」
「・・・・・・」
「おーい、ディーネ?」
「っ!え、あ、なに・・・?」
「俯いてたからどうしたのかと思ったんだ。具合悪いのか?」
「う、ううん、何でもないよ」
そう言って笑うディーネだけど、明らかに作り笑いだ。顔色も悪い。
「だ、大丈夫だよ」
「・・・何かあったのか?」
「何もないって」
「でも、今のは絶対作り───」
「大丈夫だってば!!」
静まり返った。
数秒後、はっとしたようにディーネは顔を上げ、そして震えながら俺から離れる。
「ごめんなさい・・・大丈夫、だから」
「お、おう」
ディーネに怒鳴られたのは初めてだ。何かしてしまったのだろうか・・・どれだけ考えてもそれは分からない。
「ディーネ。貴女、魔力が乱れてるわよ?」
「っ・・・」
「体調悪いんじゃない?それとも、何か別の理由でもあるの?」
「いや、それは・・・」
何かを探るように、ベルゼブブがディーネの瞳を見つめる。しかし、それに対してディーネは困ったような笑みを浮かべた。
「あはは、体調が悪いのかもしれないね。でも、私だけ休んだりするつもりはないよ。ベルちゃんと一緒に根の回収に向かうから」
「・・・そう。でも、絶対無理はしないでね」
「うん、気をつける」
その笑みから元気は感じられない。
この時の俺やベルゼブブは知らなかった。気づいてあげられなかった。
ディーネが何を抱えているのか、ディーネがどれだけ苦しんでいるのか。
その時まで、あと僅か。
佐藤太郎
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年齢:18歳
身長:175cm
体重:67kg
特技:逆立ち
趣味:マナと散歩
好みのタイプ:優しい子
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この物語の主人公。日本出身の日本人だが、初代魔王復活の可能性がある異世界に、女神ユグドラシルの魔力を与えられた状態で転移した。
異世界人からすれば珍しい黒髪黒目で、日本にいた頃も実はそれなりにモテていた(本人は好意を寄せられているとは思っていなかったが)。
さらに女神の魔力を使いこなせる唯一の人間で、無敵のステータスを誇る最強の人物。
その為誰かを助ける度に惚れられ、現在最初に出会ったテミスとは相思相愛の関係である。