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レベル1の時点で異世界最強  作者: ろーたす
集う最強、魔闘祭
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第51話 集う最強、魔闘祭

────闇。


とある場所の地下深くにある古い神殿。

薄暗いその場所で、一人の男は闇を見つめながら僅かに口角を上げていた。


『・・・ハーゲンティよ。以前貴様が言っていた、魔王すらも凌駕する力を持つ人間は今何をしているのだ?』


ずしりと、名を呼ばれたハーゲンティの周囲の空気が重くなる。しかし、ハーゲンティは慌てることなく口を開いた。


「奴は魔闘祭という人類最強を決めるお祭りに参加していますよ。世界樹の六芒星の連中も出場するらしいですけど、優勝して最強の称号を手にするのはあの男でしょうね」

『ククッ、面白い。では我々もその祭とやらに参加させてもらうとしようではないか』


闇に潜む者がそう言った直後、ハーゲンティの両隣に2人の人物が姿を現した。


「へえぇ、お祭りですか。それは実に面白そうだ。私でよければ喜んで参加させていただきますよ」


黒いフードに覆われ素顔は見えないが、声でこの人物が男であるというのは分かる。


そして、もう1人は────


「ふふっ、やっとあの女を始末することができるんですね、マスター」


同じく黒いフードで素顔を隠している。しかし、声は〝彼女〟にそっくりであった。


いや、同じ声といったほうがいいだろう。


『目的を忘れるなよ?我々はまだ一部の人間にしか知られていない集まりだが、今回の目的は我々の存在を知られることではなく、サトー・タローの本気を引き出すことである』

「ええ、分かっています」

『貴様と交戦した時の奴はまだ本気ではなかった。余は、余を上回る存在と潰し合いたいのだ。あの時(・・・)の女神は余を封印するのが限界であった。だが、それではつまらない』


溢れ出たおぞましい魔力が場を満たす。


『我々の相手の本気・・・。それは果たして余を超える光となるか、世界に牙を剥く奈落の闇となるか』


しかし、誰もそれを恐れない。

寧ろ吐き気がする程の魔力を身に浴びて、心地よさそうに口角を上げている。


『行くがよい、愚か者共に鉄槌を下す使徒達よ。新世界の幕開け、その序章を旧世界に刻め』


光を呑む闇が、静かに動き始めた。















△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼














『皆さん、本日はお集まりいただきありがとうございます!いよいよ人類最強を決める祭典、ユグドラシル魔闘祭本選を開催いたしますッ!!』

「「「「うおおおおおッ!!!」」」」


予選の時よりも遥かに大きく、さらに多い声が大気を震わせる。舞台は変わって今回の魔闘祭用に建設されたという巨大な『ユグドラシル闘技場』という場所に俺達は居るんだけど、本選というだけあって観客の数がとてつもなく多い。


「・・・・・・」

「テミス、緊張してる?」

「あ、ああ。まだタロー以外の男性と話すのが苦手な状態で、一人で試合をするというのは・・・」


よく見ればテミスの手は僅かに震えていた。確かに、俺もこんなに多い人達に見られてる中試合をするのはちょっと緊張する。


テミスはそれに加えて男性恐怖症がまだ治ってない。多分対戦相手はほとんど男性だろうし、頑張ってほしいな。


「大丈夫だよ。試合中は応援しかできないけど、心は繋がってるからさ・・・なーんて」


ちょっとカッコつけてみた。

すると、テミスは若干頬を赤く染めながらそうだなと言って俯いてしまった。これ、引かれてるんじゃないか、俺・・・。


『ルールは予選と同じで、相手を気絶させるか場外に出す、降参させるなどで勝者が決まります!まあ、こんな説明を長々と聞くよりも皆さんが楽しみにしていたであろう、対戦カードの発表を行いましょうか!』


そんな司会の声が響いた直後、空に映像が浮かび上がった。どんな魔法なのかは知らんけど、なんか凄いな。


『このあと行う一回戦第一試合では・・・おおっと!王国予選優勝者のサトー・タローさんと、我らが世界樹の六芒星最強の男、アレクシス・ハーネットさんが対戦します!!』

「うえ、まじか」


空に俺達の顔と名前が表示される。

首を横に向ければ、不敵な笑みを浮かべてるアレクシスと目が合った。


「〝真の最強〟は早めに潰しておいた方が良さそうだ。お前に勝つことができれば、俺の優勝は確定だろうな」

「負けないぜ、アレクシス」

『さあ、第二試合は・・・おおっとぉ!そこでは皆さんお待ちかね、世界一の美少女とも言われているテミス・シルヴァさんと、イグニス予選優勝者のガチム・クロットさんの対戦です!』


はい、勿論それを聞いて観客達は発狂してます。


「イグニス、か」

「それってどこかの国だったり?」

「王国からかなり距離はあるが、強者達が多いことで有名な強国だよ」


テミスの説明を聞き、そのイグニスって国の想像をしてみる。テミスの対戦相手はムキムキのハゲだし、住んでるのはそんな人ばっかりなのかなぁ。


「まあ、テミスなら余裕で勝てるだろ。お互い二回戦に進めるように頑張ろうぜ」

「ん、そうだな」


その後も誰が誰と対戦するのか発表されていく。そして、全員の発表が終わってから俺とアレクシスの試合が行われることになった。


「・・・おいタロー。何をしている」

「え、ああ、ベルゼブブとディーネに面倒見てもらってるマナはどこにいるのかな〜と思いまして」

「そうやって油断していると、俺の大剣がお前を場外に弾き飛ばすことになるぞ」


大剣を構えたのと同時にアレクシスが魔力を纏う。こうして戦うのは初めてだけど、確かに場外に吹っ飛ばされる可能性は高いな。


「そういえば、お前はテミスに告白したりはしないのか?」

「おいおい、急にどうしたよ」

「ふと思ってな。優勝したら告白してみればいいんじゃないか?きっと向こうも喜んでくれるだろう」

「はあ?そんなわけないだろ」


まあ、なんでか俺だけ普通に話せたり、男なのに家に住まわせてくれたりしてるから、もしかしたらOKもらえるんじゃないかって思っちゃうこともあるけども。


「そっちはどうなんだよ。優勝したらラスティに告白したりはしないのか?」

「ああ、しない。というか、何故恋心を抱いていない相手に告白などしなければならんのだ」

「そんな事言って、実は・・・」

「もう試合が始まるぞ。いつまでそんな話をするつもりだ馬鹿」

「お前が先に言ってきたんだろ!」









─────────。








『試合、開始ぃ!!』

山薙やまなぎ!!!」


試合開始を告げる鐘がなったのと同時にアレクシスが距離を詰めてきた。そして魔力を纏わせた大剣を全力で振るってくる。


「なあ、アレクシス」

「っ・・・!?」


俺はそれを片手で受け止め、


「俺が勝ったら、ラスティに告白な」


アレクシスの頭にチョップして彼を地面に叩きつけた。


『なんと!あのアレクシスさんが、無名のタローさんの手によって地面にめり込んだぁ!』

「ぐっ、やってくれるな・・・!」


当然今のだけじゃ気絶なんてしてくれない。起き上がったアレクシスが、さっきの倍近い魔力を大剣に集中させる。


「だれが告白なんてするか!」

「ええ〜?」

「勝つのは俺だ、タロー!!」


そしてアレクシスは高く跳び上がり、空中で大剣を振りかぶる。


「潰れろ、轟破断ごうはだんッ!!」

「っ────」


振り下ろされた大剣を受け止めた瞬間、地面が粉々に砕け散って衝撃波が闘技場全体を激しく揺らした。


「チッ、これでも駄目か!」

「そらっ!」


全身から魔力を放ってアレクシスを押し返す。そのまま場外に出るかなと思ったけど、大剣を地面に突き刺してアレクシスは体勢を立て直した。


「お返しだ・・・!」


そして引き抜いた剣をアレクシスが振るう。

大剣から放たれた魔力が高速で迫ってくるのに気付いた瞬間、防御が間に合わずに俺は後方に吹っ飛んだ。


「やば───」


咄嗟に地面を殴って腕を突き刺す。

いやまあ、普通こんなことしたからって止まれないと思うけど、意味がわからんほど防御力が高いから俺の腕は折れない。


「やるな、タロー」

「そっちこそ」


こりゃ場外に飛ばされて負ける可能性は充分あるな。一回戦で負けるのは嫌だし、まだ早いけど決着つけようか。


「っ、来るか・・・!」


アレクシスが大剣に魔力を纏わせる。

けど、それじゃ遅い。


「負けたら告白とか超かっこ悪いからな。どうせなら優勝してから想いを伝えるさ」

「ぐぅっ!!?」


鳩尾を殴って吹っ飛ばす。

それによって地面を数回バウンドしたアレクシスは、場外の壁に激突して動かなくなった。


「ふむ、死んでないと信じよう」

『け、決着!なんと!世界樹の六芒星最強、つまり世界最強の男を破り、サトー・タローさんが二回戦進出を決めましたァ!!』


悪いなアレクシス。告白楽しみにしてるぞ。


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