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レベル1の時点で異世界最強  作者: ろーたす
1章 英雄の息子
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14.図書館の番人

「ゆ、ユウ、知り合いなん?」

「一応な。卒業した先輩達に代わって図書委員になった、新入生の女の子だよ」


しかし、これは一体どういうことだ?


いつも放課後に1人で本を読んでいた、失礼かもしれないけど地味な印象だった彼女が、何故こんな迷宮なんかを創り出したのか。


「なるほど、あの男子生徒達を負傷させたのは貴女ね」

「ええ、そうです。でも悪いのはあの人達ですよ、私は襲われそうになったから自分の身を守っただけ」

「どういうこと?」


地面に降り立った彼女は、恍惚とした表情で俺を見てくる。


「私は地味だし、遊ぶよりも本を読むのが好きな暗い性格です。だから、入学後も沢山の本があって周囲の目を気にせず読書ができる図書委員になりました」


秒毎に魔力が膨れ上がっていく。


いや、それだけじゃない。魔力とは違うなにか(・・・)、エリナが魔人化した時と同じ力を感じる。


「そんな私は1人の男性に出会いました。私と違って地味じゃないのに本が好きで、真剣に······そして楽しそうにオススメの本について語ってくれる、そんな素敵な先輩に」


何故かリースとエリナに睨まれた。どういうことだお前達、俺は別に図書室で変なことをしたりはしてないぞ?


「いつの間にか、放課後に図書室で先輩と会話をするのが一番の楽しみになってしました。なのに、それを邪魔する人達が現れた········」

「それが、あの男子生徒達だったというの?」

「生徒?いいえ、あれは先輩と私の空間を汚す害虫ですよ。そんな害虫達は、滅多に人が訪れない図書室を集会場だなんて言って、騒ぎ始めた。そして、図書委員だった私を無理矢理········」


歯を食いしばり、拳を握りしめる彼女。しかし、すぐに笑みを浮かべて両手を広げてみせた。


「でも大丈夫、私はこんなにも素晴らしい力を手に入れたんだから。だから先輩、私はまだ汚れていませんよ。嫌いにならないでくださいね」


どす黒いオーラを全身から解き放ち、少女は不意に無表情になる。


「ここなら誰にも邪魔されず、先輩と2人だけで永遠に読書ができる。だから先輩を招待したのに、どうして関係の無い人まで紛れ込んでるんですか?」

「あ、貴女が巻き込んだのでしょう!?」

「大変やったんやから!」

「知りませんよ、異物は排除しないと」


少女の周囲に数冊の魔導書が出現、その全てが輝きを放ち始める。


それを見たエリナが詠唱を始め、リースも咄嗟に風を纏う為に魔力を放出。しかし、少女はそれよりも早くに魔導書から数発の魔法を2人目掛けて放った。


「させるか!」


だが、ただ黙って見ているわけにはいかない。俺は急いで刀を抜き、斬撃を放って魔法を弾き飛ばす。


「先輩、どうして邪魔するんですか?」

「この迷宮は、君が俺と読書する為だけに創り出したのか?」

「そうですけど········」

「エリナの時といい、一体誰が力を渡してるんだ」


空間を歪め、巨大な迷宮を創り上げる程の力。何が理由でそんなものを持ち歩いているのかは知らないが、こんなことが何度も起きる前に犯人を見つけ出さなければ。


「エリナ、リース。悪いが力を貸してくれ。彼女の暴走を止めなければ、被害が拡大するかもしれない」

「言われなくても協力するわ」

「連戦で魔力を消耗してるけど、やるしかないよなぁ」


極力彼女を傷つけずに無力化し、エリナの時と同じくあの不気味な力を身体の中から出す。


その為には、疲れた体を引き摺ってでも協力しあって立ち向かわないとな。


「ふふ、仕方ないですね。すぐに終わらせて、害虫を駆除して、先輩と永遠の時間を手に入れるんだから········!」

「悪いな、俺は今の学園生活が気に入ってるんだ!」

「そういえば自己紹介をしたことがなかったですね、先輩。私はアーリア・アネスト、この〝迷宮図書館〟を支配する者です」


魔導書から極太の光線が放たれる。


それを跳んで回避し、俺はアーリア目掛けて駆け出す。振り向けば背後ではエリナが再び詠唱を始めており、風を纏ったリースが俺の隣に追いついてきた。


「リース、アーリアの動きを止めるぞ!」

「了解!」


左右に分かれ、同時に攻撃を仕掛ける。


「無駄ですよ、今の私は誰よりも強いの!」

「わっ!?」


その直後、魔導書から取り出した大剣を手に取り、アーリアはリースの首目掛けて振るった。


咄嗟にしゃがんでリースはそれを避けたものの、既に放たれていた氷の槍がリースの腹部を掠める。


「くっ、痛········」

「リース!」

「私と先輩の邪魔をしないでッ!!」


どうやら魔導書を使えば様々な魔法を使用できるらしい。徐々に魔物と化し始めているアーリアは先程からリースだけを狙っており、腹部を押さえて膝をついたリースに大剣を振り下ろす。


「【ライジングストーム】!!」


しかし大剣がリースに届く直前、エリナが放った竜巻がアーリアを呑み込む。そのまま魔導書を数冊焼き尽くし、アーリアは派手に吹っ飛んだ。


「何冊消えてもこの迷宮には無限とも言える魔導書が存在する。そちらに勝ち目なんてありませんよ!」


そんな魔法が効かなかったのか、着地と同時に本棚から再び数冊の魔導書を浮遊させ、先程とは違う魔法を連射し始める。


「くそっ、このままじゃこっちの魔力が先に尽きるぞ!」

「そ、そうやなぁ。ウチもう限界かも········」


魔法を避けるリースの顔色は悪く、息もかなり乱れている。それに、向こうで援護してくれているエリナも魔力切れ直前のようで、膝に手を置き荒い呼吸を繰り返していた。


「リース、一旦離れてエリナを頼む」

「なっ、1人で戦うつもり!?」

「俺はまだ半分も魔力を消費してないから大丈夫だ。あとは任せてちょっと休憩してろ」

「じ、冗談言わんといて!」

「言ってない。これ以上無理をすれば、魔力が底を尽きて枯渇現象が起こるぞ」

「だからって、あんな強い敵と戦うユウを黙って見とくだけなんて────」

「何をイチャイチャイチャイチャ········!」


疲労困憊なリースと言い合っていると、アーリアが突然膨大な魔力を解き放った。


それを浴びて踏ん張れなかったリースは吹き飛ばされ、向こうの壁に叩きつけられ倒れ込む。


「もうやめろ。これ以上俺の仲間を傷つけるつもりなんだったら、悪いが容赦しないぞ········!」

「どうして?私は先輩の為に········」

「確かに読書は好きだが、永遠に迷宮に閉じ込められてまで読み続けたくはない。可愛い姉や妹を心配させてしまうしな」


どうする、どうすればいい?


今のでリースは気絶、エリナも限界を迎えて座り込んでいる。戦えるのは俺だけ、しかし相手は学園の後輩。


攻撃手段は無限、魔導書を使用するので属性も多数。


全力で挑んだとして、もしもこの手で彼女を殺してしまうことになったとしたら?


いや、臆するな。


誰も死なせないし、全員揃ってこのふざけた迷宮から脱出してみせる。


考えろ、全てを見極めろ。


「先輩のことは大好きですけど、少しお仕置きが必要みたいですね。先輩は他の害虫達とは違う、特別な存在なんですから」


アーリアの魔力がさらに高まる。


「永久に彷徨う迷宮図書館よ、千の魔導書を使役せし我に力を与えよ········!」


おっと、そういや最初から彼女がずっと手に持っている古びた魔導書。さっきから魔法を使う時、よく分からん気配的なものをあれから感じるんだよなぁ。


なるほど······そういうことか。


「出でよ、我が図書館の番人!」


なんて思ってると、俺の周囲に浮かび上がった2つの魔法陣から巨大なゴーレムが出現した。


どちらも凄まじい魔力を身に宿しており、殺す気満々で腕を振り上げているではないか。


「先輩が死なない程度に暴れなさい、我が下僕よ!」

「ふん、舐められたもんだ」


まず1体目に接近、そして足を全力で斬る。


相当な魔力が込められているらしく、かなり硬い。しかし魔力を纏わせた俺の愛刀は、そんなゴーレムの足に深い傷を作った。


そして、腕を振り下ろした際に踏み込んだことでゴーレムの足は砕け散り、バランスを崩してもう片方のゴーレムに衝突。


そのまま2体仲良く転倒し、下敷きになったゴーレムはバキバキになっている。


もう片方は足が砕けているので立ち上がれないだろう。


「っ········!」

「魔闘力はエリナ達に劣るけど、その分考えて戦う能力が鍛えられていてな。負けるつもりはないぞアーリア!」


魔力を注がれゴーレムに復活されても困るので、その前に俺は目を見開いているアーリアに向かって疾走する。


「ど、どうして!?私は先輩のことを思って········!」

「君の気持ちは嬉しいけど、意味の分からん力を使ってすることじゃない」


再びアーリアの魔導書から力を感じた。


「なんで、分かってくれないんですか!」

「っ!?」


その直後、放たれた魔法を受けて俺は弾き飛ばされた。そのまま何度か地面を転がり、壁にぶつかってようやく止まる。


顔を上げれば大量の剣が目の前に。


急いで魔力を纏い直してそれを避け、俺は再度アーリアへの接近を試みる。


「だから無駄ですってば!向こうで気を失っている人と違って、先輩のスピードは私の魔法射出速度に劣ります!」

「それはどうだろうな」


魔法が放たれる───直前。


「【加速アクセル】」


とある魔法を詠唱破棄して発動した俺は、風を纏ったリース並の速度でアーリアに急接近した。


「なっ!?」

「そこだッ!!」


そして、俺はアーリアの持つ魔導書を斬った。


恐らくだが、彼女にこれ程までの力を与えているのは今斬った魔導書。どうやらその通りだったらしく、魔導書を失った途端にアーリアは突然悲鳴を上げた。


「ああああああああッ!!!」

「ぐっ────」


視界が歪み、衝撃が全身を揺らす。


「────おっ?」

「ゆ、ユウ君!?」


そして気が付けば、俺の前にはキョトンとしているマナ姉が立っていた。


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