第38話 神殿での出会い
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緊急依頼:神獣種の討伐
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推定危険度SSS以上
★神獣種出現地
セレス神殿
★必ず3人同行させること
★今回の緊急依頼は世界樹の六芒星クラスでなければ達成が困難と思われる。オーデム支部に登録しているテミス・シルヴァが依頼を受注しなかった場合、又は依頼を受注した一般冒険者が死亡した場合は、この依頼は王都ギルドへと送られる。
★報酬はギルドより500万Gが支払われる。
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セレス神殿に神獣種と思われる生物が出現した。調査隊によると、その生物は神殿内に突然姿を現したとのこと。生き残ったのは二名のみで、彼等を襲った神獣種と見られる生物が放った魔力は離れた場所でも観測された。このままでは近隣の村や町に被害が出る可能性が高いので、依頼を受けた者は三日以内に神獣種の討伐を行うこと。討伐隊の無事を祈る。
ギルド本部
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現在、ギルドで緊急依頼を受注した俺達は、依頼内容が記された紙を見ながら指定されたセレス神殿という場所を馬車に乗って目指している最中だ。
「ふむ・・・」
「どーした?」
「いや、難易度は相当高いのだろうが、タローが居ると全く緊張しないものだなと思ってな」
なんてことをテミスに言われた。
確かに、俺が殴ると相手が神獣だろうと顔面を吹き飛ばしてしまうからなぁ。
「にしても、まさか今回全然知らん人と一緒にクエスト受ける事になるとは」
「俺は知ってるぜ。世界樹の六芒星の一人であり、銀の戦乙女と呼ばれる美しき剣士、テミス・シルヴァ。そして、現れて早々に神獣マーナガルムを従え、更に神獣ケルベロスを撃破した最強の男、サトー・タローをな」
「何だお前、ストーカーかなにか?」
「世界最強クラスの奴らの情報なんて、毎日嫌でも耳に入ってくるだろうが!」
「うるさいなーもう」
やっぱりテミスとマナだけでよかった。3人でのんびりと馬車に揺られながら移動したかったよ。
「てか、名前聞いてなかったな」
「ん、ああ、そうだったか。俺はマルク・フォルト。よろしく頼むぜ、世界最強」
「こちらこそ」
とりあえず握手しておく。その時、なにやら真剣な表情のテミスに声を掛けられた。
「なあ、タロー。少し気になることがあるんだが・・・」
「どうした?」
「以前ソンノさんが言っていた、〝何者かが神獣種の封印を解いている可能性がある〟ということについて」
「ふむ・・・」
そういやそんな事を言ってたな、あの人。確かソンノさんと戦ってる最中にベルゼブブが乱入してきた時のことだっけ。
「もしも何者かの手によって神獣種の封印が解かれたのだとしたら、私はこの件に〝神罰の使徒〟が絡んでいるのではないかと思うんだ」
「ハーゲンティのクソ野郎が所属してるっていう、よく分からん組織か」
「組織なのかどうかは今のところ不明だが、もし奴らの仕業だとしたら一体何が目的なのか・・・」
「まっ、大丈夫だろ」
不安そうなテミスの頭を撫でる。
「何があっても負けるつもりは無いし、俺が絶対テミスを守ってみせるからさ」
「タロー・・・」
「だああ!俺の目の前で超美少女とイチャイチャしてんじゃねえよ!!」
「んん〜、うるさいよぉ・・・」
マルクが騒いだせいで、俺の膝を枕替わりにして寝ていたマナが起きてしまった。うーん、別にイチャイチャしてたつもりは無かったんですけどねぇ。
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「見えた。あれがセレス神殿だ」
オーデムを出発してから3時間後、来たことのない地方を訪れた俺は、テミスが指さした方向を見て驚いた。
「思ったより綺麗なんだな」
「完成したのは何千年も前らしいんだが、これまで厳重に管理されてきたらしいからな」
あったのは巨大な建造物。
見た目は有名なパルテノン神殿みたいだけど、この神殿はまるで最近建てられたかのように白く綺麗だ。
「・・・」
「あれ、マナ。どうかしたのか?」
「あのね、中にとってもつよいしんじゅーがいるよ。マナ、なんとなくわかったの」
「そっか。流石だな、マナ」
「えへへ〜」
頭を撫でてやると、嬉しそうに尻尾を振りながらマナが抱きついてきた。
この子と付き合えた男は幸せになるだろうなぁ。あ、でも、誰であろうとマナと付き合うことを認めるつもりはないけどね。
「とにかく、一度中に入ってみよう。何が起こるか分からないから、警戒を怠らないようにな」
そう言ってテミスが剣を鞘から抜き、魔力を纏いながら神殿の入口へと近付く。俺もマナと手を繋ぎ、一応注意しながらテミスの背中を追う。
「あれ、人が来ちゃったみたいだね」
「むっ・・・!」
そして神殿内へ足を踏み入れた瞬間、向こうから少女の声が聞こえ、全員が足を止めた。
「何者だ?」
「そんなに警戒しなくて大丈夫なのに」
「まさか、お前がこの神殿に現れたという神獣種なのか?」
「残念、全然違うよ」
広い場所に唯一ある噴水のようなものの上に座っていた少女が地面に降り、笑みを浮かべながらこっちに歩いてくる。
テミスとマルクは全く警戒を解いてないけど、不思議とこの子が敵ではないということはなんとなく分かった。
「ふーん、黒髪ってことはあなたがベルちゃんが言ってたタローさんかぁ。うんうん、確かに強そう」
「ん?俺のこと知ってるの?」
「勿論だよ。あなたは魔界じゃかなり有名だからね」
少女がにっこり笑いながら俺の手を握る。
「私はディーネ。魔王軍四天王の一人で、《大海》なんて呼ばれてます。よろしくね♪」
「え、ああ。よろしく」
この子、まさかの魔王軍でした。