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レベル1の時点で異世界最強  作者: ろーたす
終章 エターナルトワイライト
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86.第1層 試練の領域

入口は門のようになっており、そこを通って俺達は世界樹内部へと足を踏み入れた。樹の根が絡み合って壁や床になっており、まるで迷宮のようだ。


あちこちの床から紫色に輝く泡のようなものが浮かび上がり、天井に向かってふわふわ飛んでいく。幻想的な光景が、目の前に広がっていた。


「全員注意して。今の世界樹は迷宮そのもの、どこから魔物が出てくるか分からないよ」


世界樹攻略班のリーダーはマナ姉だ。本人はやたらと俺を推してきたけど、やはり教師で状況判断が早いマナ姉こそリーダーに向いているだろう。


「現在地が分からなくなりそうだから、地図を描きながら進もう。地図用の紙を何枚か持ってきたの」

「あ、じゃあ私が描きます!」

「うん、ありがとうアーリアちゃん」


マナ姉に紙とペンを手渡されたアーリアが、早速現在地周辺を地図に描き込んでいく。確かに、こんな危険な場所で迷子になったら大変だ。それに、のんびりしている時間もない。


常に警戒を怠らず、俺達は固まって世界樹内部を歩き続ける。膨大な魔力が満ちているので、徘徊しているであろう歴史書の悪魔や魔物達の魔力を感じ取れない。ばったり遭遇した時に慌てないようにしなければ。


「上に進む為にはどうすればいいんでしょうか」

「階段とかがあるんじゃないかな」

「天井を破壊して方が早く先に進めるのでは?」


クレハが大樹の根を呼び寄せる。どうやら地下深くに終末領域の侵食を逃れた根がまだ残っているらしく、この迷宮を造り出している侵食根は操作できないようだ。


「【世界樹の星根(エトワールレーヌ)】!」


勢いよく地面から伸びた根が、天井へと殺到する。しかし次の瞬間、クレハの魔法は見えない力で弾かれた。


驚くクレハの隣でマナ姉も全く同じ場所に雷魔法を撃ち込んでみたが、やはり派手な音と共に弾かれる。どうやら世界樹内部の壁や床、天井は破壊できないらしい。


「進みたければズルはするなって事か」


抜こうとしていた刀を戻し、歩き出したマナ姉を追う。一応持ってきていた魔導フォンは起動しない。ここに来てから結構経ったが、今は何時だろうか。


「皆、止まって!」


と、先頭を歩くマナ姉がそう言う。立ち止まった俺達の前方には、まるで魔闘場のように広い場所があった。


「い、行き止まり?」

「おいマナ姉、空間の歪みが発生してる。別の場所から何か来るぞ········!」


突如、歪みの中から巨大な悪魔が姿を現した。見覚えがあるその悪魔は、以前アトラル古代遺跡で戦ったスカルエクスキューショナーだ。


ただ、デカい。神狼化したマナ姉よりも巨大なスカルエクスキューショナーが、1度に数十人の首を刎ねてしまえそうな鎌を手に持ち浮遊している。


「ボスって事か········?」

「分からない。でも、こんな場所で現れたんだから、きっと先へ進む為の条件だと思う。全員、戦闘準備」


魔力を纏う。そんな俺達を見て、大処刑人は奇妙な笑い声を発しながら猛スピードで移動を開始した。


「アーリアちゃん、補助魔法で全員の敏捷を底上げして!ユリウス君、エリナちゃん、クレハちゃんは後方から魔法で足止め!残った私達はその隙に仕留めるよ!古代魔法と鎌による攻撃には注意してね!」

「「「了解!」」」


アーリアが魔法陣を展開し、全員の敏捷が上昇する。その直後にクレハ達が放った魔法が大処刑人の鎌を弾き、俺達は動きの止まった悪魔目掛けて地を蹴った。


「はああっ!【ストームハンマー】!」


右腕に叩き込まれたのは、凄まじい爆風を纏ったリースの拳。轟音が鳴り弾き返された骨の腕に、今度は疾風の蹴りを打つ。瞬きする間に繰り出された2連撃が、処刑人を大きく仰け反らせた。


「ふッ────」


続いて風を切って振られた鎌を迎え撃つのは、雷光を纏ったマナ姉の蹴り。何かが爆発したのかと錯覚してしまう程の音と衝撃波が駆け抜け、大処刑人の鎌は手から離れて天井に突き刺さる。


「よっしゃあ!【旋風炎舞せんぷうえんぶ】!!」


跳躍したソルが、振り回した槍から炎を放つ。それは炎の渦と化して大処刑人を襲い、燃え盛る赤が全身を包んだ。


「自分が処刑される気分はどうだ?」


最後に、身を焦がしながら詠唱を始めた大処刑人を真上から見下ろしながら、俺は魔力を集中させた刀を構え────


捌ノ太刀(はちのたち)月雨つきさめ】」


連続で真下目掛けて突きを放ち、大処刑人の全身を粉砕した。念の為飛び散った破片も砕いておいたが、どうやら完全に仕留める事ができたらしい。


『流石です、ユウ様!』

「ティアーズの魔力も上乗せされていたからな」


着地し、神雫を鞘に収める。しかし驚いたな。全員で協力すれば、あれだけ苦戦したスカルエクスキューショナーの大型でもこれだけあっさり倒せるとは。


「こうすれば魔力もあまり消費しなくて済むからね。それにしても、息ぴったりで驚いたよ」


手を叩きながら、マナ姉が嬉しそうに笑う。確かに、敵に隙を与えない良い連携だった。この調子なら、またボス級の悪魔が現れても何とかなりそうだ。


「あ、マナ先生。あれ········」

「道が出現しましたね」


スカルエクスキューショナーを倒す事が条件だったらしい。視線の先に、壁の向こうへと進む為の道が現れた。警戒しながらその先へと足を踏み出してみたが、罠などは起動しないので大丈夫だろう。


「よし、先に進むよ」


マナ姉に続き、揃って歩き出す。先程まで歩き回っていた場所とは違い、見た事の無い魔物が数多く出現する。


魔法による攻撃や支援を主に行うエリナやアーリア達は極力戦闘に参加させず、通常攻撃で敵を仕留める事ができる俺やマナ姉、ソルとリースがその魔物達の相手をした。


元々世界樹に生息していた魔物なのか、それともヴィータが生み出した魔物なのか。手こずりながらも俺達は進み続け、やがてスカルエクスキューショナーが出現した場所に似た部屋に辿り着く。


『ユウ様、この場所も空間が歪んでいます』

「次の敵が出てくるのか」


次の瞬間、真上から猛スピードで何かが突っ込んできた。真っ先に反応したマナ姉に蹴りで軌道を変えられ、それは向こうの壁に衝突する。


「煉獄のアビスデーモン········!」

「グオオオオオオオッ!!」


スカルエクスキューショナーと同じく何倍も巨大な悪魔、アビスデーモンが振り向くのと同時に火炎を吐き出す。それはリースが放った風で消し飛んだものの、それを見た途端アビスデーモンは駆け出した。


『歴史書の悪魔がこの場所に集中しています!ユウ様、私の魔力を使ってください!』

「魔力なら俺の魔力に上乗せしてるけど」

『この程度の敵を相手にユウ様の魔力を消費する必要はありませんよ』

「そうか、なら────」


俺は魔力を体内に戻し、ティアーズの魔力のみを神雫から引き出す。そして皆の前に立ち、振り下ろされた爪を受け止めた。


やはり力はスカルエクスキューショナーよりも遥かに上だ。衝撃で骨が軋んだが、踏み込んでそのまま弾き返す。


「ユウ君、その魔力は········?」

「ティアーズの魔力さ!」


膝蹴りをアビスデーモンの顎に叩き込み、ぐらついた巨体に水の刃を放つ。ティアーズは支援の方が得意だが、やはり女神の魔力は強大だな。


「【身体強化フィジカルブースト】!!」

「ユウ、サポートするわ!」


アーリアの魔法で身体能力が強化され、背後からエリナの魔法がアビスデーモンを貫く。続いてユリウスの弾丸が口内に撃ち込まれ、爆発。血を吐き出しながら悪魔は咆哮する。


「マナ姉!」


筋力が上昇しているので、俺はアビスデーモンの尾を掴んで放り投げた。振り向けば、マナ姉が全身から稲妻を放出して上を睨んでいる。


「クレハちゃん、リースちゃん。他の悪魔も天井付近まで飛ばせるかな」

「お任せ下さい」


クレハとリースの魔法が迫っていた通常サイズの悪魔達を上に弾き飛ばす。そして全ての悪魔が天井付近に集まったのを確認し、マナ姉は魔力陣を展開した。


「【サンダーフィールド】!!」


放たれた無数の雷が全悪魔を焼き払う。圧倒的な威力だ。今のマナ姉が全力で最大の魔法を放てば、どれだけの規模を破壊する威力となるのだろうか。


「ふう、終わったな」

『っ、ユウ様。上層へと移動する為の転移魔法陣が出現しました』


アビスデーモンを倒した事で、輝きを放つ魔法陣が地面に現れる。どうやら世界樹の上層へと転移できるらしい。


「皆、念の為魔力を纏った状態を維持して。揃って上層へ移動するよ」


魔法陣の上に全員が立った直後、光が強まって景色が切り替わる。この段階で、俺達が世界樹に入ってから5時間が経過したとティアーズが教えてくれた。

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