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レベル1の時点で異世界最強  作者: ろーたす
来るべき日はすぐそこに
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第81話 剣帝VS紅魔王

「どうしたテミス、その程度の動きで私を止められると思っているのか!!」

「くっ・・・!」


凄まじい速度で放たれる斬撃の嵐。

それを受け取った剣でなんとか受け止めながら、テミスはどうすればいいのかを必死に考えていた。


以前太郎が相手をした屍人状態の魔王サタンとは違い、今目の前に居るテミスの師───エリスは暴走せずに意識を保っている。


その状態で世界樹の六芒星と呼ばれているテミスをこれほどまでに追い詰めているということは、エリスは屍人でありながら六芒星以上の力を発揮している。


かつて剣帝と呼ばれた王国最強の剣士は、弟子を相手に手加減することなく容赦ない攻撃を繰り返していた。


「・・・ふむ、どうやらノワールのやつに負わされた怪我は治りきっていないようだな。そのせいで右腕を満足に動かすことが出来ていない。なのに何故、お前は剣を右手で持っているんだ?」

「っ、ノワールを、知っているんですか?じゃあまさか、貴女は・・・」

「ああ、今お前が思ったとおりだ」


重い斬撃を受け止めたテミスが吹っ飛ぶ。そんな彼女に更なる攻撃を加えようとしたエリスだが、真上から強力な魔力を感じて咄嗟に後方へ跳んだ。


魔王の鉄槌(ベルゼインパクト)!!」

「ふん、無駄だ」


直後に放たれた黒の魔弾を剣先で受け止め、そして一気に魔力を放って消し飛ばす。


「人間にしてはやるわね・・・ってああ、今は屍人だったか」

「紅魔王にそう言っていただけるとは光栄だな。だが、お前もテミスと同じで本来の実力を発揮できていないようだ。子供のお前に二つの魔力を完全にコントロールするのは難しいか」

「へぇ、面白いことを言うのね」


空気が軋む。

怒りによって得た憤怒の魔力と暴食の魔力、それをコントロールできていないのは事実なので、その事に関して何かを言われても特に気にはしない。


しかし〝子供〟と言われたことで、魔界最強の紅魔王はその身から膨大な魔力を全て解き放った。


水色の髪が深紅に染まる。それは、ベルゼブブが本気を出したという事をテミスとエリスに知らせてくれた。


「それがお前の本気か、魔王ベルゼブブ。ならばこちらも少しだけ本気を出すとしよう」


エリスの剣がバチバチと音を立てる。

次の瞬間、魔法を放とうとしていたベルゼブブは猛スピードで吹っ飛び、そして壁に衝突した。


「どうしたテミス。今私がお前を狙っていれば、間違いなく首から上は地面に落ちていたぞ」

「っ・・・!?」


本人も、隣に立っていたテミスも何が起こったのか、何をされたのか分からないほどのスピードでの攻撃。


直前までベルゼブブが居た場所にはエリスが立っており、死の気配を感じたテミスは相手が師匠であることを忘れ、全力で持っていた剣を振るった。


「遅い。その程度で銀の戦乙女などと呼ばれているのか!」

「ぐっ!?」


しかし、剣が届く前に腹を蹴られ、テミスは後方に吹っ飛ばされる。そのまま何度か地面を転がり、顔を上げた時には既に目の前には剣を振り上げた状態のエリスが。


光芒閃ブリッツライン!!」

「アークブレイド」


咄嗟に放った一撃は、エリスの剣から放たれた光の斬撃に弾き返される。


体勢を崩しつつもテミスは奇跡的にそれの直撃を回避したが、発生した衝撃波に襲われそのまま派手に転倒した。


「そういえばテミス、恋人ができたらしいな」

「っ、それは・・・」

「ハーゲンティの件で異性と接するのが苦手になっていたお前が、まさか誰かに恋をする日が来るとは。しかも、相手は我ら神罰の使徒(ネメシス)の最重要駆逐対象のサトータローか」

「神罰の使徒・・・!」


エリスはハッキリと言った。

今目の前に立っているのは尊敬する師であるが、様々な人達を傷つけ続けている最悪の敵の一員。


ならば、自分はこの人を倒さなければならない。


「だったら、なんだというんですか」

「私は嬉しいよ。心配だったんだ、お前が今後一生恋などせずに生きていくのか、それとも心を許せる存在に出逢えるのか。良かったじゃないか、優しい男なんだろう?」

「・・・ええ」

「くくっ、そうか」


凄まじい殺気を感じた。


瞬光螺旋突ライトニングスティンガー!!」


殺される。

そう思ったテミスは、立ち上がるのと同時に師匠目掛けて全力で技を繰り出したのだが、剣先がエリスの身体を貫いた直後、エリスの身体は煙のように分散して消えた。


「なっ・・・!?」

「お前に幻襲銀閃トライアングルレイドを教えたのは誰だった?」


振り向いた瞬間、テミスの右腕からゴキリという嫌な音が聞こえた。


遅れて全身を駆け巡った激痛に堪らずテミスが顔を歪めるが、幻襲銀閃で作り出せる分身の数は二人。


その事に気付いた直後に、目の前に立つエリスとは別の、作り出された分身が真横からテミスの横腹を蹴り、そして勢いよく彼女を吹っ飛ばした。


「あぐっ、う・・・!」

「今ので何本骨が折れたかな」

「う、あああああああああッ!!!」


それでもテミスは立ち上がる。

右腕は使えないから剣は左手で握り、そして決して怯まず最凶の敵を睨みつけた。


「まだやるつもりか」

「貴女達の目的が何なのかは知りません!でも、私はこんな所で死ぬわけにはいかない!」

「それは何故だ?」

「これからもずっと、タローと共に生きるために・・・!」

「そうね、貴女が死んだらきっとタローは悲しむわ」


突然あの少女の声が聞こえた。

エリスは凄まじい魔力を感じ取って振り返ったが、もう遅い。


「まさか、憤怒の────」


恐らく蹴り。

先程自分がテミスにしたのと同じように横腹に衝撃が走り、そのままエリスは猛スピードで向こうの壁に突っ込んだ。


「べ、ベルゼブブ、それは・・・」

「まだ完全にコントロール出来てないから、あまり近付かない方がいいわよ、テミス」


ベルゼブブの周囲を渦巻く深紅の魔力。

彼女の翼は紅く染まり、それを羽ばたかせることなくベルゼブブはふわりと浮き上がる。


「・・・なるほど。ネクロが言っていたのはその状態のお前か。魔王サタンと同じかそれ以上の力を発揮していたらしいが、これは私も本気を出さなければならないようだ」


ベルゼブブの蹴りを食らったエリスは、崩れて地面に落ちた自身の肉片を踏み潰し、これまでとは比べ物にならない量の魔力を剣に纏わせた。


洞窟全体が震える。

魔界最強の紅魔王が放つ憤怒の魔力に匹敵する、何もかも飲み込んでしまいそうなエリスの魔力。


テミスは気付いてしまう。今から放たれるのは、エリス最大の奥義であるということに。


「気をつけろベルゼブブ!今の師匠があれを使ったら・・・!」

「大丈夫よ、貴女は離れてなさい」


ぶつかり合う二つの魔力。

そして、その時は唐突にやって来た。


「偽りの存在である愚かなる罪人よ、我が怒りを知るがいい」

「面白い。来い、紅魔王ベルゼブブ」

魔轟滅壊炎イラ・ブレイクッ!!!」


ベルゼブブが魔法を放つ。


「受けよ、魔を討つ究極奥義を」


紅い閃光が何もかもを破壊しながら迫る中、エリスは輝く剣を凄まじい速度で横に薙いだ。


「グランドクロス!!!」


そして踏み込んで地を蹴り、放たれた光の刃目掛けて全力で剣を振り下ろす。


クロスした二つの斬撃はそのまま迫り来るベルゼブブの魔法と衝突し、爆ぜた。


発生した衝撃波と爆発を繰り返す魔力は真上へと進行方向を変え、天井を突き破って地上へと飛び出す。


その数秒後、島の上空数百m地点で大爆発が起こった。



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