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レベル1の時点で異世界最強  作者: ろーたす
集う最強、魔闘祭
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第53話 夜空に咲く火の花

「あははっ、まさかソンノさんと一回戦で当たるなんてね!大人しく潰されといてよ!」

「やだね」


ラスティが振るった巨大な鎌を、ソンノさんは軽く首を傾けて避ける。いやぁ、まさか六芒星同士の闘いを早速見れるとは。


死影刃しえいじん!!」

「無駄だって言ってるだろ。お前の攻撃が私に当たることは絶対にない」


普段は滅多に見れないソンノさんのガチバトル。いや、ガチなのかは分からないけど、あの速度で放たれるラスティの攻撃を余裕で躱すあの人はやっぱり相当な実力者なんだろう。


「いつものギルド長はただの怠け者にしか見えないが、怠惰の〝魔導王〟などと呼ばれる程の人だ。空間干渉を行える時点で俺よりもずっと強い」


俺の隣の隣に座ってるアレクシスがそう言う。うーん、ということはこの勝負に勝つのはソンノさんかなぁ。


「まあ、あの馬鹿も負けてはいないさ」

「やっぱりアレクシスって、ラスティのこと好きなんじゃ・・・」

「何故そうなる」


どっちが勝つのか。

それは、今下で行われてる世界最強クラス同士によるえげつないバトルを見てなきゃ分からない。


「あははははッ!!」

空間振動波ヴィブラシオンウェイブ

「それこそ無駄だよ!」


放たれた魔法を跳んで躱すラスティ。そして、彼女は鎌を振り上げる。


「くくっ、馬鹿め」

「っ!?」


そのまま鎌が振り下ろされると思った直後、ラスティは空中でピタリと動かなくなった。


「うっ、ぐぅ・・・!」

「〝停止空間(アケディアゾーン)〟。暴れ回る魔人の動きを止めるのに丁度いい空間固定魔法だ」


ああ、こりゃ決着がつくな。


「しばらく寝てろ。空間振動波ヴィブラシオンウェイブ

「きゃあっ!?」


身動きが取れない状態でソンノさんの魔法を食らったラスティが勢いよく場外に吹っ飛ぶ。


そして、そのまま彼女は気絶してしまった。


『そこまで!注目の世界樹の六芒星対決は、王都ギルドのマスターを務める《怠惰の魔導王(ベルフェゴール)》ソンノ・ベルフェリオさんが制しました!!』














▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽














「うっひょぉ!二回戦でテミスちゃんと闘り合うことになるとはなぁ〜!もし俺が勝ったらデートしてくれない?」

「嫌です」

「そこをなんとか────」

「しつこいんだよおっさん」


ずっとテミスにデートのお誘いをしてたハスターが急に消える。それと入れ替わるようにソンノさんが姿を現した。


「お疲れ様ですギルド長」

「悪いな、お前の大事な大事な彼女を気絶させてしまって」

「彼女じゃないですね」


眠そうに欠伸しながらテミスの膝の上に座るソンノさん。こうして見ると、やっぱり小さい女の子にしか見えない。


「テミス、このまま寝ていいか?」

「構いませんけど、ソンノさんと対戦することになるかもしれない人達の闘いですよ?見ておいた方が・・・」

「どーせ大したことない奴らしか残ってないだろ。もし当たったとしても、私の空間魔法で────」


次の瞬間、悲鳴が闘技場内に響き渡った。


『そ、そこまで!治療班、急いで選手の元に向かってください!』

「なんだ・・・?」


バトルが行われていたフィールドで、大量の血を流しながら横たわる男性。そして、その隣で剣を手に持って立っている黒フードの人物。


あの黒フードが男性を斬ったのか。


『の、ノワールさん、やりすぎです!』

「・・・相手を斬ってはいけないというルールは無かったはずだけど。テミス・シルヴァだって剣で相手を攻撃してたでしょう?」

『ですが・・・』

「勝者は私。次から気を付けるわ」


そう言って黒フードの人物がフィールドの外に向かって歩いていく。ふむ、声と喋り方的に女の人っぽいな。


でも今の、誰かの声に似てたような・・・。


「気持ち悪い魔力」

「ん?」


突然隣に座ってるディーネが、去っていく黒フードを見つめながら不快そうにそう言う。


「あまり関わらない方がいいと思うよ」


この子がこんな事を言うなんて珍しいな。

一体あの黒フードは何者なのか・・・それを考えてた時に行われた次の試合で、またしても黒フードの人物がフィールドに姿を現し、さっきのとは別人らしいけどまた対戦相手を半殺しにした。
















▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼



















「な、なんだか沢山の人に見られている気がする・・・」

「うーん、そうだなぁ」


午後7時。

お祭り騒ぎの王都アルテアを、テミスと手をつなぎながら歩いてる最中の俺。


本格的な祭りもやってるからテミスと2人で遊んで来いって言われて来たのはいいけど、周囲の人達から向けられる嫉妬の視線がヤバすぎる。


「私、何かしてしまったのかも・・・」

「いやいや、可愛いテミスと手をつないでる俺に皆嫉妬してるんだよ。確かに今俺すっごい幸せだし」

「か、可愛いだなんて、そんな・・・」


畜生、危険な人達が多すぎてのんびり祭りを楽しむことができないじゃないか。


しょうがない、大人しく宿に戻ってそこでテミスとおしゃべりでも────


「・・・ん?」


テミスを見れば、近くにある屋台に置いてるスラりんのぬいぐるみをガン見していた。


気付いてないんだろうけど目が輝いてるから、多分すっごい欲しいんだろうなぁ。


よーし。


「おじさん、一回やらせてよ」

「おおっ、らっしゃい。ルールは簡単、そこにある〝柔らかい石〟〝まあまあ硬い石〟〝かなり硬い石〟〝未知の硬さの石〟のどれかを殴って(・・・)粉砕するだけ。武器の使用は禁止で、石を粉砕できたら硬さに応じて景品をプレゼントする。ああ、〝未知の硬さの石〟は素手で粉砕するのは多分不可能だと思うぜ。けど、もし粉砕できたら何でも好きなものをやろう」

「あいよー」


とりあえず〝未知の硬さの石〟を手に取って何度か上に投げる。ふーむ、そんなに硬いのかなこれ。


「おっ、ははは!まさかそれを粉砕しようってか!?怪我するからやめといた方が─────」


軽く殴ると石は粉々に砕け散った。


「・・・え゛」

「怪我するようなものを置いておくなよ。まあ、粉砕できたからあのぬいぐるみください」

「ど、どうぞ」


おじさんからスラりんのぬいぐるみを受け取り、それをテミスに手渡す。


「え、なんで私に?」

「欲しそうに見てたからな。ふっふっふ、タローさんからのプレゼントってことで」

「っ・・・」


何故か顔を逸らされた。


「・・・ありがとう。大切にするよ」

「お、おう」


そして、ギュッと抱いてるぬいぐるみに顔を埋めてるテミスにそう言われた。


やば、俺もギュッてしたい。


「んじゃあ他の屋台も覗いてみようか」

「うん、そうだな」


それからしばらく2人でお祭りを満喫し、とある時間になったので王都ギルドの屋根の上に飛び乗って寝転ぶ。


その理由は───


「おおっ、すげー」


大量の花火が夜空に打ち上げられる。でも、花火を見るよりつい隣に顔を向けてしまう。


「綺麗だな・・・」


俺と同じように寝転がりながら、テミスがそう呟く。そんな彼女に『君の方が綺麗だよ』とか言いたくて仕方ないけど、引かれる可能性があるから言いません。


「なあ、タロー」

「んー?」

「もし私が優勝できたとしたら、伝えたいことがあるんだ」


花火を見つめてるテミスにそう言われた。

なんだろう、別に今言ってくれてもいいのに。


「そっか。俺も優勝できた時に伝えたいことがある」

「ふふ、ならどちらかはそれを伝えられないな。優勝できるのは1人だけなのだから」

「ははっ、そうだなぁ。そういやテミス、次の対戦相手はハスターのおっさんだったな。あんなのでもかなり強いだろ?」


時間があればテミスを口説いてる、世界樹の六芒星の1人でもあるハスター。


メタりんハントでかなりレベルが上がったテミスも相当強いけど、やっぱそう簡単には勝てないだろう。


「〝夜殺の影(ファロール)〟ハスター・カーティル。暗殺術を極めた戦闘の達人だ。私もスピードには自信があるけど、あの人相手に通じるかどうか・・・」

「勝てるよ。この前結構レベルが上がってたんだし、いつもテミスが努力してるのは知ってる。だから、きっと勝てる」

「・・・もし私がハスターさんに勝った場合、私とタローは三回戦で闘うことになるな」

「さっき改めてトーナメント表を見たけど、うん。互いに二回戦で勝てたら当たるのは準決勝だ」

「そうか、とても楽しみだ」


それからしばらく黙って夜空を照らす花火を見続け、どちらが勝とうがまた一緒に明日も花火を見ようと約束し、人々が宿に戻り出した頃に俺達も泊まる予定の宿へと向かう。













この時はまだ知らなかった。

明日、一緒に花火なんて見れないことを。

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