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レベル1の時点で異世界最強  作者: ろーたす
4章 新世界への道
213/257

68.5

そわそわ、そわそわ···········と。


部屋の前を行ったり来たりしているのは、何とも落ち着きのないユウである。表情からは緊張が伝わり、途中で何度も魔導フォンで時間を確認していた。


「ごめんねユウ君、お待たせ!」

「うおっ!?」


そして突然扉が開き、ユウは驚いて魔導フォンを落とす。そんな彼を不思議そうに見ているのは、可愛らしい服に身を包んだマナだ。


「どうしたの?」

「い、いや、何でもないよ」


魔導フォンをポケットに戻し、服装を整えたユウはマナに行こうかと声をかけ、そして手を差し出し────


「えへへ···········」


嬉しそうに、マナはその手を握った。








◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆








今日は待ちに待った、2人の初デート当日。これまで何度も遊びに行ったり買い物に行ったりはしていたが、それは付き合う前の話だ。手を繋いで歩くなど、考えた事も無かった。


ただ、誰もが二度見········いや、三度見するであろう美少女のマナと、隻腕の巨人学園襲撃事件で一気に有名になったユウが手を繋いでいれば、周囲の人は大騒ぎするだろう。


しかし、道行く人々は2人の横を普通に通り過ぎていく。その理由は、この前王国に戻ってきたネビアから教わった、自分の姿を別人に見せる幻術を教わったからだ。今の2人は人々からはただの仲良しカップルにしか見えておらず、注目されていない。


ちなみにお互いの姿は普通に見えるよう術を調整しているので、ユウの目に映るのはいつも通り愛らしいマナの姿で、マナの目に映るのはいつも通り格好良いユウの姿である。


「手を繋いで歩くなんて、いつぶりだろうな」

「確かに、久々だね」


少し前までなら、マナは恥ずかしがってユウの手を握れなかっただろう。しかし、今ユウは自分の事を愛してくれているのだ。自分がユウの彼女なのだ。


ならば、思う存分甘えよう。そう考えるようになった結果、マナは以前よりも甘えん坊になった。


「マナ姉、今日はどこ行くか覚えてるか?」

「うん。列車で港町まで行って、新しく出来た水族館を見て回るんだよね?それから···········」

「おっと、もうすぐ列車が来るな。ちょっと急ぐか」


オーデム駅へと駆け足で向かい、そして目的地行きの列車に乗り込む。季節は冬、列車内は暖かかった。







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






2時間程列車に揺られ、辿り着いた港町レイニー。この時期になると王国各地で電飾を使ったイベントが開催されており、夜になるとこの町もライトアップされるだろう。


「あれが例の水族館か」

「大きいね。早速行ってみる?」

「ああ、チケットは持ってるからな」


海沿いにある大きな建物··········レイニー水族館に足を踏み入れた2人。最初に彼らを待っていたのは、巨大な水槽内で泳ぐ様々な魚達による、幻想的な光景だった。


「わあ、すっごく綺麗··········!」


目を輝かせながら、水槽の中を見るマナ。そんな彼女の横顔を眺めていると、ユウは早くも来て良かったと思えた。しかし、ここで1ついたずら心が芽生える。


「マナ姉、美味しそうだなって思ってるだろ」

「へっ!?お、思ってないよ!?」

「ちょっと涎垂れてるしな〜」


冗談でそう言うと、マナは顔を真っ赤にしながら口元を手で拭いた。それを見て、ユウは思わず吹き出してしまう。


「ぷっ、はははっ!ごめんごめん、冗談だって」

「うぅ〜、あの魚しか美味しそうだなって思ってないもん············」

(思ってたんかーい!)


実際に思っていたらしいマナに、ユウは心の中で突っ込んだ。











それから、2人は手を繋いで水族館デートを満喫した。


「わっ、ぬるぬるしてるよ!」

「そいつは驚くと粘液を出すんだってさ」


ふれあいコーナーでは、魚を触って興奮しているマナがぶんぶんしっぽを振って喜び────


「何だか海の中を歩いてるみたい···········」

「これはすごいな」


海中トンネルでは、頭上を泳ぐ大きな魚達の姿に2人共圧倒され────


「おいし〜···········」

「新鮮だなぁ」


昼食の時間は、すぐそこの海で獲れた海鮮料理を満喫し────


「楽しかったね!」

「ああ、また来よう」


気が付けば、夜になっていた。水族館から出て、ライトアップされた町を歩く。オーデムとは違った光景は幻想的で、更に初雪まで降り始めたのでデートとしては最高だ。


「マナ姉、寒くないか?」

「ううん、大丈夫だよ。手を繋いでいたら暖かいもの」

「そっか」


光に照らされた雪が積もる中、白い息を吐く愛しい人を横目で見る。よっぽどデート出来たことが嬉しいのか、マナのしっぽは常に揺れていた。


あぁ、駄目だ。無意識にユウは、マナの肩を掴んでおり────そして、抱き寄せたのと同時にキスをする。


「ゆ、ユウ君··········」

「ごめん、ちょっと可愛すぎて」

「ほ、他にも人がいるよ?は、恥ずかしい··········」


頬を赤く染めてはいるが、マナも別に嫌ではない。寧ろ、もっとしたいと思ってしまう。


「そういうとこが可愛いんだけど」

「うぅ、ユウ君ってそんな事言う人だっけ」

「マナ姉みたいな彼女ができればこうなるさ」


確かに、ユウは変わった。以前なら姉としか見ていなかった人が、今では誰よりも愛しい恋人だ。手を繋ぎたい、キスをしたい、抱きしめたい··········そう思ってしまうのは仕方ないだろう。


「それじゃ、そろそろホテルに行こう」

「う、うん」








◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆









「ユウ君、お待たせ」


ホテルにて。窓の外に広がる美しい光景を眺めていたユウに、風呂上がりのマナが声をかけた。


言葉にはしなかったが、濡れた髪や肌がなんともエロい。思わずユウは固まってしまう。


「どうしたの?」

「い、いや···········」

「あれれ〜?どうしたのかな〜?」

「ぐっ··········!」


顔が赤いユウに、少しだけ調子に乗ってみたマナが顔を近付けてみた···········が。


「誘ってるのかコラ」

「え───ひゃあっ!?」


マナの体を持ち上げ、ユウがベッドの上に放り投げる。そしてバウンドした彼女にのしかかり、お返しとばかりに身動きがとれないようにしてから、ユウはマナの顔を覗き込んだ。


「俺の勝ち、だな」

「ま、まいりました···········」


今度はマナの顔が赤くなり、ユウは勝ち誇ったような笑みを浮かべる。ここはそういうホテル(・・・・・・・)だ。ユウもマナも、考えている事は同じである。


「ゆ、ユウ君···········」

「マナ姉、本当にいいのか?流石にこれはマナ姉の気持ちを優先するけど」

「··········うん」


体から力を抜き、マナは言った。


「ユウ君の、好きにしていいよ─────」


次の瞬間、我慢することをやめたユウが、そのまま寝転がるマナの唇を奪う。強引に口をこじ開け、舌と舌が触れ合う。


何秒何分そうしていただろう。やがて口を離すと目に映る、惚けた様子の表情。再び、ユウの理性が飛びかける。


そこからは、あまり記憶に残っていない。ぴくぴく動く獣耳も、サラサラの髪も、揺れるしっぽも、よく育った胸も、時折漏れる声も··········そして、愛しい彼女の初めても。


そう、全て自分のものだ。


「好きだ、マナ姉」

「私もっ、だいすき···········!」


ギシギシとベッドが軋む音は、その後朝まで鳴り続けた。








◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆










「············朝、か」


目を覚ませば、カーテンの隙間から差し込む光が部屋を照らしていた。上半身を起こし、ユウは何となくシーツを捲る。


「すぅ············」


まだ、マナは寝ている。服は着ておらず、ユウにぴったりと身を寄せていた。愛らしい寝顔を見ていると、再び本能が顔を出しそうになるのだが。


「う〜ん、清々しい朝だな·············」


伸びをして、もう一度寝転がる。そして眠るマナの頭を、優しくユウは撫で続けた。


「ん···········ユウ君?」

「おう、おはよう」

「あれ、ここは············」


やがて目を覚ましたマナが、ぼんやりとしながら周囲を見渡す。そして、服を着ていないユウを見た途端、彼女の顔は瞬時に赤くなった。


「お、おはよう、ございます···········」

「体は大丈夫か?」

「う、うん、ちょっと変な感じはするけど」

「悪い、張り切りすぎたな」

「えへへ、すごかったね」


マナも体を起こし、ユウを見つめる。


「でも、初めてがユウ君で良かった」

「嬉しいことを言ってくれるな。俺もだよ」


そして自然と、何度目か分からないキスをした。今回のデートは、きっと一生忘れないだろう。幸せに心を満たされながら、ユウとマナは笑うのだった。

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