77.銀の戦女神
いよいよ、遠方に世界樹が見えてきた。眼下には、何処までも広がる美しい緑の絨毯と、神聖な雰囲気を感じさせる巨木がそびえ立つ森。そして、旧時代からそこに存在し続ける古代遺跡群が目に映る。
「··········正直、貴女達は相手にしたくなかったんです。負ける可能性があるから···········とかじゃなくて、ユウ君のご両親ですからね」
そう言うヴィータの視線の先、古びた柱の上に立つ神速の剣士。風が束ねられた銀の長髪を揺らし、華奢な体から溢れ出す魔力はその髪と同じ銀色だ。
ヴィータの声を聞き、剣聖テミス・シルヴァは刀に手を置く。既にこの辺り一帯は、彼女の攻撃範囲内である。
「私も、君を相手にはしたくなかった。世界を滅ぼす終の女神とはいえ、共に勉学に励んだユウの友人だから」
「ふふ、貴女は優しいですね。ですが今日、その優しさが貴女を破滅させる」
どす黒い魔力を放出しながら、ヴィータは微笑んだ。そんな彼女を見上げながら、テミスはずっと聞きたかった事を口にする。
「君は何故、ユウを狙うんだ?」
「狙う?」
「君がユウに対して見せる、異常な執着。私の息子を何かに利用しようとしているのか、別の理由があるのか···········」
「そうですね···········私はただ、彼を新世界へと導きたいだけですよ」
「世界を滅ぼした後、新たな世界を創造するつもりか?」
「いえ、この世界の中心───全ての母とも言うべき存在である世界樹が、再び世界を再生させるでしょう。私はその世界の景色をユウ君に見せたいだけ」
「その理由が分からない。何故ユウなんだ?」
「···········貴女には分かりませんよ」
ゾクリと、テミスの背中を悪寒が駆け抜けた。空に浮かぶヴィータは優しい笑みを浮かべているものの、明確な殺意を自分に向けている。
「そもそも、何故君はユウを知っていた」
「はい?」
「最初からユウを狙って学園にやって来たんだろう?会った事のないユウを、何故新たな世界に導きたいと思った?まるで、以前からユウと知り合いだったかのようだ」
「···············」
殺意が増す。
「答えなさい、ヴィータ・ロヴィーナ」
「·······················」
「···········いや、もういい」
刀を抜き、テミスがヴィータを睨む。
「私の息子に手を出そうというのなら、たとえユウの学友であろうと敵だ」
「勝てるとでも?」
魔力を手元に集め、魔法陣を展開。
「滅びを受けよ、テミス・シルヴァ」
そして放たれた、破滅の魔弾。町を消し飛ばす程の魔力が込められた魔弾は凄まじい速度で地上に迫り────
「私の夫が命懸けで守った世界だ。絶対に、守ってみせる」
テミスの眼前で、消し飛んだ。魔力を纏わせた刀が、魔弾を斬り裂いたのである。
「弐ノ太刀···········」
「【加速】────」
魔法陣を蹴り、急降下するヴィータ。視線の先ではテミスが技を放つ構えをとっており、一瞬で目の前まで距離を詰めたヴィータは全力で足を振り上げた。
それを見たテミスは技を中断、強引に身を捩って蹴りをかわした直後、足から放たれた魔力が背後の遺跡を粉々に砕いた。しかしそれは隙となり、既にテミスは次の技を放つ体勢に。
「漆ノ太刀【月衝閃】!!」
剣先から放たれた魔力はヴィータに直撃し、そのまま吹っ飛ばした。そんな彼女を追ってテミスは柱を蹴り、猛スピードでヴィータに接近。
「捌ノ太刀【月雨】!!」
凄まじい速度での突きが、目にも留まらぬ速さで何十何百発と放たれる。すぐに障壁を展開したヴィータだったが、たった数秒で呆気なく砕け散り、再度突きを浴びて吹っ飛んだ。
「参ノ太刀─────」
「無駄ですよ、無駄」
「っ!?」
再びヴィータを追おうとしたテミスに、ヴィータが全身から魔力を放つ。その魔力は記憶されていた魔法陣を数え切れない程テミスの周囲に作り上げ、一斉に数々の大魔法が放たれた。
直後、凄まじい衝撃が遺跡群を激しく揺らす。木々は倒壊、古代の遺産は砕け散る。誰であろうと、最上位魔法をこれ程までに撃ち込まれては、決して生きてはいられないだろう。
「くっ···········!」
しかし、彼女は剣聖。傷こそ負っているものの、彼女はほぼ全ての魔法を斬ってみせた。それを可能にしたのは、彼女以外未だ誰も到達できていない、神速の領域に踏み入った剣の腕である。
「へえ、今ので死なないなんて」
これまで相手にしてきた英雄達とは別格の強さを目の当たりにして、ヴィータは嬉しそうに笑う。
「ユウ君を育てた人だから当然か···········!」
そして、更に速度を上昇させてテミスに接近した。あれだけ魔法を浴びせて耐えるのなら、至近距離から魔法を炸裂させる。そう思いながら、ヴィータは魔力を両手に集め────
「はああ···········魔力解放ッ!!」
「っ!!」
突如、凄まじい魔力を解き放ったテミス。それによって暴風が吹き荒れ、ヴィータは後方に吹き飛ばされた。
「まさか、魔力を解放していない状態であれだけの数の魔法を···········?」
「漆ノ太刀────」
そんな彼女の背後に、瞬間移動でもしたのかと疑ってしまう程の速度でテミスは回り込む。
「【月衝閃】!!」
ギリギリで反応したヴィータだったが、放たれた突きを完全に避けることはできなかった。転移魔法で離れた場所に現れた彼女の肩からは、ダラダラと血が流れ落ちている。
「伍ノ太刀【新月】!!」
それでも攻撃の手は緩めず、次々と不可視の刃がヴィータ目掛けて放たれる。それらを直感で躱しながら、膨大な魔力を手元に集めたヴィータは空高く飛び上がった。
「すみません、正直舐めていました。まさか本気を出した貴女が、これ程までに強いとは」
「っ、この魔法は···········!」
「もう手を抜く必要はありませんね。貴女がユウ君の母だろうと関係ない。今ここで、貴女を破滅へと導きましょう」
空が紅く染まる。同時に巨大な魔法陣が展開され、その中心に凄まじい魔力が集まり始めた。
「消えろ、【スカーレットノヴァ】!!」
「ッ──────」
天より放たれた、ベルゼブブの切り札である魔法を更に威力上昇させた紅の魔弾。逃げ場など存在せず、テミスは魔力を刀に集中させて跳躍する。
「壱ノ太刀─────」
「迎え撃つつもりですか!」
魔弾と刀身が衝突。次の瞬間、魔法の中に飛び込んだテミスは目にも留まらぬ速さで次々と斬撃を放った。
ヴィータの視線の先、放った魔弾が空中で弾け飛ぶ。そんな彼女の目の前で、魔弾から飛び出したテミスは更に魔力を高めて刀を振った。
「【幻月乱舞】!!」
「くっ────」
確実に斬った···········筈だった。しかし、妙な感覚を覚えてテミスは振り返る。
「これが剣聖、ユウ君の母」
「まさか、魔力を吸収したのか!?」
ヴィータは無傷。テミスが刀に纏わせていた魔力は消えており、逆にヴィータの魔力が上昇している。
「素晴らしい魔力だ!!」
「ぐっ!?」
直後、転移したヴィータがテミスの腹部に膝蹴りを叩き込んだ。更に回し蹴りを放ち、テミスを地上目掛けて吹っ飛ばす。
「ふふ、相手が強ければ強い程、私は強大な魔力を得る事ができる。威力の高い魔法使用は控えた方がいいですよ?」
地面を滑りながら着地したテミスの前に、膨大な魔力を放ちながらヴィータが降り立つ。そして、自身の右腕に3つの魔法陣を展開した。
「何をするつもりだ?」
「貴女に魔法を撃っても斬られますからね。実は私、本来は近接戦闘の方が得意なんです」
魔法陣から黒いオーラが放出され、それは徐々に剣のような形となっていき、やがて右腕全体がオーラの剣と化す。
「魔剣クロノス。私のみが扱える究極の剣です」
「魔力の剣············」
「さあ、最強の剣士が膝をつく姿を全世界に公開するとしましょうか」
大地が爆ぜた。勢いよく駆け出したヴィータが、これまでとは比べ物にならない速度でテミスに接近、そして魔剣を振り下ろす。
それを刀で受け止めたテミスだったが、あっさり押し負けて弾き飛ばされてしまった。
「くっ、弐ノ太刀────」
「遅いッ!!」
空中で技を放とうとしたテミスだったが、目の前に現れたヴィータがテミスを蹴って地面に叩きつける。
「捌ノ太刀【月雨】!!」
更に真上から超高速で数え切れない突きを繰り出し、立ち上がろうとしていたテミスを襲う。魔力からコピーされた剣技は容赦なくテミスの身を刻み、血が周囲に飛び散った。
「ほらほら、もう終わりですか!?」
魔剣と刀が激突。そのままテミスは吹っ飛び、ヴィータは魔剣を伸ばして鞭のように振り回す。魔力で生み出された魔剣は自由自在に形を変え、予測不可能な動きでテミスを襲った。
「【銀障壁】!」
「無駄ァ!!」
咄嗟に作り出した障壁は、魔剣が直撃した瞬間に砕け散った。そしてそのまま魔剣はテミスの体に巻き付き、とてつもない力で全身を締め上げる。
「ぐうっ!?」
「魔力を纏って身を守っているようですけど、すぐに魔剣は貴女の体を切断しますよ!」
高く跳躍し、ヴィータが魔剣を振り上げる。それによってテミスは遺跡がかなり下に見える高さまで持ち上げられ、ヴィータは勢いよく魔剣を振り下ろした。
今度は地上に叩きつけられ、テミスの表情が歪む。しかしそれだけでは終わらず、ヴィータは魔剣を振り回した。
何度もテミスを遺跡や巨木に衝突させ、やがて彼女の魔力が弱まったのを感じたヴィータは、最後にテミスを猛スピードで投げ飛ばす。
「呆気ない···········所詮は人か」
「ぐっ、うぅ···········」
遺跡に突っ込み、ボロボロになったテミスを見下ろしながら、ヴィータはとどめを刺す為に魔法陣を展開した。
「これで終わりです」
「いや、まだだ」
「············?」
そこで気付いた。テミスの魔力が、有り得ない程高まっている。何をするつもりかと警戒するヴィータの目に映るテミスは、立ち上がって右手を前に突き出した。
「大空を断ち、大海を割り、大地を裂く神伐の剣よ。我は光を求める者、我が声を聞き顕現せよ───《真・宝剣グランドクロス》」
空間にヒビが入り、凄まじい閃光を放ちながらテミスの手元に出現した黄金の剣。大地を震わせる程の魔力を放つその剣を手に取り、テミスはヴィータを睨む。
「全力でいかせてもらおう、終の女神」
「面白い···········!」
地を蹴り、空を蹴る両者。次の瞬間、魔力と魔力がぶつかり合い、遺跡群が消し飛んだ。
衝突の余波が、大地を激しく震わせる。神の光を宿した宝剣から放たれる一撃は、まさに天災だった。
「まさか、魔力解放を遥かに上回る力を持っていたとは!」
「【アークブレイド】!!」
振り下ろされた宝剣から、光の刃が飛び出した。それを避けて振り返れば、遥か遠くに見える山が縦に裂けたのが目に映る。
「【魔王の鉄槌】!!」
「はあッ!!」
至近距離でヴィータが魔法を放つが、それをテミスは宝剣で受け止め、そして消し飛ばす。
「宝剣が貴女を真なる主として認め、進化している。これが英雄王の妻、剣聖テミス・シルヴァ───いや、銀の戦女神の力!」
「【限界加速】─────」
今度こそ、ヴィータですらテミスの姿を目で追えなくなった。残像を生み出す程の速度で移動を開始したテミスが、あらゆる方向から銀の刃を放つ。
かなりの魔力が込められた剣聖の斬撃は、いくら終の女神とはいえ完全には防ぎきれない。
「あはははっ!」
肩や背中が裂けながらも、ヴィータは魔剣に魔力を込める。次の瞬間、ヴィータの周囲に数十本の武具が出現した。
「【武神の四十六神器】」
世界に満ちる魔力から再現された、古代魔法。遥か昔、武神と呼ばれた男が召喚していた数々の武具を、ヴィータは再び呼び覚ましたのだ。
「ゴリアテの大剣よ!」
魔法の力で勢いよく飛ばされた大剣が、一瞬姿を見せたテミスを襲う。
「海王の槍よ!」
それを弾いたテミスに、今度は水を纏った槍が飛ばされる。
「羅刹の────」
「遅い」
しかし、槍がテミスを貫くことはなく。気が付けば全ての武具が砕け散っており、ヴィータの背後でテミスが宝剣を構えていた。
「くっ!?」
咄嗟に魔力を纏わせた腕を振るうが、テミスは消えており。今度は反対方向でテミスが宝剣を振り上げている。
「速すぎる···········!」
急いで振り向くが、再びテミスは見当たらず。
「上か···········!」
「【滅光陣】!!」
放たれた突きは避けたものの、剣先から触れた地面に魔力が流し込まれ、広範囲に巨大な魔法陣が描かれる。そして、魔法陣から放たれた魔法は天を貫く程の光の柱と化し、容赦なくヴィータを飲み込んだ。
「─────くっ、ふふふ!無駄ですってば。どれだけ魔法を放とうと、私は魔力を吸収する事ができると言ったでしょう?」
しかし、ヴィータは魔力を吸収した。消滅した光の中から姿を見せた彼女は、テミスを見て勝ち誇ったような笑みを浮かべる。
「いや、それでいいんだ」
「は?」
「君は、1日に3度しか魔力吸収を行えないだろう?」
それを聞き、ヴィータの顔色が変わる。
「強大な魔力を得たいのであれば、全ての魔法を吸収すればいい。しかし昨日、全世界からの魔力強奪は別として、君は3度しか魔力吸収を行わなかった。魔導兵器ノヴァ、ベルゼブブが放った2つの魔法。それ以外の魔法は全て吸収しなかった···········いや、できなかったと言うべきか」
「何を言って···········」
「ソンノさんの大規模な空間干渉も、魔力を奪えば完全に無効化できた筈。ネビアさんの精神干渉も、アレクシスとラスティの合技も。魔力が欲しければ吸収してしまえば良かったのに。それができなかったのは、初戦で既に魔力吸収を3度行ってしまっていたからだ!」
剣先を、ヴィータに向ける。
「私との戦闘で、君は2度魔力吸収を行った。残るは1回。そんな状態で、君はタローと戦う事になる!」
地を蹴り、ヴィータに急接近。僅かだが動揺を見せたヴィータを蹴り飛ばし、更に剣先から放った魔力がより遠くへとヴィータを吹っ飛ばした。
「まさか、見破られるなんて」
「はあッ!!」
そして速度を上昇させ、ヴィータが吹っ飛ぶ先へと回り込み、そのままヴィータを真上に弾き飛ばす。
「魔力を吸収するか、まともに食らうか。それは君自身が選ぶといい!」
凄まじい魔力を宝剣に集め、テミスは全力で奥義を放った。
「【グランドクロス】!!」
空中で交差した2つの斬撃がヴィータを襲う。転移魔法を展開している暇はない。避けようにも、自身の移動速度を遥かに上回るスピードで斬撃は迫ってくる。
「おのれッ──────」
直後、空が光に包まれた。テミスの奥義がヴィータに直撃し、炸裂したのである。衝撃波が雲を吹き飛ばし、大地を粉砕。しかし次の瞬間、光は唐突に消えた。
「··········吸収されたか」
空に浮かぶ、1つの影。全身から血を流すのは、常に余裕の態度を崩さなかったヴィータだ。今は呆然とテミスを見つめており、あれだけ周囲に満ちていた魔力もあまり感じられない。
「美しい、光でした」
そんなヴィータが、ぽつりと呟く。
「まるでユウ君と同じ、優しくて綺麗な世界。ユウ君は、貴女と同じ心を持っている」
テミスは警戒した。何故か、嫌な予感がする。
「ユウ君と同じなんて、気に食わない。やはり貴女は、今ここで消しておかないと」
「っ、何だこの魔力は···········!」
バチバチと、黒い稲妻がヴィータの周囲を駆け回る。そして顔を上げたヴィータは、凄絶な笑みを浮かべながら秘めた魔力を解き放った。
「ま、まさか、魔力を解放して···········!」
「あはははははははははははッ!!」
世界を駆け抜けた魔力の持ち主は、ゆっくりと両腕を広げた。空は禍々しい色に染まっており、あまりにも強大な魔力を浴びてテミスは思わず息を呑む。
「消えなさい、テミス・シルヴァッ!!」
直後、急降下してテミスと同じかそれ以上の速度で駆け出したヴィータ。そして顔面目掛けて放たれた蹴りを避けたものの、続けて振るわれた魔剣に斬られてテミスは転倒した。
「くっ!」
魔剣が振り下ろされる前に、倒れたままテミスは両足でヴィータを蹴り飛ばす。そのまますぐに立ち上がったが、既にヴィータは目の前に立っていた。
「宝剣召喚··········凄まじい力を得る事が可能だけど、その分肉体への負荷は桁違いだ。このまま戦い続ければ、もう立てなくなるんじゃないですか?」
「っ··········!」
「ねえ、どんな気持ちですか?」
勢いよくテミスの腹部にめり込んだ、魔力を纏わせたヴィータの拳。
「が、はっ··········!」
「命懸けで宝剣を召喚したのに、相手はそれ以上の力を持っていた。このままじゃ、愛する家族に会えずに死にますけど」
顎を蹴り上げられ、テミスは宙を舞う。
「私はね、ユウ君さえ居てくれればそれで良いんです。貴女が彼の母であろうと、私にとっては不要な存在」
更にそんな状態で魔法を浴び、派手に吹っ飛ばされたテミスは崩れた瓦礫に突っ込んだ。
「負の感情を抱きながら死になさい」
漆黒の魔力がヴィータの手元に集まり、巨大な球体となる。それをヴィータはテミス目掛けて放ち、魔力を炸裂させた───が。
「息子達が、私に力を与えてくれる」
その魔法は真っ二つに両断され、ヴィータの胸元から真っ赤な血が大量に噴き出していた。
「息子達が居るかぎり、私は負けるわけにはいかない」
「············恐ろしい」
視線の先、立ち上がったテミスを見てヴィータは笑う。これだけ力の差を見せつけても、まだ諦めていない。僅かだが、ヴィータの手が震えた。
テミスはボロボロだ。あと何発か魔法を撃ち込めば、死んでしまうのではないかと思う程に。それでも立ち向かってくる彼女にヴィータは手のひらを向け、本気で魔力を放った。
「くっ!タロー、ユウ、マナ、クレハ··········私に力を貸してくれ···········!」
「ああ、任せろテミス」
次の瞬間、ヴィータの魔法が弾け飛んだ。何が起こったのかとヴィータは驚き、テミスは目の前に現れた男性を見て目を見開く。
「え···········えっ!?」
「悪い、やっぱ待機は無理だ。お待たせ、テミス」
「た、タロー!?」
力が抜けて座り込んでしまったテミスの前で、駆けつけたタローはにかっと笑った。