第20話 三人仲良く眠りましょう
「それじゃ、あたしらはここから王都に向かうから」
「また機会があればオーデムに顔を出そう」
「ああ、またな」
温泉騒動から一夜明け、王都方面へ向かうアレクシス&ラスティと俺達は別れた。
1日だけだったけど、結構楽しかったので二人に感謝だ。
「うし、俺達もオーデムに戻るとするか」
「・・・」
「帰ったら何しよっかな〜」
「・・・」
・・・やばい、あれからテミスが全然こっちを見てくれない。
いや、当然だとは思う。
だって見てしまったんだもの。悪いことしようとしてた俺にバチが当たったと言ってもおかしくはない。
「あのー、テミスさん。本当に申し訳ございませんでした」
「・・・」
「テミスおねーちゃん、顔まっかだよー?」
「はぅっ!そ、それは・・・」
あ、確かに耳まで赤いな。
「お、怒っているわけではないんだ。あの時は叩いてしまって申し訳ないと思ってる。でも、異性に・・・その、裸を見られたことなどなかったから・・・」
「ほんっとうに申し訳ございませんでしたッ!!!!」
「あははっ、この前ご主人さまがれんしゅうしてたジャンピングどげざだー!」
頭を地面に擦り付ける。
「た、タロー、別に私は怒っているわけでないと・・・」
「テミスが怒っていないとしても、心に傷を負わせてしまったのだからこんなものでは許されないのです」
「心に傷・・・?」
顔を上げると、屈みながら困ったような笑みを浮かべるテミスと目が合った。
「心に傷など負っていない。ただ、恥ずかしいだけで・・・。だから、タローが気にすることはないぞ」
まだ若干顔は赤い。それでもそう言ってくれたテミス。
ああ、やっぱりテミスは女神だった・・・。
「ありがとうございますテミス様」
「さ、様付けはちょっと・・・」
もう二度とあんなことはしないと誓う・・・のはちょっと厳しいけど、あまり調子に乗りすぎないようにしよう。
「そういえばタロー。結局家の件はどうするつもりなんだ?」
「家の件?」
「私の家に住むのか住まないのか・・・」
「あー・・・」
手を繋いで歩いてるマナに顔を向ける。
すると、マナは非常に期待を込めた眼差しを俺に向けてきた。
「迷惑じゃないのなら住まわせてほしいかな」
「うん、そうか。ならばこれからは私の家がタローの家だ」
「なんかややこしいな」
こりゃテミスファンの皆さんとの戦争は不可避だろうなぁ。でも、夢のような同居生活を送れるんだから、ボコボコにされてもしかたないかー。
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「ここがタローとマナの部屋でいいか?」
「ああ、どこだろうと文句は言わないよ。とりあえずここにベッドが欲しいかな。後で買いに行こっと」
「マナもいっしょにいく!」
「よしよし、ついでにぬいぐるみも買ってやるからな」
「わーい!」
オーデムに戻った俺達は、とりあえずギルドにケルベロスの件を報告してからテミスの家・・・いや、新たな自宅に戻った。
そして空き部屋をテミスから譲り受け、ここを今日から俺とマナの寝室とすることに。
「せっかくだから、今日の晩御飯はタロー達が納得してくれるような、美味しいものを作ろうと思う」
「テミスの作る料理はいつも美味しいよ」
「そ、そうか?」
ある程度家具の配置を考えてから、俺達は三人仲良く町に出た。最初に俺とマナの部屋に置くベッドなどを探しに家具屋を訪れ、マナが気に入ったらしい大きめのベッドを躊躇いなく購入する。
「そのベッドの上でイチャコラすんのかい?」
「うーん、いつかは」
「な、何を言っているんだ二人とも!」
家具屋に居たおじさんとそんなことを言い合った後、ついでに棚とかも購入しておいた。あと掛け布団とかも。
「うし、これでオッケーかな」
「おっけー!」
それから一度家に戻り、部屋にベッドとかを置いていく。あとはマナが欲しがったぬいぐるみとかその他諸々をマナが置きたいと言った場所に置く。これで俺とマナの部屋は完成した。
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「いやぁ、ほんとありがとな。こっちに来てから宿以外の場所で寝るのは今日が初めてになるよ」
「ふふ、この辺りはオーデムでもそれなりに静かな場所だから、夜に騒がしい声が聞こえたりは滅多にしない。だからぐっすり眠れるはずだ」
現在時刻は午後10時。
マナは自室でスヤスヤ眠ってるので、俺とテミスは二人きりで会話している最中だ。
「そういえば、風呂場は狭くなかったか?いつも私一人しか使っていないから、他の人からしたら狭いと感じるかもしれない」
「全然そんなことは」
風呂場・・・ねぇ。
マナを連れて先に入らせてもらったけど、いつもここでテミスが身体を洗ってるのか〜と考えてしまったのが間違いでしたね。
色々抑えるのが大変でしたもの。
「・・・ふむ」
「・・・?どうかしたのか?」
俺の前に座っているテミスはピンクのパジャマ姿である。もうね、何もかもが最高ですよ。
「いや、テミスは可愛いなって思って」
「はっ!?き、急に何を言ってるんだ!」
照れてる時は右手をグーにして口元を隠す・・・どうやらこれがテミスの癖らしい。やっべえ、俺変態だとか思われないよな?
「そんなテミスと一緒に暮らせるなんて、ほんと夢みたいだ。だからありがとう」
「夢みたいだなんて、そんなの私も・・・」
「え?」
「何でもない!」
声が小さかったから聞き取れなかった。
まあ、重要なことじゃないだろうからいいけど。
「よーし、そろそろ寝るか」
「あ、ああ・・・」
「あり?」
テミスの顔がまだ赤い。
なのでどうしたのか聞こうとした時、向こうから寝てたはずのマナが駆け寄ってきた。
「おっと、起きたのか?今から寝に行こうと思ったんだけど」
「そうなのー?あのね、みんなでいっしょにねたくてよびにきたのー!」
「ん?」
「テミスおねーちゃんもいっしょにねよー!」
「「っ・・・!?」」
俺とテミスは同時に顔を見合わせた。
マナが言っていることは、つまり『同じベッドの上で三人仲良く眠りましょう』ってことだ。
「お、俺は別にいいけど・・・」
「私は、その・・・」
「マナ、みんなでねたいなぁ・・・」
「うっ」
マナに見つめられたテミスがたじろぐ。
「わ、分かった。私も一緒に寝るよ」
「わーい!」
こいつはやべーぞ。
初日からまさかの同じベッドで眠ることになるとは!!
絶対寝れませんやん。
次回、登場人物紹介の回