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レベル1の時点で異世界最強  作者: ろーたす
2章 嵐の修学旅行
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19.真面目なのか不真面目なのか

教室窓側1番後ろだった俺だけど、実はまだ後ろに机を1つ置けるスペースがあった。


転校生のヴィータは俺の後ろの席となり、緊張など微塵も感じさせない様子なので話しかけてみることに。


「どうも、俺はユウ・シルヴァだ。よろしくな」

「シルヴァ········あっ、マナ先生の弟なんですか?」

「義理のだけどな。というか別に敬語を使わなくてもいいよ、同級生なんだし」

「え、いや、でも········」

「これから同じクラスで切磋琢磨していく仲間なんだからさ、堅苦しいのは無しにして仲良くしよう」


俺がそう言うと、ヴィータは笑ってくれた。


どうやらそう見えていただけでかなり緊張していたらしく、俺のおかげで楽になったらしい。


「それじゃあそうさせてもらおうかな。さっき自己紹介したけど、私はヴィータ・ロヴィーナ。よろしくね」

「ああ、改めてよろしく」


手を差し出してきたのでそれを握ると、不意に凄まじい殺気を感じた。


恐る恐る周囲を見渡せば、男子生徒達が全員鬼の形相でこちらを見ているではないか。


「そ、それじゃあ朝礼はこれで終わろっか」


マナ姉が教室から出ていくと、案の定男子生徒達が群がってくる。


「おいてめえユウ、今転校生ちゃんと握手してたよなぁ?」

「あ、あの、私の方から握手を求めたんですけど········」

「駄目だ、この男は危険なんです!さぁてユウ、転校生ちゃんにまで手を出そうとしたことについて、ゆっくり話をするとしようぜ」

「すまん、俺は教室の位置とかをヴィータに教えなきゃならないんでね。それじゃ失礼」


面倒なので、ヴィータの手を掴んで男子生徒の壁に突進。そのまま俺は彼女と共に教室を飛び出した。


あのままでは訳の分からんことをヴィータに教えていた可能性が高かったので、こうして連れ出してしまったわけだが········。


「ゆ、ユウ君········」

「え········あっ、悪い!」


よく見ればヴィータの頬は少しだけ赤くなっており、俺は急いで掴んでいた手を離す。


やってしまった。いきなり転校生を手を繋ぎながら連れ去ったなんて話が広まれば、俺は変態扱いされてしまうじゃないか!


というか、ヴィータにもきっと幻滅されたはず─────


「ふっ、ふふふ········ユウ君は面白いね」

「へっ?」

「だって、いきなり手を掴まれたかと思えばそのまま逃走劇が始まったんだもの。なんだか悪い人達から逃げているお姫様みたいな気分になれて楽しかったよ」

「そ、そうか?ヴィータは変わってるなぁ········」


どうやら俺に連れ出されたことを怒っていないらしく、それどころか楽しんでいたらしい。


不思議な女の子だな。あれだけ走り回ったのに息一つ切らしてしないのも不思議だ。


「ふふ、否定はしないよ。ところでユウ君、学園を案内してくれるみたいだけど、もうすぐ授業が始まるんじゃないの?」

「え·······あ、やべっ!」

「あははっ、急いで戻らないと間に合わないね!でも、私はこのまま学園を見て回るよ」

「いやいや、いきなりヴィータをサボらせるのはちょっと········」

「実はね、マナ先生から1時間目は学園内を自由に見て回っていいって言われてたの。私は大丈夫だから、ユウ君は早く教室に戻らなきゃね」


楽しげに笑うヴィータだが、どこか期待しているような視線を先程から俺に向けてくる。


やれやれ、真面目なのか不真面目なのか分からない性格だな。


「いいよ、俺が案内するから」

「いいの?勝手に授業を抜け出せば、君の成績は急降下すると思うけど」

「ヴィータを案内してましたって言えば大丈夫だろ。最悪の場合はヴィータにお願いされて断れなかったとでも言えばいい」

「ふふ、分かった。それじゃあユウ君に案内をお願いするよ」

「任せとけ」


それから俺は、極力先生に見つからないよう注意しながらヴィータと共に学園内をのんびり見て回るのだった。










◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆










「ユウ君!なんで勝手にサボってるの!」

「ちょっとユウ!まさか貴方、転校初日のヴィータさんともうお付き合いしているの!?」

「ウチも今回のは良くなかったと思うな〜。1人だけで授業を抜け出すんやったらまだしも、可愛い転校生の女の子と一緒にとか········」

「ユウ・シルヴァ殺す!!」


教室に戻れば怒ってる姿もなんだか可愛く見えてしまうマナ姉に詰め寄られ、エリナとリースにも少し怒られた。


最終的には男子達に包囲され、休み時間はずっと呪いの言葉を浴びせられ続けるという地獄。


そんな光景を見ながら、ヴィータは後ろの席で必死に笑いを堪えているのが横目で確認できた。


「ごめんねユウ君。助けようと思ったんだけど、私は私で質問されたりしていたから········」

「別にいいよ、慣れっこだから」


前では怒らせると止まらない火属性魔法担当のヒート先生が黒板に魔法陣を描いている。


なので俺達はかなり小さな声で会話していたんだが········。


「ユウ・シルヴァ。先程からコソコソと何を喋っているのだ?」

「げっ、聞こえてたのか」

「すみません、ヒート先生。私はこの学園に来たばかりなので、彼にこれまでヒート先生がどのような授業を教えてくれていたのかを聞いていたんです」

「ほう、そうなのか。それではユウ・シルヴァ、これまでの授業内容を大きな声で説明してあげてくれ」

「········ごめんユウ君、君を地獄に落としてしまったみたいだ」


いや、大丈夫だ。


俺はゆっくりと立ち上がり、ヒート先生の目を真っ直ぐ見つめながらこれまでの授業内容を説明してみせる。


「火属性の中級魔法まで。それから魔法陣を効率よく描く方法や、射程距離を伸ばす方法を教えてもらいましたね」

「なるほど、素晴らしい。だが〝魔法を同時に放つ方法〟を忘れているぞッ!!」

「別にいいでしょ1個ぐらい!」

「貴様にはあとで反省文をくれてやる、明日までに3枚書いてくるように!」

「はああっ!?」


周りを見れば、生徒達全員が口元に手を当てたり俯いたりしている。


あのエリナまでもが下を見ながら笑いを堪えているではないか。


「待ってください先生。私からユウ君に話しかけたので、反省文は私が書くべきです」

「ヴィータ!?」

「ほう、ではお前にも反省文をくれてやろう。しかし転校初日で分からないことも多いだろうから1枚でいいぞ」

「はい、分かりました」


な、なんていい子なんだヴィータよ。


ただ、笑っていた男子達は全員嫉妬の眼差しを向けてくる。まあいいや、ヴィータの優しさを知れたからな。


「悪いヴィータ、転校初日から反省文とか書かせることになって········」

「あはは、私の方から話しかけたのは事実なんだから、悪いのは私だよ。それより楽しいなぁ、ユウ君と知り合えて良かった」

「お、おう、そうか」


楽しげに笑うヴィータを見ていると、なんだかこちらまで楽しくなってくる。


しかしその後、俺は今頃去年授業をサボりまくった件についてヒート先生に詰め寄られ、反省文の量を倍に増やされるのだった。

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