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レベル1の時点で異世界最強  作者: ろーたす
2章 嵐の修学旅行
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22.海、島、そして蜘蛛

あれからどれ程気を失っていたのだろう。


「──────ぅ」


ふと意識が戻ったのでゆっくりと目を開けると、何故か恥ずかしそうに頬を赤く染めるエリナが俺を見下ろしていた。


「エリナ········?」

「良かった、目を覚ましたのね」


あれ、この姿勢ってまさか········。


「ま、まだ動いちゃ駄目よ。今まで気を失っていたんだから」


なるほど、どうやら俺はエリナの膝枕を堪能しながら寝ていたらしい。


まさかエリナが自らそんな事をしてくれるとは思わなかったが、確かに物凄く体がだるいので、もうしばらくお言葉に甘えさせてもらうとしようか。


「そうだ、ヴィータとリースは?」

「この島に流れ着いてから動いていないから、彼女達の行方は分からないわ。でも貴方は偶然私のすぐ近くに倒れていたから」

「島?あの後俺達はどこかの島に流れ着いたのか?」

「ええ、そうみたい。不思議なことに、魔導フォンを起動させることができない島よ」


突然出現した魔物の襲撃により、甲板で迎え撃とうとした俺達は海に投げ出された。


きっと船はマナ姉が守ったと思うが、ヴィータ達は無事なんだろうか。それを確認しようにも、エリナの言う通り魔導フォンが何故か起動しない。


もしこの島が無人島なのだとしたら、こちらからは一切連絡ができない絶望的な状況だ。


「悪い、わざわざありがとうな」

「あ········」


とりあえず体を起こすと、何故かエリナは少し残念そうに俺を見てきた。


どうしたのかと思ったんだが、じっと顔を見つめていたら今度は目を逸らされてしまう。顔が赤いし熱でもあるのか?


「エリナ?」

「えっ、あの、何でもないから········」

「よく分からないけど、ここでじっとしていても意味が無さそうだ。1度島を探索してみよう」

「わ、分かったわ。でも、服が濡れていて動きづらいのだけれど」

「確かにな、脱ぐか」


常に持ち歩いている刀と魔導フォン以外の荷物は全て船の中だ。しかし、旅行先に到着したらまず海で遊ぶと聞いていたので、今俺はズボンの下に水着を履いている。


なので服を脱いで水着のみの姿になると、エリナは顔を真っ赤にしながら両手で自分の顔を隠してしまった。


「な、何をしているの!?」

「動きやすい格好だ。普通の水着だよ」


ただの安い青色の水着なので、防御力はほぼ無い。そんな俺を見てエリナは暫く顔を手で覆っていたが、やがて突然俺と同じく服を脱ぎ始める。


「何してんだ!?」

「あ、貴方と同じで私も水着を着用していたのよ!」


シンプルな白いビキニ姿になったエリナは破壊力抜群だった。


モデル並みに綺麗な手足、白い肌、恥ずかしそうに顔を赤らめながら腕で隠している形の良い胸。


学園ではマナ姉とクレハばかり目立っているが、エリナも学園トップクラスの美少女だ。当然俺の中で色々な感情が暴れ出す。


いかんいかん、煩悩退散。


「ま、まずはこの島の形を把握しましょう」

「中心付近に大きな岩山があって、その周囲に森がある········っていうのが俺の考えだけど」


俺達が居る砂浜から中心部の方向を見ると、特徴的な形をした岩山が目に映る。


途中で切り取られたかのように、上の方が平らになっているのだ。それから【加速アクセル】を使って高く跳んでみると、麓には沢山の木々が生えており、砂浜のすぐ手前までそれが続いているのが分かった。


「それじゃあ探索してみるか。途中で食べれそうな物があれば回収しておこう」

「ええ、魔物が潜んでいるかもしれないから油断しないようにね」


一応警戒しながら森の中へと足を踏み入れる。


王国ではあまり見慣れない植物が多く、木々が太陽光を遮ってくれているので少し涼しい。


時折キノコ等をエリナが拾って見せてくるけど、その大半が毒キノコであることは色を見れば何となく分かった。


今のところ魔物が出てくる気配はないが、鳴き声のような音が聞こえたりもするので油断はできないだろう。


「エリナ、大丈夫か?」

「流石にサンダルじゃ歩きにくいわね。それに、枝が体に当たったりして痛いわ」

「服は着ておくべきだったかな。そろそろ休憩するか」


小川を見つけたので水を飲む。


その水はとても綺麗で冷たく、歩き疲れた体が喜びに震える。隣を見れば、エリナは水で汗だくになった体を洗い流していた。


「な、何?」

「いや、何でもないよ」


こんな光景をクラスの連中に見られたら、また延々と質問攻めされることになるだろうな。


得したような気分になりながら、俺も汗を流す為に流れる水の中に顔を突っ込んだ────直後。


「きゃああああっ!!」

「っ!?」


突然女の人の悲鳴が聞こえた。


急いでエリナを見たが彼女は首を振ったので、今の悲鳴は誰か別の女性があげたものだろう。


「まさか、俺達以外にも漂着した人が?」

「とにかく、悲鳴が聞こえた方に行ってみましょう」


誰かが魔物に襲われているかもしれないので刀を抜き、俺は森の中を駆け出した。


エリナも魔力を纏っているので戦闘準備は万端なんだが········さっきの声、聞き覚えがあるような気がする。


そう思いながら木々の隙間から飛び出すと、そこには涙目で頭を抱えている獣耳が生えた少女が座り込んでいた。


「む、無理無理無理!怖いよぅ、ユウ君助けてぇ·······!」

「········何してんだマナ姉」

「え、あっ、ユウ君!?」


怯えていたのはマナ姉で、俺を見ると恐怖から解放されたかのように抱きついてきた。


何があったのかと思ってマナ姉が座り込んでいた場所を見てみると、


「そういやマナ姉、蜘蛛が苦手なんだっけ」

「いきなり頭に落ちてきたの········」


魔物ではないが、かなり大きな蜘蛛が地面に落ちていた。


恐らく頭に降り立った際、驚いたマナ姉は無意識に電撃を放ったんだろう。可哀想なことに、拳一つ分程の大きさを誇る蜘蛛は丸焦げになっていた。


「よく見ろマナ姉、蜘蛛はもう生きてないよ」

「ううぅ〜〜〜!」

「やれやれ········」


昔、マナ姉と2人でオーデムの近くにある森の中に遊びに行った時の出来事。


元気に走り回っていたマナ姉は、足もとにあった穴に気付かずそのまま落下してしまった。


大丈夫かと思い中を覗くと、マナ姉は大量の蜘蛛達に埋もれて顔を真っ青にしていた。


後で母さんに聞いて知ったことだが、その頃はオーデム付近にマザースパイダーという巨大な蜘蛛型の魔物が出現しており、冒険者ギルドにも討伐依頼が届いていたらしい。


そんなマザースパイダーは、地面に穴を掘ってその中で大量の卵を産む。一匹が人間の子供程大きなマザースパイダーの幼虫がうじゃうじゃいる穴の中に落下したマナ姉は、それ以来蜘蛛が大の苦手になってしまったのだ。


ちなみに、マザースパイダーはその後母さんに討伐されたとか。


「それにしても、まさかマナ姉まで島に流れ着いていたなんて思わなかったよ」

「ご、ごめんなさい。海の落ちたユウ君達を助けようと思ったんだけど、上手く動けなくて結局········」

「謝るのは俺の方だ。あの魔物を相手に何も出来なかったんだから」

「ううん、仕方ないよ。それより無事で良かった········」


と、そこでようやくエリナの存在に気付いたらしい。


「ふあっ、エリナちゃん!?」

「マナ先生、ご無事で何よりです」

「ご、ごめんね、怖くてユウ君しか居ないと思っちゃって!エリナちゃんも無事で良かったよ」


顔を真っ赤にしながらマナ姉が俺から離れる。家じゃ遠慮なく布団の中に入り込んでくるくせに、何を恥ずかしがってんだか。


「リースちゃんとヴィータちゃんも、この島に流れ着いてるのかな········?」

「そうだと信じて捜索しよう」

「ところでユウ君、どうして2人は水着姿なの?」


言われて思い出したが、俺とエリナは服を脱いで水着姿になってるんだった。


顔を赤らめているマナ姉が変な勘違いをしていそうなので一応事情を説明すると、何故か乾いている服をマナ姉は脱ぎ始める。


「ま、マナ姉!?」

「確かに暑いもんねぇ········どうかした?」

「躊躇いもなく男の前で服を脱ぐな!」

「ユウ君は別に変なことをしたりしないから········」

「それでもだ!」


水色のヒラヒラした水着姿はエリナに負けず劣らずの破壊力で、改めて俺は姉のハイスペックぶりを思い知らされるのだった。

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