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レベル1の時点で異世界最強  作者: ろーたす
来るべき日はすぐそこに
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第77話 揺さぶり

「アレくん暑いぃ・・・」

「そう言いながら寄ってくるな。俺だって暑いのに、余計暑苦しくなる」

「おんぶしてぇぇ・・・」

「絶対に嫌だ」


何度もおんぶしてくれと頼んでくるラスティを無視しながら、アレクシスは前を見ながら歩き続ける。


何故おんぶをしたがらないのか。それは、今のラスティを見ればすぐに分かる。


(水着姿の女をおんぶとか、いろいろ大変なことになるに決まっているだろうが・・・!)


ラスティもアレクシスも水着姿のため、ラスティをおんぶすると肌がかなり密着する。


つまりはそういうことだ。


「あれ、顔赤いよ?」

「暑さのせいだ」

「熱あるんじゃないの?」


心配そうにラスティがアレクシスの額に手を当てる。その際彼女の胸が視界に入り込んでしまった。


ラスティは自分の胸を小さいと言うが、それはテミスのものと比べてそう言っているだけで、別に小さすぎるというわけではない。


少なくとも、男性の理想のサイズはある。


「・・・お前はもう少し自分がどういう女なのかを知るべきだ」

「え、普通のギルド員だけど」

「見た目の話だ。というか普通ではないだろう。本気を出せば俺以上の力を引き出せるじゃないか」

「あ〜、あはは。アレはあんまり使いたくないかな。後々恥ずかしくなるし」


そんな事を話しながら、2人は宝を探して島を歩く。


2人らしいのんびりとした時間。

しかし、それは長くは続かなかった。


「・・・?」

「なんだ、どうした?」

「音が聞こえる。出でよ、魔鎌アダマス」


突然ラスティがそう言い、別空間から大鎌を取り出した。これも一種の空間魔法だが、本家であるソンノの空間魔法には及ばない。


しかし、ラスティにとってはこれで十分。鎌を手に取った彼女は、自分の身長よりも巨大なそれを勢いよく振るう。


発生した黒い斬撃が木々を断ち、少し離れた場所で悲鳴が上がる。その数秒後、向こう側から恐ろしい数の黒装束に身を包んだ者達が飛び出してきた。


「っ、なんだ?ギルド長が用意したイベントの一つか?」

「いいや、違うね。今の私と同じような魔力を感じる・・・あっはっは、敵だぁ!!」


狂気すら感じさせる笑みを浮かべながら、ラスティは群れる黒装束達の中央に飛び込み、そして凄まじい魔力を一気に解き放つ。


「裂けろ!狂円刃きょうえんじん!!」

「ぎゃあっ!?」


魔鎌から円状に黒い刃が放たれ、ラスティを取り囲んで攻撃しようとした黒装束達を一斉に切り裂いた。


しかし、倒れた木々の向こう側から再び黒装束達が姿を現す。


「どういうことだ。まさかとは思うが、神罰の使徒が攻めてきたんじゃないだろうな」

「可能性は高いんじゃない?ふふ、くふふふふ。相手が誰だろうと、八つ裂きにするだけだから・・・!」

「俺は今武器を持ってないから戦闘はお前に任せる。まあ、なんだ。あまり暴れすぎるなよ」

「それは無理かなァ!!」


その後、2人を襲った黒装束達が全滅するまでには、たったの数分しかかからなかった。













▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼













「あっちにご主人さまがいるきがする!」

「お、おいおい。今はおじさんとペアで宝探ししてんだからさ・・・」

「ご主人さまとがいいのー!」


一方その頃ハスターは、元気に走り回るマナに翻弄されていた。どうしても太郎の所に行きたいらしいマナは、ハスターが進もうとしている方向とは全く違う方向に向かおうとするので、その度にマナを追って引き止めなくてはならない。


しかし、見た目は子供でも相手は神獣種。

前に立って何度か突進で吹っ飛ばされたりしながらも、ハスターは頑張っていた。


「ほら、こっちおいで」

「やだ!」

「ったく、あんなに懐かれてるサトーの野郎が羨ましいぜ」

「俺がなんだって?」

「あ、ご主人さまだぁ!」

「ご本人登場だよ畜生・・・」


そんな彼の前に、美少女を連れた黒髪の青年がやって来た。彼を見た途端、マナは満面の笑みを浮かべて駆け出し、そして青年に飛びつく。


「マナちゃんはほんとにタローさんのことが好きだねぇ」

「うん、だいすき!」

「俺もマナのこと、大好きだぞ・・・!」

「な、泣くほど好きなんだね」


マナに大好きと言われて涙を流しはじめた青年、佐藤太郎。こう見えても彼、世界で一番強い。


「ディーネおねーちゃんもご主人さまのことだいすきだよね」

「あはは、そうだね。マナちゃんと同じぐらい、タローさんのことが好きだよ」


若干頬を赤く染めながら、ディーネがタローをちらりと見つめる。


当然これほどの美少女に好きと言われた太郎の顔も赤くなっていて、それを見たハスターは太郎の水着を掴み、そのまま激しく揺さぶった。


「てめぇふざけんな!こんな可愛い子に好きって言われてなんだその反応は!俺だったら嬉しすぎて吐血しちまうっつーの!」

「ちょ、何してんだおっさん!」

「こらこら、喧嘩は良くないよ」

「悪いのはこのおっさんだ!」


馬鹿みたいなやり取りをしている2人に、苦笑しながらディーネが近づく。


その瞬間、


「うふふ、仲良しなのね」

「え────」


突然ディーネの前から太郎やマナの姿が消えた。


「空間魔法?それに、タローさん達が転移させられたんじゃなくて、私が別空間に引き込まれた・・・?」

「あら、意外と賢いのね。正しくは別空間に引き込んだんじゃなくて、私の魔法で貴女の脳に干渉しているんだけど」

「っ、誰!?」

「おっと、どうしたんだディーネ」


咄嗟に声が聞こえた方に顔を向けると、そこには太郎が立っていた。


「あれ、タローさん・・・?」

「何かあったのか?」

「い、いや、なんでも・・・」

「そっか。それじゃあそろそろ宝探しを再開しようぜ、テミス(・・・)

「え・・・」


自分に背を向けた太郎が声をかけたのは、先程まではこの場に居なかったはずのテミス。


マナとハスターは何処に行ったのだろうか。

混乱するディーネとは違い、太郎はそのままテミスと肩を並べて歩き始める。


「ちょ、ちょっとタローさん!ペアって私だよね?いつの間にテミスさんと・・・!」

「え?俺のペアはテミスだけど。ディーネが勝手についてきてたんじゃないか」

「なっ、そんなはずないよ!私達、さっきまで一緒に歩いてたのに!」

「・・・どうしたんだよ、ディーネ。具合悪いのならテントに戻って休んだほうがいいぞ?」

「た、タローさんこそ────」

「俺はテミスと宝探しをしてるんだ。せっかく楽しんでるんだから、邪魔しないでくれよ」


そう言われ、ディーネは何も言い返すことができなかった。もしそうだとすれば、自分のペアは誰だというのか。


(い、意味がわからない。テミスさんと一緒に行動したいから、邪魔者の私はどこかに行けってこと?)


じわりと、ディーネの視界がぼやける。

前を歩く太郎は一切こっちを振り返らない。楽しそうに会話している2人を見ていると、今すぐ間に割り込んでやりたいという気持ちすらこみ上げてくる。


(・・・なんだろ、胸のあたりがもやもやする。もしかしてこれが、嫉妬・・・なのかな)

「おい、まだ居たのか」

「え─────」


突然目の前が真っ白になった。それと続いて腹部に走った激痛と衝撃が脳を揺らし、吐き気を堪えてディーネはその場にうずくまる。


「タ、ロー・・・さん?」

「これ以上周りをチョロチョロされるのも鬱陶しいな。よし、殺すかテミス」

「ああ、そうだな」

「何を、言って・・・」


いや、違う。これは太郎とテミスではない。そう思ったのと同時にディーネは後方に跳び、魔力を纏って2人を睨みつけた。


「幻術か・・・!」


殴られて痛いと思ったのも、幻術によってそう錯覚させられていただけ。


そもそも、優しい太郎がディーネを殴るなどという行為を行うはずがないのだ。


自分の想い人を使って攻撃してきた者が居る。無意識に殺気をその身から放ちながら、ディーネは戦闘体勢に入った。

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