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レベル1の時点で異世界最強  作者: ろーたす
来るべき日はすぐそこに
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第82話 怒りの魔導王

「あら、エリスが本気を出したのね」


次々と飛来する暗器を全て跳ね返しながら、島全体を照らした上空での大爆発を見つめてネビアはクスリと笑った。


恐らく相手は魔王ベルゼブブ。

凄まじい爆発は島を揺らし、爆風が木々を薙ぎ倒す。そんな状況でも、ネビアは六芒星の一人を相手に余裕の態度を崩さない。


「おいおい、何だありゃ。ベルゼブブちゃんのに似た魔力を感じるんだが」

「そうでしょうね。魔王の大魔法と、剣帝の奥義のぶつかり合いってとこかしら」

「剣帝?う〜ん、どっかで聞いたことがあるような・・・」

「あら、隙あり」

「ぐぼおっ!?」


ハスターが魔法を食らって吹っ飛ぶ。

しかし彼も世界最強格の一人なので、すぐに立ち上がって魔力を纏い直した。


「いって〜。やるなぁネビアちゃん」

「ちゃん付けで呼ばれる年齢じゃないんだけどね。ふふ、面白い人」

「マジ?そんじゃあ今からデートでも」

「それは無理ね〜。さすがに魔王の一撃を受けてエリスも無傷ってわけにはいかないだろうし、探し物も結局見つからなかったわけだし・・・。残念だけど、今回は撤退するわ」

「探し物?そりゃいったい───」


突如ハスターの周囲に大量のネビアが出現する。勿論ハスターはその全てが偽者であると分かっているのだが、彼が一瞬気を取られた隙に、本物のネビアはその場から消えていた。












▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲














「・・・なるほど、やはり魔王というのは恐ろしい存在だ」

「・・・貴女もかなりの化け物みたいね」


身体中から血を流すベルゼブブと、全身がボロボロになっているエリス。


屍人は痛みを感じないので重症を負ったことをエリスは気にしていないが、これ以上無理をすると肉体が崩壊してしまうだろう。


ベルゼブブも、今のぶつかり合いで憤怒の魔力が乱れてしまい、仕方なく彼女はその魔力を体内に戻した。


この状態で戦闘を行えば、恐らく身体の一部を失ってしまう事は確実である。


「あうぅ」

「っ、しまった。大丈夫?」

「なんとか・・・」


痛そうに右腕を押さえているが、テミスは無事であった。そんな彼女を見て、ベルゼブブはほっと胸を撫で下ろす。


「ふん、これ以上の戦闘続行は不可能か」

「師匠・・・」

「ちょっと、あまり動かない方がいいわよ。腕が折れてるし、きっと肋骨だって・・・」

「大丈夫。それよりも今は、この人を逃がさずに捕らえないと」

「は?私を捕らえるだと?テミスお前、随分と面白いことを言うようになったな」


戦闘続行は不可能と言ったばかりだというのに、エリスは凄まじい殺気を全てテミスに向けた。


それでもテミスは怯まない。

これ以上愛する師匠が手を汚すのを見たくない。折れた右腕はもうピクリとも動かすことができないが、残った魔力を剣に纏わせて師匠の前に立つ。


「馬鹿、そんな状態で何をするつもりなのよ貴女は!」

「ベルゼブブだってボロボロじゃないか」

「私はしばらくすれば治るの!貴女は人間、回復魔法である程度の傷は癒せても、その右腕はしばらく機能しなくなるわ!」

「でも、だったらどうすれば・・・」

「見逃してくれると嬉しいわね〜」


無理矢理身体を動かそうとするテミスとそれを止めようとするベルゼブブの前に、突然箒に腰掛けた女性が姿を現した。


その女性を見た途端、エリスは物凄く嫌そうな表情を浮かべ、そして構えていた剣を降ろす。


「邪魔をするつもりか、ネビア」

「別に邪魔をするつもりじゃなかったんだけど、その状態で貴女はあの女を相手にできる?」

「その状態だろうが怪我してない状態だろうが、勝つのは私だけどな」


空間が歪む。

それと同時に衝撃波が発生し、不意をつかれたエリスとネビアはそのまま後ろに吹っ飛んだ。


そんな二人と入れ替わるように、子供用水着に身を包んだ幼女が何も無い場所から飛び出す。


「そ、ソンノさん!?」

「おーおー、こりゃまたボロボロだな、テミス。タローのヤツ、今のお前を見たらブチギレモード突入するんじゃないか?」

「それは・・・」

「ま、私もその寸前なんだが」


凄まじい魔力が小さな身体から解き放たれる。

現れたのは怠惰の魔導王、ソンノ・ベルフェリオ。彼女はテミスの前に立つと、向こうで魔力を纏ったエリスとネビアをギロりと睨みつけた。


「久しぶりだなぁエリス。この世に忘れ物でもしてたのか?」

「ああ、忘れ物だらけだ」


数年ぶりの再会に、エリスは少しだけ嬉しそうに口角を上げる。対してソンノは魔力の放出を緩めず、殺気までもが全身から滲み出ていた。


「主人に逆らえないとはいえ、意識がある状態だ。可愛い弟子を痛めつけるのは楽しかったか?」

「どうだろう。久々に稽古をしている気分になれて少し楽しかった気もするが、数年間でこの程度しか成長していないのかとガッカリもした」

「・・・変わったな。あの日(・・・)、いったい何があったんだ?」

「相手がお前だからといって教えるつもりは無い」

「そうか」


ソンノが手のひらを向けたのと同時に、エリスが地面に叩きつけられる。


「相変わらずだな、お前は。もう少し冷静に話し合いというものが出来ないのか?」

「教えるつもりは無いんだろう?じゃあもういいよ、教えなくて」

「くくっ、娘のように面倒を見てきたテミスが負傷しているのを見て怒っているのか?あの時と同じだな。ハーゲンティの屋敷で初めてテミスを────」


それでも余裕の態度を崩さないエリスだが、地面に押さえつけられた状態でソンノの空間振動波を食らい、自身の腕が千切れたのを見て表情が変わる。


「・・・やってくれるな。ここまでされると、相手がお前だからといって手加減するつもりはないぞ」

「手加減?お前程度が私に手加減しようとしてたのか?笑わせるなよ剣帝・・・!」

「怒りに感情を支配されているようだな。もう我々はお前が何者なのか知っているぞ、ソンノ。こんな場所で貴重な魔力を無駄に消費してもいいのか?」

「っ・・・!?」


今度はソンノの表情が変わった。

誰が見ても分かる、あのソンノが見せた激しい動揺。それを見て口角を吊り上げたエリスは、自分を押さえつけている見えない力が弱まったのを感じて立ち上がり、そしてソンノ目掛けて片手で剣を振り下ろした。


剣から放たれた光の刃がソンノの身体を弾き飛ばす。そしてソンノが壁にぶつかり倒れ込んだ隙に、ネビアは魔法を唱えた。


「転移魔法・・・?」

「いいえ、違うわ。ま、そう思っていてくれたらこっちとしては有難いんだけれど」

「待てエリス。お前は・・・お前達は、いったい何をしようとしているんだ・・・!」

「わざわざ聞くな。もう分かっているんだろう?」


立ち上がったソンノが魔法を放つ直前、不気味な笑みを浮かべながらエリスは言った。


「魔竜の復活、混沌の再来───以上だ」

「ッ・・・」


ソンノだけが分かった、エリスの言葉の意味。目の前が真っ白になる。纏っていた魔力が乱れて消える。


やがて、言葉を失ったソンノの前から、エリスとネビアは姿を消した。

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