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レベル1の時点で異世界最強  作者: ろーたす
集う最強、魔闘祭
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第49話 神罰の使徒潰し

「ふ、ふざけんなこの化け物がァ!!」


首を傾けて迫る拳を躱し、目の前に居る男の鳩尾を軽く殴る。それだけで男はその場に崩れ落ち、そのまま気絶してしまった。


『け、決着!第一回ユグドラシル魔闘祭王国予選優勝者は、恐るべき力で対戦相手を瞬殺し続けたサトー・タローさんに決まりました!!』

「「「「ブーーーーーー!!!」」」」

「おいこら、ぶん殴るぞお前ら!」


あれから順調に勝ち進み、決勝でも危なげなく勝利できた俺は王国予選優勝者となり、本選に出場することが決定した。


なのにブーイングとかまじ辛い。


「ったく、嫉妬は恐ろしいねぇ」


なんて呟きながら、マナを抱っこして癒しを得る為に観客席に上がることができる階段を探す。


インタビューとかがあるらしいけど、こんな状況でそんなことしてもどうせまた『ブーーーーーー』とか言われるだろうから行くつもりはない。


「ふふ。相変わらず銀髪女と仲が良さそうだから、私も結構嫉妬しているんだけど」

「ん?」

「タローさん、ひっさしぶりぃ!」

「うおっ!?」


魔闘祭出場しなきゃよかったかもなぁとか思いながら闘技場内をウロウロしてた時、急に誰かが抱き着いてきたので俺はそのまま思いっきり倒れ込んだ。


「あう〜、逢いたかったよぉ」

「ディーネ、何してるのよ!」

「むぐ・・・」


なんかめちゃくちゃ柔らかいものが顔面に押し当てられてるせいで息ができない。


というか、今『ディーネ』って言ったよな?


「ムム、もしかして魔王軍二人組?」

「あはは、そうだよ〜」

「いいから早くタローから離れなさい、この馬鹿セイレーン!」

「あいたっ!」


そんな声が聞こえたのと同時に柔らかいものが俺の顔面から離れる。目を開ければ、頭を押さえながら涙目になってるディーネと、若干不機嫌そうに腕を組んでるベルゼブブが居た。


「タローさん痛いよぉ・・・」

「よしよし」


ベルゼブブに頭を叩かれたっぽいので、ディーネの頭を撫でてやる。相変わらず可愛い子だな、ディーネは。


「タローは誰にでも優しくし過ぎなのよ。今のだって、急に抱き着かれて倒れたんだから怒ればいいのに」

「あー、ベルちゃんったら。私が頭撫でられてるを見て嫉妬してるんでしょ」

「勿論よ」


ディーネの服を掴んで俺から引き離したベルゼブブが、少し表情を和らげながら手を差し出してきた。


「久しぶりね、タロー」

「最近全然遊びに来ないから何かあったのかと思ってたよ。久しぶり、ベルゼブブ」


ベルゼブブの小さな手を掴み、軽く足に力を入れて立ち上がる。


「まあ、実際いろいろあったんだけどね。今日は手に入れた情報を伝えに来たんだけど・・・」


そこで言葉を切ったベルゼブブ。

どうやら俺の背後を見てるようなので振り返ってみると、テミスがこっちに向かって歩いてきていた。


「・・・ディーネ」

「あいあいさー!」


そんなテミスに、名前を呼ばれたディーネが駆け寄る。そして数秒何かを話し合った後、満面の笑みを浮かべながらディーネがテミスの腕を引っ張ってどこかに連れていった。


「タローにはいろいろと話しておきたいことがあるのだけれど、それをあの女に聞かれるのはちょっとね」

「テミスに関係することなのか?」


真面目にそう言うと、ベルゼブブの表情も久々に見る真剣なものへと変わった。


「結構前、タローがディーネと共にリヴァイアサンの迷宮へ行った日に、ハーゲンティという男と交戦したわ」

「なっ!?」

「〝神罰の使徒(ネメシス)〟の研究所らしき場所を見つけてね。そこに乗り込んだ時に私の前に現れたの」

「大丈夫だったのか?あの野郎に何か変なことされたりしたんじゃ・・・」

「ふふん、大丈夫に決まってるじゃない。私は魔界を統べる紅魔王なんだから」


そう言って胸を張るベルゼブブ。

まあ確かに、ベルゼブブくらいの実力があればハーゲンティなんて敵じゃないか。


「心配してくれてありがと。私、タローのそういうところが大好きよ」

「お、おお」

「それで、話を戻すけどね。ハーゲンティはその研究所らしき場所で信じられない事を行っていたわ」


その時のことを思い出したのか、不快そうに表情を歪めながらベルゼブブはとんでもないことを口にした。







「あの男、そこでクローンを生み出していたのよ。それも、銀髪女・・・テミス・シルヴァのね」








一瞬彼女が何を言ったのか分からなかった。








「テミスの、クローン?」

「そう。奴は大量に居たテミス・シルヴァのクローンを〝失敗作〟と言っていた。そして、その〝失敗作〟達は主の命令を聞くだけの、自分の意思を持たない人形のような存在だったわ」

「失敗、作」

「タローには言いづらいけど、私は襲い掛かってきたクローン全員を殺したの。それでも、〝完成作〟が何処かに居るからあの男は動揺なんてしていなかった」


意思を持たない人形のようなクローンが〝失敗作〟ってことは、今ベルゼブブが言ってた〝完成作〟は・・・。


「あのゴミクズ野郎、瞬間再生以外の外法にも手を出していやがるのか」

「っ、ソンノ・ベルフェリオ・・・!」

「なんだお前、私の名前覚えてたのか」


また何かが起こる前に、ソンノさんとかにこの事を伝えておこうと思った直後、急に俺とベルゼブブの間に黒い渦が出現し、その中から幼女にしか見えないソンノさん本人が出てきた。


「よう、馬鹿と馬鹿。暇だったから予選を見に来たんだが、まさかそんな話を聞けるとは」

「私とタローの間に割り込まないでよ!貴女と会話する気なんて全く無いから!」

「あ、そう。じゃあ別にお前とは会話しません。おいタロー。さっきの話について詳しく聞かせろ」

「ぐっ、このチビ・・・!」


ベルゼブブが魔力を纏ったので、闘技場が吹き飛ぶ前に急いで彼女を落ち着かせる。


「ベルゼブブが神罰の使徒(ネメシス)の研究所に行ったらしいんです。そこで、ハーゲンティとテミスのクローンが現れたらしくて・・・」

「〝完成作〟以外の〝失敗作〟達が死んでもどうでも良さそうだったわ。恐らくだけど、今の奴はテミス・シルヴァ本人も〝失敗作〟だと思っているはずよ」

「チッ、ふざけやがって」


いつも不機嫌そうなソンノさんだけど、今は本気で怒っているというのが見れば分かる。


「魔闘祭本選の時は私らも近くに居るから連中が現れても対処できるだろうが、問題は本選までの一週間と魔闘祭終了後だな。テミスが一人で行動する時間を極力減らさないと」

「なるべく一緒にいるようにはしますけど」

「風呂の時とかもか?」

「風呂前で待機ですね」


別に中を覗こうとか、聞こえてくる音で楽しもうとかそんなことは一切考えておりませんよ?


「何があっても、テミスには指一本触れさせませんよ。もう彼女が傷つく姿は見たくない」

「誰だってそうだ。そろそろ真剣に考え始めた方がいいかもしれないなぁ」

「何をよ」


ベルゼブブにそう言われたソンノさんは、小さな身体から膨大な魔力を放ちながら目を細め、


神罰の使徒(ネメシス)潰しだよ」


冷ややかな声でそう言った。

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