第7話 大ボス降臨魔王戦
「私は魔王ベルゼブブ。全魔族の頂点に君臨する者よ」
「そっか。まさか魔王が女の子とは思わなかった」
空飛ぶ野菜を追ってたどり着いた場所。急にヴェントが海の向こうに行ったから全力で泳いだんだけど、どうやら別の大陸にたどり着いたみたいだ。
途中にあったマグマの川で服を乾かし、ヴェントが入っていった巨大な城に向かって跳んだ。そして天井を突き破って中に入ったんだけど、俺の前に立っている水色の長髪が似合う女の子が魔王らしい。
·········とか説明していてあれだけど、自分は何をしているんだ。まるで昔から力を使えていたかのような感覚だから、ついはしゃいでしまったな。
「貴方が《世界樹の六芒星》の一人?」
「いや、違うよ。六芒星の一人にいらん事をした野菜マンを調理したついでに、魔王の野望を阻止しに来た一般人だ」
「なるほど、貴方はただの一般人であると·········」
ベルゼブブの周囲に青色の球体が3つ出現する。
「じゃあ今すぐ死になさい」
「いや、待って!?」
それを3つ同時に飛ばしてきたけど、全部咄嗟に叩いて消した。
「········ほら、やっぱりただの一般人なんかじゃない」
「ほ、ほんとに一般人なんだけどなぁ」
「正直貴方が何者であろうとどうでもいいわ。でも、人間如きが私の前に立っている。それは決して許される事ではないのよ」
「じゃあ座ろうか?」
「そ、そういう事じゃないわよ!」
ベルゼブブの身体からゾクゾクするような力が放たれる。なるほど、これは確かに魔王に相応しい力かもな。
「私を前にしてその余裕·········どうやら貴方、相当な実力者のようね」
「さあ、どうだろう。とりあえず宣戦布告するのはやめてほしいな」
「ふふ、殺すには惜しいかもしれないわ。貴方、名前は?」
「太郎だ。佐藤太郎」
「サトータロー・・・ね」
城が震えるほどの魔力を放ちながら、ベルゼブブが俺に手を差し出してくる。
「どう?タロー。私の配下に加わる気はない?」
「やめとくよ」
「へえ、それが返事なのね」
ベルゼブブが手のひらを俺に向けた。
「ダークフレア」
そして手のひらから黒い炎を放ってきたけど、俺が手を振ったら炎は消えた。
「ウォーターサイクロン」
「また濡れるのは勘弁」
次に放ってきた水の渦を躱し、ベルゼブブに向かって走る。相手は女の子だから、殴る蹴るはちょっと無理なんだが。
「アイスウォール」
「ふんッ!」
目の前に出現した氷の壁を突き破り、一瞬だけ怯んだベルゼブブの肩を掴んで床に押し倒す。あ、別に変な事しようとしてるのではなくてですね、単純に動きを封じようと思っただけですよ?
「急に押し倒して来るなんて········貴方、変態だったのね」
「違います。相手の同意無しにそんな事する男じゃありませーん」
「じゃあ、私に何してもいいって言ったらどうする?」
「え、いいの?」
「いいわけないでしょ人間········!!」
あ、しまった。油断した瞬間に腹部を蹴られ、そのまま天井に激突する。さらに天井を突き破り、俺は城の外に放り出された。
「お、恐ろしい蹴りだな」
「今のに耐えられる身体を持つ貴方も恐ろしいわ!」
目の前に飛んできたベルゼブブが炎を放ってきた。空中ではそれを回避する術が無いので、とりあえず叩いて消す。
そして城の屋根の上に着地し、高い場所に浮かんでいるベルゼブブに顔を向ける。おお、ここからだとあのロングスカートの中身が丸見えだ!
「········やっぱり貴方は変態なのね」
「いやぁ、誰だって見てしまうと思う」
「あまり私を舐めない方がいいわよ、タロー」
うーん、白色か。思ったより可愛らしいの履いてるんだな。
「デスレイン!!」
楽園を凝視してたら空から黒い槍みたいなのが大量に降ってきた。それは城の屋根を粉々に粉砕してるけど、俺に当たったものは残念な事に全くダメージを与えられずに消し飛んでいく。
「なっ、魔法が効かない!?」
「無駄に攻撃すると城が崩壊してしまうんじゃないか?」
「それなら────」
急に真下から魔法を浴びて、俺はベルゼブブよりも高い場所に吹っ飛んだ。そして下を見れば、黒いオーラを身に纏ってるベルゼブブと目が合う。
「闇の彼方に消え去るがいい、ブラックアウトッ!!」
ベルゼブブの声が聞こえた直後、急に視界が真っ黒に染まった。音も消え、静かな場所で俺一人だけがふわふわと浮遊している状態に陥る。
何度か手を振ったりしてみたけど、何かに当たることはなく。まずいな、閉じ込められたのか?
「魔法········か」
それを使えたら多分ここから脱出できると思う。というか、多分俺以外の人がこの魔法を食らえば即死な気がする。
まあ、一回俺も魔法が使えるのか試してみようか。とりあえずは体内に流れる魔力とやらを見つけ出してみよう。紙に書いてあったステータス。俺の魔力は9999ってなってたから、一応俺の中にも魔力は存在するはず。
問題はどうやってそれを使うかだ。どこだ魔力ー。居たら返事してくれー。
「あ、見つけたかも」
集中してたら不思議な力が身体の中にあるのが分かった。多分これが魔力で間違いないな。あとはこれを外に出すだけだ。
「ふッ········!!」
全身に力をいれて、体内の魔力を外に出すのをイメージする。次の瞬間、突然景色が切り替わった。
「な、ぁ········!?」
「うおっ、まじかこれ」
俺の身体から信じられない程の力を感じる。なるほど、これが俺の魔力ってわけか!
「私のブラックアウトが、人間如きに破られたですって!?」
「魔力と思われるものを身体の外に出しただけなんだけどな!」
どうやら無事に城の上に戻れたみたいだ。あとはめちゃくちゃびっくりしてるベルゼブブを倒すだけなんだけども。
「有り得ない、どうして私の魔法が効かないの!?」
「俺のステータスがバグってるからだ!」
「一体どれ程高いレベルだというの?だって、私のレベルは400なのよ!?」
確かテミスが150で、六芒星で一番レベルが高い人のが183だったような。そんな面々を遥かに上回るベルゼブブを相手に、俺は善戦できているのか。
もしかしたら、さっきからバンバン飛ばしてくる魔法も、一発で人を消し飛ばせる威力を誇ってるんじゃ········自分が怖いわ。
「答えなさいタロー!貴方のレベルは私よりも上なの!?」
「レベル1はだ」
「········は?」
「嘘じゃないよ。ちゃんとギルドでステータス測定してもらってるから」
「い、いやいや。そんな訳ないわ!」
ベルゼブブの瞳が輝く。
「残念だったわね。私は相手のステータスを正確に表示できる魔眼を持っているのよ。隠そうとしても無駄なんだから!」
不敵な笑みを浮かべながらそう言った彼女だが、数秒後には顔が真っ青になった。
「あ、あれ?私の魔眼、おかしくなっちゃったのかしら」
「レベル1だったろ?」
「意味が分からない!レベル1の人間のステータスが、どうして私のステータスを遥かに上回っているのよ!」
「それは知らんよ」
「このォ········!」
突然ベルゼブブの長髪と瞳が紅色に染まった。同時に先程までとは比べ物にならない魔力が彼女の身から放たれる。
「こんな所で負けるわけにはいかないんだからッ!!」
「いや、悪いけど勝つのは俺だ」
折角この世界での暮らしにも慣れてきたんだ。これからものんびり暮らすために、魔王軍の野望は宣戦布告前に潰させてもらう。
次回、魔王様戦決着の回