表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レベル1の時点で異世界最強  作者: ろーたす
目覚める災厄、嵐の予感
43/257

第41話 目覚める災厄、嵐の予感

「緊急依頼がオーデムに届けられたって?」

「ええ。セレス神殿に神獣種が現れたらしく、それの調査及び討伐が依頼内容らしいですよ」

「ふーん」


緊急依頼について報告する為、俺は王都ギルドにあるギルド長室を訪ねた。


しかし、どうでもよさそうに欠伸をしながら机に頬を引っ付けているギルド長、ソンノ・ベルフェリオを見ていると、こちらまでわざわざ報告するのが面倒に思えてくる。


相変わらず紫色の長髪はボサボサで、見た目は完全にまだ幼い少女だというのに目の下には大きなクマが。


毎日昼間であろうと爆睡しているというのに、何故そんなに寝不足な感じを醸し出しているのだろうか。


「話はそれだけか?まったく、眠いのにわざわざこんな時間に来やがって」

「もう9時ですが」

「12時ぐらいまで寝ないと寝たことにならないんだよ私は。アレクシス、お前と私を一緒にするな」

「はぁ、ギルド長ともあろう方が何を言っているんですか」


本当にどうしようもないな、この人は。


「で、緊急依頼だって?まあ、テミス一人なら達成確率はほぼ0に近いだろうが、タローのやつも居ることだし、余裕で神獣種ぐらいぶっ倒すだろ」

「それはそうでしょうね。ですが、彼らがその緊急依頼を受注するとは限りませんよ」

「ははっ、確かにな。もしあいつらが依頼を受注しなかった場合は、地獄への切符が私達の所に届けられるだけさ」

「何を人事のように・・・」


しかし、ギルド長から感じるのは、彼らに対する確かな信頼。必ず依頼を受け、そして現れた神獣種を必ず討伐すると信じているのだろう。


でもまあ、


「こっちまで依頼が回ってきた場合、俺やラスティ、そして自分が神殿まで行かなきゃならない。それが面倒だからタロー達に全部終わらせてもらおうと思ってるんでしょうけどね」

「ギクッ」


おい、今肩跳ねたぞこの人。














▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△











「なんか誰かに期待されてる気がする」

「ん〜?気の所為じゃない?」


蒼い迷宮に転移させられてから約1時間。

私・・・ディーネは、タローさんと共に襲い来る魔物達を危なげなく蹴散らしながら、順調に奥へ向かって進み続けている。


でも、そろそろ終点が近いと思う。

何故って、さっきから魔王ベルちゃんレベル・・・いや、もっと高いレベルの魔力を感じるから。歩いて奥へと進む度に、感じる魔力の持ち主が居る場所に近付いてるのが分かる。


「・・・奥にとんでもない奴がいるね。多分そいつが私達をこの迷宮に飛ばした存在、神獣種かな」

「うし、そいつをぶっ倒して早く帰ろうぜ」


そして、私達は最奥にたどり着いた。


『───到ったか』

「ッ・・・!?」

「ん?」


広い空間に出た瞬間に何者かの声が響き、同時に放たれた魔力が全身を駆け巡る。


大海なんて呼ばれ、魔力量には自信のある私だけど、魔力を感じただけで絶対に勝てないと思わされるレベルの相手がこの最奥に居る。


『道中に撒いた雑魚共は、お前達からすればそれなりに高いレベルの魔物であった筈なのだが、なるほど。そこの男からは微弱な魔力を感じるだけだが・・・ふむ、女が雑魚と交戦したのか』

「な、に・・・この魔力。ベルちゃんよりも圧倒的に・・・」

『そのベルちゃんという者がどれ程強いのかは知らぬが、私に匹敵する力を持つ者などそうは居ない。何故なら、私はかつて魔王と魔界を巡って何年も争った、魔王に届きし存在。荒れ狂う大海を統べる大いなる災厄だからだ』


突然空間が軋み、巨大な竜巻が出現した。そして、近付くだけで身体を引き裂かれてしまいそうなそれを消し飛ばし、内側から圧倒的魔力を放つ化物が姿を現す。


『我が名はリヴァイアサン。魔王との戦闘を終えて全魔力を使い果たした時に姑息な人間共の手によって封印されてしまっていたが、先日その封印は解かれた。ククッ、どうやら今この時代に魔王は居ないらしい。それは私にとって好都合、今度こそ私はこの世界を手中に収めてみせる・・・!』

「なんか痛い奴だなこいつ。さっき自分のこと災厄とか言ってたよな。うん、まぁ、頑張れよ」

「ちょ、タローさん・・・」


リヴァイアサン。

その名を聞いて震えが止まらなくなった私の隣で、急にタローさんがそんな事を言い出した。


この人、全然怖がってない。これだけの魔力なんだから、タローさんだって実力差は嫌でも思い知らされてる筈なのに。


「相手はあのリヴァイアサンだよ!?な、何でそんなに余裕そうなの!?」

「だって、そんな事言われてもリヴァイアサンとか知らないし。あ、でも確か俺の故郷では嫉妬を司る悪魔とか何とか・・・」

「リヴァイアサンは、昔ベルちゃんのお父さんと魔界を巡って争った魔王クラスの悪魔なの!しかも、ベルちゃんよりも圧倒的に強い・・・!」

「へぇ、ベルゼブブよりも強いのか」


な、何でこの人は相手のことを説明してもこんなに余裕そうなんだろうか。


「まあいいや。お前が俺達をこの迷宮に飛ばしたんだな」

『ああ、そうだ。封印が解けた直後は封印の地である神殿に居座っていたのだが、ある程度魔力が戻ったのでこの迷宮を造った。ククッ、私程の魔力があれば、別空間に迷宮を造り出すことも可能でな。神殿を訪れたお前達を暇潰しにこの迷宮に強制転移させたのだ』

「迷惑だっつの」


タローさんが指の骨を鳴らしながら、リヴァイアサンに向かって歩き出す。まさか、戦うつもり・・・!?


「駄目だよタローさん!」

「え、なんで?」

「私達じゃ絶対勝てないからだってば!」

『よく分かっておるな、そこの娘は。因みに私のレベルは800だぞ?』

「はっ!?」


それはつまり、目の前に居るリヴァイアサンが、今この世界で最も強い存在であるということ。


もう無理だ。

でも、せめてタローさんだけでも・・・!


「タイダルウェイブ!!」

『ほぅ、水魔法使いか』


リヴァイアサン目掛けて全力で水魔法を放つ。けど、リヴァイアサンが軽く息を吐いただけで私の魔法はあっさりと消し飛ばされた。


「そ、そんな・・・」

『なんだその魔法は。長い間封印されていたが、私が最も得意とする水魔法はここまで弱くなったのか。お前が今の世でどれだけ強いのかは知らぬが、水魔法使いの恥だな』

「っ・・・」


後先のことを考えず、私が使える最大の魔法を放ったのに通じない。それに、私が水魔法使いの恥だって・・・?


「酷いよベルちゃん・・・。こんな化物が居る場所に、私一人で調査に行かせるなんてさ・・・」


魔法の扱いに対する自信を、これからもっと強くなれるという希望を。全てをたった数秒で粉々に砕かれた。

魔王軍四天王としてのプライドが音を立てて崩れ落ちていく。


「タローさん、逃げて」

「なんでだよ」

「相手はレベル800なんだってさ。あはは、ベルちゃんの倍も強いんだよ」

「そうだな。でも、だからってなんで逃げなくちゃならないんだ?」

「死んでほしくないからに決まってるじゃない!私、こう見えて初めて人間と居て楽しいって思えたの!だから、折角友達になれたのに死んでほしくない・・・」


本当は怖くて震えが止まらないし、元々私は泣き虫だったから大きな声を出してたら涙が溢れ出る。


そんな私の頭に、タローさんの手が優しく置かれた。


「俺だってそう思ってるさ。だから、俺は君を置いて逃げたりなんて絶対するつもりは無いよ」

「タローさん・・・」

「大丈夫、俺は負けないしディーネには指一本触れさせない。ん?よく見たらあいつ指ないな」


軽くそんな事を言いながら、私に背を向けてタローさんがリヴァイアサンの前に立つ。


『・・・愚かよな、人間よ。そこの娘よりも微弱な魔力しか持たないお前に何が出来るのだ』

「いいから遠慮せずにこいよ」

『雑魚が図に乗るな!!』


膨大な魔力がリヴァイアサンの口元に集まり、放たれたのは凄まじい破壊力のブレス。


あれは防ぎようが無い。なのに、床を粉々に砕きながら迫るブレスを見ても、タローさんはその場から一歩も動こうとしない。


『ふははは!これを避けないのか!!』

「後ろにディーネが居るからな」


バァンと、大きな音が響き渡った。


「・・・え?」


何が起こったのか一瞬分からなかったけど、よく見れば死を覚悟させられる程のブレスが消滅している。ブレスに抉られ床は粉々に砕けているけど、タローさんが立っている場所から後ろの床は砕けていない。


それはつまり────


『い、今、何をしたのだ・・・!?』

「お前の一言できっとディーネは傷ついた。だから、お前は俺が潰すぜ、リヴァイアサン」


そう言ったタローさんの身体から、これまで感じたことのない桁違いな魔力が放たれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ