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レベル1の時点で異世界最強  作者: ろーたす
目覚める災厄、嵐の予感
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第35話 男が苦手なワルキューレ

『─────です』


誰かの声が聞こえる。

それは、透き通るような女性の声だ。


『貴方の─────を』


・・・?

何を言ってるのか、はっきりと聞き取れない。


『────を、世界の為に────』


何も見えない。

もっとはっきり喋ってほしいんだけど。


『───貴方なら、きっと』


貴方って、俺のことか?

状況が全然分からない。暗いし聞こえないし、それになんか手に柔らかいものが当たって・・・ん?












「お、おはようタロー。そ、そろそろ手を離してくれると助かるんだが・・・」

「・・・へ?」


目を開けたら、顔がめちゃくちゃ赤いテミスと目が合った。そして自分の手に視線を移すと、なんとテミスの胸を掴んでいるではないか。


なるほど、柔らかいものってこれのことかぁ。


「すいませんッ!!!」

「あ、いや。別に怒っては・・・」


飛び起きて全力で土下座する。

そうだ。またマナにみんなで寝よって言われたから、こうしてテミスと同じベッドの上で寝てたんだった!


「この前あんなことがあったばかりなのに、俺はなんてことをしてしまったんだぁぁ」

「別に悪気があったわけではないだろう?お、驚いたけど、気にしてはいないよ」


そう言ってくれるテミスだけど、これまでで一番と言っていいぐらい顔が赤い。駄目だ、申し訳なさすぎる。


「タロー!」

「は、はいっ!?」


どうしたものかと頭を床に擦り付けてたら、急にテミスが大きな声を出したので驚いた。


「私は気にしてないと言ってるだろう!だからタローも私の・・・その、む、胸を触ったことは気にしなくていいんだ!分かったか!」

「わ、分かりました!」

「うん、それでいい」


やばい、テミスが女神すぎる。

怒ったと思わせてからの微笑みはずるい。


「じゃあご主人さま、もういっかいテミスおねーちゃんのおむねモミモミしてぇ〜!」

「うおっとぉ!?ま、マナちゃん、そんなところに隠れてたのか。というか、なんでそんなエロ親父みたいなことを・・・」


急にテミスの後ろからマナが顔を出す。


「モミモミしたくないのー?」

「ちょっとしたい」

「た、タロー!」


これは駄目だったみたいです。

でも、最近元気が戻ってきてみたいなので、枕で俺の顔を叩いてくるテミスを見て自然と頬が緩んだ。














▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△












ハーゲンティと戦ってから早二週間。

あの一件のせいで、元々男と接するのが苦手だったテミスは更なる男性恐怖症に陥ってしまい、同じ六芒星仲間であるアレクシスに声を掛けられただけで俺の背後に隠れてしまう程男性を恐れてしまっていた。


でも、何故か俺だけは怖がられないというね。

それがなんでなのかは分からないけど、なんか特別な存在みたいな感じがするから嬉しい。


「さて、テミス。ほんとに今日行くのか?」

「あ、ああ。タローには二週間も迷惑をかけてしまったから、頑張って依頼を達成しなければ」

「いつも迷惑かけてんのは俺の方なんだけどなぁ。まあ、とりあえず外に出よう」


そして、今日テミスは久々に外に出る。

あれからずっと体調を崩してたけど、それも治ったからあとは男性恐怖症を克服するだけだ。


しかし。


「っ、うぅ・・・」

「テミスおねーちゃん、どーしたのー?」

「す、すまない。少しだけ待ってくれ」


外に出た瞬間にテミスの顔は真っ青になり、通りがかった人達を見て座り込んでしまった。


「テミス、やっぱり無理しないほうが・・・」

「いや。む、無理してでも克服しなくては」

「でも・・・」


立ち上がり、何度も深呼吸をするテミス。

彼女を安心させてやるにはどうすればいいのか。


「そうだ、手でもつなぐか?」

「え・・・」

「俺は絶対テミスの手を離さない。だから、一緒に頑張ってみよう」


そう言って手を差し出すと、テミスは少しだけ迷いながらも、頬を赤く染めながら俺の手を握る。


「よし、行くか!マナもおいで」

「はーい!」


駆け寄ってきたマナを小さな手を空いてる方の手で握り、俺はテミスと共にギルドへ向かった。













△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△















「ご主人さま、すっごいにらまれてたね!」

「はっはっは。そりゃこんな可愛い女の子二人と手をつないでたんだから、みんな嫉妬ぐらいするさ。でもさ、卵投げてくるのは酷いよなぁ」

「ひどーい」


どうしよう、ドキドキし過ぎて上手く呼吸ができない。外に出たのはいいけどその場から動けなくなってしまった私に、タローは優しい笑みを浮かべながら手を差し伸べてくれた。


「テミス、大丈夫か?」

「ああ、大丈夫・・・」


こうしてずっと私のことを心配してくれているタロー。彼のそばに居るととても安心する。やはり私は、彼のことが大好きなのだろう。


「・・・?どうした?」


しかし、それを伝えるのは無理だ。

自分がタローに抱いていた想いが恋心だったのを知ったのはこの前で、彼と手が触れ合うだけでまともに話すことができなくなる私が、彼の恋人などになれるはずがない。


「おっ、ギルドが見えてきた」


私と手をつないでいるタローが、向こうの方を見ながらそう言った。それを聞き、外を出歩くのが怖いので少しホッとしたが、こうして手をつないでいられる時間がもうすぐ終わることがとても残念だ。


「それじゃ、一緒に頑張ろうなテミス」

「・・・うん」


もうギルドはすぐそこだ。

怖い。本当は今すぐにでも帰りたい。でも、こうして私に優しくしてくれているタローに恩返しする為にも、必ず恐怖症を克服しなくては。


そう決意し、胸に手を当て呼吸を整えてから私はタローと共にギルドの中へと足を踏み入れた。

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