表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レベル1の時点で異世界最強  作者: ろーたす
4章 新世界への道
193/257

49.処刑人との激闘

やがて辿り着いた遺跡の最奥。学園の講堂程の広さであり、壁一面に絵や文字が描かれている。元々は『古代遺産アーティファクト』も多く保管されていたらしいが、全て研究対象として軍が持ち帰ったという。


そんな場所に駆け込んだ俺達だったが、突然入った際に潜った出入り口が音もなく〝消滅〟した。それに気付いた時にはもう遅い。寒気がする程の魔力が場を満たし、視界のあちこちに魔物が姿を現す。


「やっぱり、処刑人スカルエクスキューショナーと煉獄のアビスデーモン·········!」


現れたのは、巨大な鎌を持った骸骨。漆黒のマントに身を包み、カタカタと歯を鳴らしながら浮遊している。そして、まさに〝悪魔〟という言葉が相応しい、紅い肌の怪物だ。それぞれ5体、計10体の悪魔が俺達を包囲していた。


「どうして古の悪魔がこんな場所に!?数千年前、別次元の煉獄世界に封印された筈だよ!」

「ユグドラシルの歴史書に出てくる悪魔か!?まさか、そんな化け物をこの目で見る日が来るとは·········!」


今の魔界にも悪魔は存在しているが、歴史書に記されている古代の悪魔は強さの桁が違う。1匹で国を滅ぼした悪魔や、そこに居るだけで年中雨を降らせた悪魔、無限に増殖し続けた悪魔········保有している魔力の量も、普通では考えられないレベルだ。


「歴史書には見た目や能力などを文字でしか書いていませんが、特徴が完全に一致しています。周囲に冒険者の方達は見当たりません。恐らく、この悪魔達は·········」

「くそっ、退路を断たれた!どうするマナ姉、戦うのか!?」

「········2人はさがってて」


既に調べ尽くされた遺跡に、まさか出入り口を消す機能が存在していたとは。マナ姉も想定外だったのだろう。見たことのない怖い顔で悪魔達を睨みながら、彼女は魔法陣を展開した。


「魔力解放·········!」


その一言で、マナ姉の魔力が跳ね上がる。俺達が普段使用している魔力は、体内を血液のように流れている『門』と呼ばれる魔力である。しかし、体への負担を軽減する為、人は無意識に大半の魔力を心の奥底、別の次元とも考えられている深層世界に封印しているのだ。マナ姉クラスの達人になると、門をくぐり抜けて『深層』の魔力を解放する事が可能となる。


つまり、今のマナ姉は本当の全力だ。8万以上ある圧倒的な魔闘力も、恐らくかなり上昇しているだろう。俺達を守りながらだと満足に戦えないからこその全力か。


「魔法陣展開、【五大輪ペンタグラムサークル】!!」


マナ姉が展開した魔法陣は、彼女の背後でゆっくりと回転を始めた。1度だけ見たことがある。あれは、マナ姉が編み出した雷属性五大魔法の魔法陣だ。


「穿て、【紫電絶槍しでんぜっそう】!!」


第一の魔法、サンダーランスの超上位強化魔法。見た目はサンダーランスと変わらないが、その破壊力は桁違いだ。放たれた3本の雷槍が1体のスカルエクスキューショナーに凄まじい速度で迫り、そして爆ぜた。


それは周囲の敵に影響を及ぼすことはなかったが、確実に単体を滅ぼす為に改良された大魔法。当然と言うべきか、魔法が直撃したスカルエクスキューショナーは跡形もなく消滅する。


「天駆けよ、【雷霆万鈞らいていばんきん】!!」


第二の魔法、俺や母さんが使う【加速アクセル】を遥かに上回る、超高速移動強化魔法。雷を纏ったマナ姉の動きは俺どころかクレハですらも目で追えず、閃光が駆け抜けたかと思えばデーモン3体が鈍い音と共に吹き飛ぶ。


「じ、次元が違うな·········」

「何が起こっているのか全く分かりませんね·········」


今のマナ姉は天災そのものだ。次々と悪魔達を殲滅し、俺達の出る幕が一切無い。そして気が付けば、あれだけ絶望を感じた悪魔達もスカルエクスキューショナーが1体だけとなっていた。


「はぁ、はぁ、天駆けよ·········」


しかし、そこでようやく気付いた。明らかにマナ姉の様子がおかしい。この程度で魔力切れになる筈のない彼女が、顔を真っ青にしながら倒れそうになっているのだ。


「まさか、魔力が乱れて·········!?」

「う、ぐっ·········!?」


突如、マナ姉がバランスを崩して尻餅をついた。そんな彼女を狙って振り下ろされた大鎌。咄嗟に駆け出した俺がマナ姉を抱えて飛ばなければ、恐らく鎌はマナ姉を両断していただろう。


「っ〜〜〜〜〜!!」

「マナ姉、大丈夫か!?」

「ね、姉さん!」


まさかこのタイミングで魔力が乱れるとは。目に涙を浮かべ、激痛に表情を浮かべながら胸を押さえているマナ姉。まずい、俺とクレハだけで古代の悪魔に勝てるのか·········!?


「負担の大きい魔力行使で魔力が乱れたのでしょう。兄さん、私達で姉さんを」

「っ、ああ。絶対守り抜くぞ」


考えるまでもない。俺は抜刀し、魔力を纏う。クレハも大樹の根を呼び出し、そしてスカルエクスキューショナーを睨んだ。


「ユウ、君、駄目········!」

「マナ姉は休んでろ!」


覚悟を決め、俺は全力で地を蹴った。直後、俺の頭上を通り過ぎた処刑人の鎌。体勢を低くしたので助かったが、次の攻撃までの隙が無さすぎる。鎌を振り切ったかと思えば、そのまま再び俺を狙って腕を振る。避けれないと判断して鎌を刀身で受け止めたものの、一瞬で押し負け弾き飛ばされた。


「【ブロッサムボンバー】!」


壁に衝突した俺を追撃しようとしたスカルエクスキューショナーを、天井付近から降り注いだ爆弾果実が襲う。しかし効いていないようで、スカルエクスキューショナーは大鎌を俺目掛けて投げ飛ばしてきた。


「うおおっ!?」


床を転がりギリギリで鎌を避ける。勢いよく壁に突き刺さった鎌だったが、スカルエクスキューショナーが何かを唱えると、まるで引き寄せられるかのように鎌は敵の手元まで戻った。


近接戦闘だけでなく、どうやら遠距離戦闘も得意らしい。冷や汗が頬を伝って地面に落ちる中、俺は加速アクセルを発動して再度駆け出す。


(あいつの狙いは俺だ。できるだけ注意を引いて、クレハの魔法で仕留める·········!)


俺の考えを分かってくれたのだろう。目が合うとすぐに頷いてくれたクレハは、魔法の威力を上昇させる為にわざと詠唱を始める。


「だああああッ!!」


そして俺は、不気味な魔力を放出するスカルエクスキューショナー目掛けて全力で刀を振り下ろした。魔闘力4000ちょっとの俺程度では傷一つ付けることができないと思うが、それでも囮として少しでも機能しなければ。


『▲*,и@☆〆●!=A彡』

「ッ─────」


何を言ったのかまるで理解できなかったが、気が付けば俺は天井にめり込んでいた。恐らく鎌で真上に弾き飛ばされたのだろう。激痛に襲われながら下に目を向ければ、眼球の無いスカルエクスキューショナーの目が赤く輝いて見える。先程何かを呟いたのは、魔法を詠唱したのか·········!


「させません、【ばく】!!」


死を覚悟した直後、スカルエクスキューショナーの全身に地中から飛び出した根が絡み付く。


「爆ぜろ、【ガイアボルケーノ】!!」


そして、足元に浮かび上がった魔法陣が爆発し、閃光がスカルエクスキューショナーを飲み込んだ。轟音と衝撃が遺跡を揺らし、貴重な壁画にヒビが入る。しかし、今はそんな事を気にしている余裕はない。


「悪いクレハ、詠唱を中断させてしまったか」

「いえ、無事で良かった·········!」


恐るべきことにスカルエクスキューショナーは無傷だったが、動きが止まったので着地した俺はクレハに駆け寄る。本当ならもっと威力の高い魔法をクレハは詠唱していたのに、俺を助ける為に魔法を咄嗟に切り替えさせてしまったらしい。


「しかしまあ、何だよこの化け物は。正直勝てる気が全くしないんだが·········」

「改めて姉さんの凄さが分かりますね。ですが、諦めなければ必ず勝てます」


クレハの視線を追えば、スカルエクスキューショナーの頭蓋骨に少しだがヒビが入っているのが見えた。どうやらクレハの魔法はダメージを与えていたようだ。クレハの魔法が完璧に直撃すれば、恐らく粉々にする事ができる筈。


そんな希望は、一瞬で崩れ去った。


『и〆―:灬$★▽∴∧Ж』


放たれたのは、漆黒の波動。フロア全体に放たれた予想外の一撃は反応が遅れた俺達をあっさりと吹き飛ばし、そして壁へと叩き付けた。


「がはッ!?」

「う、ぁ·········」


魔法戦では圧倒的な強さを誇るクレハだが、魔力以外は普通の女の子と変わらない。俺もそうだが、肉体的にダメージを受ければ暫くまともに動けない筈だ。それに、倒れていたマナ姉まで向こう側へと吹き飛ばされている。まずい、絶体絶命じゃないか。


「おい待て、こっちを狙えよ!」


更に、スカルエクスキューショナーは荒い呼吸を繰り返すマナ姉を標的にしたらしい。鎌に魔力を纏わせ、向こうで倒れているマナ姉の前で振り上げた。


「くそっ、間に合えッ────」


一か八か、全力で駆け出した俺を嘲笑うかのように、スカルエクスキューショナーは無慈悲に鎌をマナ姉に振り下ろし────そして、その腕は宙を舞った。


「あははっ、あたしと同じく鎌使いかぁ!」

「へっ!?」


突如、どこからともなく現れた女性。ウェーブのかかった栗色の長髪が着地と同時にふわりと揺れ、羽織っていたマントがバサりと音を立てる。


「間一髪だったみたいねー。だいじょぶ?」

「敵を前に油断するな馬鹿。腕を斬り飛ばして終わりじゃないだろうアホ」

「あ、アホでも馬鹿でもないっての!」


続いて現れたのは、燃えるような赤髪が特徴的な男性。手には大剣が握られており、放たれる魔力はまるで炎のように熱い。


「久しぶりだな、ユウ。まずはこいつを片付ける。マナを連れて少し離れていろ」

「え、あ、はい」


マナ姉を抱え、急いでその場から離れる。次の瞬間、振り下ろされた大剣がスカルエクスキューショナーを真っ二つに両断する。更に噴出した爆炎が骨を跡形もなく消滅させ、あれだけ苦戦した悪魔は二秒程度で俺達の前から消えた。


「ふむ、マナの魔力がこの個体にかなりのダメージを与えていたようだな。おかげで簡単に始末できた」

「さっすがあたしの旦那だねぇ。えらいえらい!」

「やかましい!頭を撫でるな!」

「っとぉ、ごめんよユーちん。イチャつくのは後でしまーす」


俺は、この人達を知っている。幼い頃から何度も世話になってきた、王都ギルドのマスターとその奥さん···········アレクシスさんと、ラスティさんだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ