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レベル1の時点で異世界最強  作者: ろーたす
渦巻く陰謀、恋心
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第30話 ハーゲンティ現る

「あらら、テミっちゃんと喧嘩したんだ。あのテミっちゃんがタローくんに怒鳴ってるとこなんて想像できないや」

「だろ?だからハーゲンティの野郎に何かされたんじゃないかって心配なんだよ」


俺の隣に座ってるマナの頭を撫で、タローくんは優しいねぇなんて言いながらラスティが体を左右に揺らして歌を歌い始める。


どこかで聴いたことがある気がするだけで絶対に聴いたことがない異世界の歌に耳を傾けていると、焦っていた気持ちがちょっとだけ落ち着いてきた。


「へえ、歌うの上手だなぁ」

「ありがとー。まあ、アレくんにはうるさいって言われるんだけどね」

「そういうこと言う奴に限って、内心では〝歌うのうっま!!〟って思ってるもんだよ」

「んふふ、そうだといいな〜」


ラスティが日本に行ったとしたら、すぐにトップアイドルになれるだろうな。見た目もアイドルっぽいし、歌もカラオケで100点取れるんじゃね?ってぐらい上手いし。


「タローくん、テミっちゃんと喧嘩して落ち込んでるみたいだったから、元気だしてもらおうと思って歌ったんだけど、もう大丈夫かな?」

「ああ、サンキューな」


やっぱり気を遣われてたみたいだ。

ラスティの歌のおかげでだいぶ落ち着けたから・・・よし、早いとこハーゲンティをとっ捕まえてテミスと仲直りしなければ。


「それで、タロー。これからどうするの?」

「ん、そうだな。まずは───」

「王都に来てもらおうか。緊急事態だ。ハーゲンティの野郎が魔族を率いて王都に現れたらしい」

「おわっ、びっくりしたァ!」


急に後ろから声が聞こえたので振り返ると、ベッドに寝転がりながらニヤニヤしてるソンノさんと目が合った。


彼女を見た瞬間にベルゼブブが魔法をぶっ放とうとしたので急いで落ち着かせ、何があったのかと聞き返す。


「今言っただろう?脱獄した《邪蛇王ザッハーク》が大量の魔族共を引き連れて王都に遠足しに来たんだとさ」

「遠足荒れすぎでしょ。てか、なんでそんなことが分かるんですか?」

「こんな時に空間干渉は便利だぞ。一応王都ギルドとこの場の空間を繋いでたから、普通に受付嬢からその話を聞けたんだ。まあ、とりあえずお前らも来い。多分余裕で勝てるだろうが、眠いから早めに戦闘を終わらせたいんでね」


ふむ、それなら行くしかないな。

ハーゲンティが王都に居るのならテミスは安全だろうし、マナを留守番させてても大丈夫か。


「マナ、ちょっとだけ留守番しててくれるか?」

「またおでかけするの?」

「悪い奴と戦ってくるよ。だから、マナはテミスお姉ちゃんのことを守ってやっててくれ」

「うんっ!マナ、がんばるね!」


そう言ったマナの頭を撫でてやると、マナは嬉しそうにしっぽを振りながら部屋から出ていった。すると、そんなマナと入れ替わってアレクシスが部屋の中に入ってくる。


「おいタロー。テミスに何をしたんだお前は。さっきから何を聞いても無反応だぞ」

「いや、なんといいますか・・・」

「まあいい。ギルド長、急いで王都に戻りましょう」

「お前待ちだったんだよ、馬鹿」


ソンノさんが指を鳴らした直後、気が付けば俺達は激しい戦闘が繰り広げられてる市街地に建つ家の上に立っていた。


「あらまぁ。本当に魔族共が暴れてるのね。どうやら魔王軍所属ではないようだけど・・・」


バサりと黒い翼を広げたベルゼブブが、近くで兵士と戦ってる魔族達の前にふわりと降り立ち、そして笑顔で魔力を解き放った。


「あんたらのせいで魔王軍が攻めてきたって誤解されたらどうすんのよ。ほんと、いい加減にしなさい」

「は?え、ちょ───」

紅魔槍スカーレットボルグ


ベルゼブブがそう言ったのと同時に空から紅い槍が大量に降り注ぎ、その辺に居た魔族だけを的確に貫く。


「あの女、何者なんだ・・・?」

「魔王なんだって〜」

「魔王だと!?そんな奴が何故ここに!?」

「タローくんの友達だからだよ」

「友達なのか!?」


うるさいアレクシス。

とりあえず彼の言葉は無視し、屋根から飛び降りた俺はベルゼブブの隣に着地した。


「う、うぐぅ・・・」

「こいつだけ生かしておいたわ。ふふ、たっぷり話を聞かせてもらうとしましょう」

「おおっ、ナイスベルゼブブ!」


魔力で造り出された槍は魔族の腹部を貫き、さらに地面に突き刺さってるからこの魔族は身動きがとれないようだ。


まあ、とりあえず聞きたいことは────


「ハーゲンティはどこだ?」

「そ、ソンノ・ベルフェリオ・・・!」

「どこだって聞いてんだ」


急に俺の隣に転移してきたソンノさんが、倒れてる魔族の頭を踏みつける。


「お、教えるものか・・・!」

「ふーん、あっそ。ならまずは右腕だな」

「へ───ぎぃやああああッ!!!」


何の躊躇いもなく、ソンノさんは魔法を唱えて魔族の右腕を切断した。あれか、空間を切り裂くっつーあれか。


「ぐぅ、うううう・・・!」

「面倒だなぁお前。ほら、さっさと言えって」

「言わ、なぁああぁぁあぁぁぁああ!!?」

「あ、悪い。両足同時に切断しちまった。あとは左腕と・・・頭だな」

「わかっだ!いいます!いいますからぁ!!」

「最初から言えよ。馬鹿かお前」


ようやく魔族がハーゲンティについて何か言うつもりになったらしいので、ソンノさんは魔族の頭を強く踏み付けてから後ろに下がった。


「んで、ハーゲンティは今どこに居る。さっきから魔力を探ってんのに見つからないんだが」

「そ、それは────」

「いけないなぁ、魔族君。ぺらぺら人の事を喋ろうとする君は、罰として殺してあげよう」


それは男の声だった。

少し楽しげにそれが聞こえた直後、倒れていた魔族の身体が突然破裂し、大量の血が周囲に降り注ぐ。


「なんだお前。普通に出てくるのかよ」

「お久しぶりですね、ソンノさん」


気が付けば、さっきまで魔族が寝転がってた場所に、一人の男が立っていた。パッと見は優しそうな青年にしか見えないけど、こいつが・・・。


「脱獄して早々遠足ですか、ハーゲンティ君。沢山魔族(おやつ)を持ってきちゃってよぉ」

「まあ、そんなとこですかね。おっと、アレクシスとラスティじゃないか。元気だったかい?」

「黙れクズが。よくもまあ堂々と姿を見せれたものだ」


アレクシスが大剣を構える。ラスティも無言で鎌を召喚し、そして戦闘態勢に入った。


「はは、随分嫌われてしまったみたいだ・・・ってあれ、そこに居るのは人間に恋した魔王様にタロー君じゃないか」

「っ、なんで俺達のことを・・・」

「知ってるさ。今日テミスに聞いたからね」

「なんだと!?」


こいつ、やっぱり俺とベルゼブブが王都に行ってる間にテミスと接触してやがったのか!


「ふざけんなよ、ハーゲンティ。聞いたんじゃなくて勝手に覗き見たんだろうが」

「え、それって?」

「テミスの記憶を勝手に覗いたってことだ」

「そんなことが・・・」


改めてハーゲンティに顔を向けると、彼は楽しげに笑いながら腕を広げた。


「いやぁ、僕一人の為に《世界樹せかいじゅ六芒星ろくぼうせい》、そして魔王と最強の男がこうして集うなんてね。はは、気分が良いなぁ!」

「・・・テミっちゃんにあんな酷いことしたくせに、何笑ってんの?」

「酷いこと?あぁ、テミスを僕の〝奴隷〟にしようとした時のことかな?別にいいじゃないか。僕だって人間なんだから笑ったりさせてよ」

「ふざけるなッ!お前のせいで、テミっちゃんは何年も苦しむことになったのに・・・!!」

「苦しんでなんかいないさ。だって彼女は僕のものだし、彼女自身が僕と居ることが何よりの幸せだって言ってるんだしさ」


気が付けば体が動いていた。

頭に血が上りすぎて頭痛に襲われながらも、俺はヘラヘラ笑っているハーゲンティの顔面を全力でぶん殴る。


けど、俺の拳はハーゲンティの顔面をすり抜けた。


「なっ!?」

「残念、これは映像さ。本物の僕は此処とは違う場所に居る」

「映像のくせにさっき魔族を殺しやがったのか・・・!?」

「それが干渉魔法というものさ」


なるほど、だからソンノさんが魔力を探っても見つからないって言ってたのか。ふざけやがって・・・!


「どういうつもりだクソ野郎。なんで魔族共を使って王都を襲撃した」

「そりゃあ勿論貴女達を此処から動けなくする為ですよ。ほら、そろそろあっちの方でも・・・」


ハーゲンティが指さした方向で爆発が起こった。それを見てソンノさんは舌打ちし、魔力を放ちながらふわりと浮き上がる。


「お前、今何処に居てやがる」

「教えるつもりはありません。やっとこうして脱獄することができたんです。ずっとやりたかったことを、今日させてもらいますよ」

「・・・まさか」


ソンノさんが魔法を放った瞬間、ハーゲンティの姿がフッと消えた。どうやら映像を消したようだ。


「タロー、今すぐテミスの家に戻れ」

「っ、やっぱりあいつは」

「奴の目的は恐らくテミスだ。しくじった。お前は連れてくるべきじゃなかったかもしれない」


俺の背後に黒い穴が出現した。

その向こう側には、さっきまで俺が居た部屋がある。


「急げ。手遅れになるかもしれない」

「分かりました・・・!」


ソンノさんにそう言われ、俺は急いで穴の向こうへと飛び出した。そして階段を駆け下り、リビングへと向かう。


「っ、くそ・・・!!」


あれだけ椅子に腰掛けたまま動こうとしなかったテミスは、たった数分の間に姿を消していた。

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