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レベル1の時点で異世界最強  作者: ろーたす
4章 新世界への道
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54.隻腕の巨人

「見なさいユウ、スラりんまるの限定ストラップを遂に手に入れたわ!」


何故か胸を張り、朝っぱらからドヤ顔で数個のストラップを見せつけてくるエリナ。それらは全て女子に人気のマスコット的魔物、スラりんから生まれたスラりんまるのグッズである。


「ふふん、並んだ甲斐があったわ。人気のピンク色だけは買えなかったけれど、他の色は全部買えたの」

「へえ、良かったじゃないか」


最近はスラりんまる好きが加速しており、こうして堂々と教室内でもグッズを広げたりするようになった彼女。普段とのギャップに萌えた男子達から向けられる、なんとも言えない熱い視線には気付いていないのだろうか。


「それと、これは貴方にあげるわね」

「あれ、いいのか?」


男子達の視線が俺に向けられ、恐ろしいものに変わる。エリナがくれたのはスラりんまるのストラップ、黄緑色だ。


「それは2個買ったから大丈夫よ。い、いつも助けてもらってばかりだから、そのお礼のつもりで·········」

「そっか、ありがとう。大事にするよ」


早速持っている鞄に付けて見せると、エリナは頬を赤らめながら笑ってくれた。しかし、物凄い殺意を感じるな。このままだと男子達に刺されそうで怖い。


「で、俺からも一つ」

「え···········」


色々と偶然が重なって良かった。俺が手渡したものを見て、エリナは数秒間震えながら目を見開き、やがてその目を輝かせながら俺を見てきた。


「ぴ、ピンク色··········!」

「昨日また限定ショップが出来てたからさ、覗いたらたまたま人が少ない時間帯でな。それで、エリナが好きそうなピンク色のスラりんまるストラップを買ったんだ。まあ、こちらこそいつも世話になってるからありがとうって事で」

「っ·······、っ〜〜〜〜〜!」


とても嬉しかったらしい。かつてない破壊力を誇る満面の笑みは、クラス中の男子達を一撃でダウンさせていた。


「いいなぁ·········」

「ん?リースもスラりんまる好きなのか?」

「それなりには好きやけど、そういう事じゃなくて·········」


俺とエリナのやり取りを見ていたリースが、羨ましそうにエリナの持つストラップを見つめている。


「ふふ、リースさんはユウ君からプレゼントを貰ったエリナさんが羨ましいんだね?」

「へっ!?ち、違うでヴィータちゃん!?」

「ああ、リースにもあるぞ。はい」


そんなリースに俺はシュシュを渡し、後ろに座っているヴィータには髪飾りを渡した。どちらも昨日、スラりんまるショップから出た後に買ったものだ。


「これ·········」

「いつも差し入れとか応援とか、俺に元気をくれてるからな。二人共ありがとう。ちなみにユリウスにはメガネ拭き、アーリアには栞、ソルには雑誌をあげたぞ」

「エロ本やな··········」

「何故分かった」

「ふふ。まあ、ありがと。大事に使うな」


相変わらず太陽のように眩しい笑顔は、ようやく立ち上がった男子達を再びダウンさせる。そんなリースの笑顔から後ろの席に視線を向ければ、何故か悲しそうな瞳でヴィータが髪飾りを見つめていることに気付いた。


「·············」

「ヴィータ?」

「え、ああ、とても嬉しいよ。ありがとうユウ君」


しかしすぐに笑顔になり、男子達に追い討ちをかけていた。何かあったのだろうか·········気になったので話を聞こうかと思った直後、教室の扉が開いてマナ姉が中に入ってきた。


「それでは授業を始めま〜す」


鐘が鳴る。それを合図に全員が着席し、俺も前を向く。とても気になるが、また後で聞けばいいか。そう思いながら、俺はいつものように始まった授業に耳を傾けた。











◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

ーーーマナーーー









「あれ、ユウ君は?」


昼休憩の時間。屋上を訪れた私は、いつものメンバーの中にユウ君が居ない事に気付いた。どうしたんだろうと思った私に、クレハちゃんが事情を説明してくれる。


「兄さんは訓練用空間で魔力制御を行っています。ふふ、授業までには戻ると言っていたので··········」

「こんな時ぐらいゆっくり休めばいいのになぁ」


私もその場に腰掛け、お弁当箱を開く。今日はお父さんとお母さんが会議で朝早くから家を出ていて、お弁当を作ってくれたのはユウ君だ。


「美味しいね、クレハちゃん」

「当然です。兄さん手作りのお弁当なのですから」


幸せそうにおかずを頬張るクレハちゃんを見ていると、なんだか私も幸せな気持ちになってくる。わざわざ朝早くに起きて、ユウ君が私達の為に作ってくれたお弁当だもの。美味しいに決まってるよね。


(ふふ、幸せだなぁ··········)


本当に何気ない毎日だけど、生きていて良かったなと心から思えるのは、やっぱりユウ君のおかげだね。その恩返しをしたいけど、何をすればユウ君は喜んでくれるだろう。


私もお弁当を作ったら、ユウ君は喜んでくれるかな。美味しいって言ってくれるかな。


「くぅ〜!ユウの奴め、こんなにも可愛いお姉さんと妹に弁当作って幸せそうに食べてもらえるとか、羨ましすぎる!」

「ユ、ユウの手作りお弁当··········」

「ウチも食べたいなぁ」

「ふふ、ユウ君は相変わらずモテモテだね」

「あっ!駄目ですよアーリア、そのハンバーグは私の好物なんです!」

「1個だけ欲しいな〜、なんて」

「クレハさん、僕の卵焼きを·········!」


楽しそうに盛り上がる生徒達。そんな光景を見ていると、自然と頬が緩んだ。いつまでも、こんな幸せな時間が続けばいいのにな。


ふと、そんな事を思った直後だった。


「っ!?」


響く爆音、揺れる校舎、立ちのぼる黒煙。何事かと私が立ち上がったのと同タイミングで、屋上の入口である扉が勢いよく蹴破られた。


「皆、じっとして!」


ぞろぞろと現れ、私達を取り囲んできた武装集団。全員黒い装備に身を包んでおり、胸元に片腕の無い巨人が描かれている。それは、事前にお父さんから聞いていた、とある傭兵団の特徴と一致した。まさか、この人達は··········!


「傭兵団〝隻腕せきわん巨人きょじん〟·········!」


背後に居るクレハちゃん達が息を呑む。誰もか知る最強の傭兵団。王国入りしたとは聞いていたけど、何故学園に現れたのか。


「ククッ、そう警戒するなや。今すぐぶっ殺そうってわけじゃねえんだからよ」


後ろ手に魔導フォンを起動し、お父さんに状況を連絡しようとした直後、突如凄まじい魔力を纏う男性が姿を現した。


大剣を担ぎ、不敵に笑う黒髪の男性が只者ではないというのは見た瞬間に分かった。額に汗が滲む。この人は、もしかしたら私よりも強いかもしれない··········。


「で、お前がマナ・シルヴァだな。後ろの銀髪がクレハ・シルヴァ········と。いいねぇ、情報通りの美人姉妹じゃねえか」

「誰ですか、貴方は」

「おっと、自己紹介が遅れたな」


一瞬、何をしたのか分からなかった。髪の毛がパラパラと宙を舞い、屋上を囲むフェンスの一部が崩壊して落下していく。頬から流れ落ちたのは汗ではなく赤い血。とてつもない速度であの大剣を振り、斬撃を放ってきたの··········?


「俺の名はギルバード。傭兵団〝隻腕の巨人〟の団長であり、剣帝と呼ばれている者だ。まあ、よろしく頼むわ」

「ッ────」


雷を纏い、跳躍。そしてフェンスを使い、死角から黒髪の男性·······ギルバードの頭に全力で蹴りを放つ。しかし、ギルバードは私に目を向けず、いとも簡単に大剣でそれを受け止めていた。


「なっ········!?」

「挨拶中に不意打ちとか、案外卑怯な手も使うんだな。ま、そういう女は嫌いじゃないが」


咄嗟に距離を取り、再びクレハちゃん達の前に立つ。いまのを防がれるなんて、流石に予想外だった。やっぱりこの人、信じられないぐらい強い。


「警告するぜ、マナ・シルヴァ。次、俺の許可なしに勝手な真似をしやがったら·········ククッ、可愛い生徒達が見るも無残な肉塊になっちまうぞ?隻腕の巨人所属の傭兵は合計100人。この場に居る奴が全員とでも思ったのかよ」

「くっ、何が目的なんですか!?」

「別に簡単な事さ。お前達姉妹の大好きな男········ユウ・シルヴァを殺す。俺はその為に来た」


次の瞬間、背後から凄まじい魔力を感じた。振り返れば、無表情で殺気を放つクレハちゃんがゆっくりと一歩踏み出す。


「兄さんを、殺す·········?」

「クレハちゃん、駄目だよ!」


急いで止めなければ、間違いなくクレハちゃんは魔法を乱発していたと思う。私もだけど、彼女にとって〝ユウ君〟は爆弾だから。


「姉さん!どうして────」


私の顔を見たクレハちゃんが固まる。私だって、好きな人を殺すなんて言われて納得はできない。だけど、生徒達に被害が及ぶ可能性があるんだったら下手には動けない。


「ユウ・シルヴァはどこに居る」

「今この学園には居ません」

「ああそうかい。そりゃある意味好都合だ。じゃ、お前ら全員魔闘場に移動しろ」

「·········理由は?」

「おいおい、俺の命令が聞けないのか?魔闘場に集めてる他のガキ共をぶち殺してやってもいいんだぜ?」

「この外道ッ·········!」

「ははっ、最高の褒め言葉だ!」


怒りを抑え込み、私は纏っていた魔力を解く。そしてギルバードに連れられ、私達は魔闘場へと足を踏み入れた。

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