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レベル1の時点で異世界最強  作者: ろーたす
1章 英雄の息子
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13.迷宮図書館

「ユウ、こっちに少女漫画置いてるで!」

「まじかよ、こっちにはこの前発売したばかりの小説が大量にあったぞ。さすがは迷宮図書館、なんでもあるな」

「あ、あなた達、真面目に調査しなさい!」


リース、エリナと共に、迷宮と化した図書室·····名付けて『迷宮図書館』へと引き摺り込まれた俺。


あれから出口と異変を引き起こした元凶を探して迷宮内部を探索している最中なんだが、どちらも全然見つからない。


時折面白そうな本を見ようとしてエリナに怒られながら、俺達は同じような場所を歩き回っていた。


「さすがに疲れたわね········」

「あはは、ちょっと休憩しよか」

「水も食べ物も無いのが辛いな。このまま脱出できなかったら訳の分からん迷宮内で餓死するぞ」


とりあえず俺達は床に座り込み、少しだけ休憩することに。しかし、この迷宮は俺達にそんな暇を与えてはくれないようだ。


「この気配········」

「チッ、魔物だな」


突然大量の本が空中に浮遊し始め、そして様々な姿の魔物となって襲いかかってくる。


大きな目玉が付いた本、手や足が生えた本、開いたページが牙だらけの口になっている本、翼が生えた本。


しかし、その全てをエリナは自慢の雷魔法で焼き尽くした。


「おお〜、流石やね」

「油断は禁物よ。この迷宮は本だらけ、それら全てが魔物の可能性だってあるんだから」

「いや、どうやらエリナの言うとおりらしい」


次々と本が魔物と化し、あらゆる方向から迫ってきた。俺は本の魔物を迎撃する為刀を抜こうとしたが、その直前にリースが楽しげに笑いながら前に立つ。


「次はウチの番やで〜!」


彼女の足下に緑色の魔法陣が浮かび上がり、詠唱と共に風が周囲を渦巻き始める。


どうやらリースは俺が詠唱中に守ってくれると信じているようで、何も言わずに魔物を斬っていくとにっこり笑っていた。


「【嵐神あらがみかぜ】」


そして、暴風を纏ったリースが地を蹴り弾丸の如き速度で本の魔物を拳で貫く。


さらにそのまま空中で次々と魔物達を蹴りや殴打で打ち落としていく彼女だが、スカートの中が丸見えだぞ。


「ちょっとユウ、何を見ているのよ」

「あれを見なければ男失格だ」

「へ、変態じゃないの!」


リースの適性属性は風。


あのように発生させた風を纏うことで圧倒的な速度での移動を可能とし、父から学んだ武術と風魔法を合わせることで一撃の破壊力を増加させている。


彼女もかなりの美少女なので手を出そうとする輩が後を絶たないが、俺は笑顔で男をぶん投げているリースを何度も見てきた。


「さて、このまま相手をし続けていてもキリがないな。2人共、魔物を蹴散らしながら先に進むぞ」

「オッケー!」

「はぁ、休憩すらさせてもらえないなんて」


俺も抜刀し、迫る魔物達を一気に斬る。そんな俺の横を凄まじい速度で通り抜け、リースが巨大な本を蹴りで吹き飛ばす。


そして最後はエリナの魔法でとどめを刺した。


このメンバーで行動するのは初めてだけど、なかなか良い連携じゃないか?


「息ぴったりやね!」

「私達の休憩時間を奪った罰よ」


時折リースの拳が棚を崩壊させ、エリナの雷で炎が燃え広がる。それでも止まらず俺達は走り続け、やがて広い場所に辿り着いた。


「おっと、魔物は居ないようだが········」

「濃い魔力が満ちているわ。恐らく上位の魔物が潜んでいるはず」


壁一面に本が敷き詰められているのは先程まで走っていた通路と変わらないが、明らかに雰囲気が違う。


それぞれ魔力を纏って警戒し、周囲を見渡しながら部屋の中心まで歩いた───次の瞬間。


「大ボスのお出ましか」


突然俺達の前に出現した大きな魔導書。凄まじい魔力を秘めたそれが開き、魔法陣が浮かび上がる。


そして、まるで本が呼び出したかのように、眩い閃光と共に巨大な魔物が姿を現した。


「あれは、ゴリアテボア········!?」

「知ってるのか?」

「相手が死ぬまで突進をやめない凶暴な魔物よ。まさかあんな上位の魔物を召喚するなんて」

「おふたりさん、来るで〜」


床が砕け散る程の勢いでゴリアテボアという魔物が駆け出す。


東方地方にはイノシシという中型の魔物が生息しているが、それが5倍程大きくなって更に巨大な牙が2つ生えている······と言えば恐ろしさは伝わるだろうか。


「くっ、散れ!」


俺達は一斉に跳び、ゴリアテボアの殺人突進を回避する。そしてゴリアテボアはそのまま本棚に衝突し、衝撃でフロアが揺れた。


「我が身に宿りし雷光よ········」


バサバサと本が落下する中、エリナが魔法の詠唱を開始する。しかし、ゴリアテボアはそれに反応したかのようにエリナ目掛けて猛スピードで疾走を始めた。


エリナは自分がターゲットにされたことに気付いて詠唱を中断しようとするが、もう遅い。


「危ないッ!!」

「きゃあっ!?」


一か八か、俺は本気で地を蹴りエリナに向かって跳んだ。そしてそのまま吹き飛ばされる寸前だったエリナを抱きかかえ、奇跡的に離れた場所に着地する。


「エリナ、大丈夫か?」

「え、ええ、ありがとう········」


距離が近いからか、顔が赤くなっているエリナから離れる。そして向こうに顔を向ければ、リースが1人でゴリアテボアの注意を引いてくれていた。


「チッ、入る時に通った入口が消えてるな。奴を倒さなければ進めない·······リース、何か作戦はあるか?」

「1つだけ思いついたで!簡単に説明するから聞いといてな」


ゴリアテボアの突進を避けながら、リースが作戦について説明してくれた········が。


「お前、本当にやるつもりか!?」

「うん!」

「流石に危険すぎる、却下────」

「それじゃあいくで〜!」


とんでもない作戦内容だったので却下しようと思ったが、その前に風を纏って加速したリースがエリナの前に立った。


「やるわよユウ」

「お、おい、エリナまで何を」

「臆しているの?心配してくれるのは嬉しいけれど、このままだと先に私達の魔力が尽きるわ」

「っ〜〜〜あーーもう!分かった、頼むから怪我だけはするなよ?」

「まかせといて〜」


一旦2人から離れ、俺はこれから行われる大胆な作戦を見守ることに。


俺が離れたのを確認し、エリナが魔法の詠唱を始める。それに反応したゴリアテボアが、再び突進を開始したが────


「嵐の如く吹き荒れよ、【ストーム】!!」


エリナの前に立ったリースが、詠唱短縮された風魔法を放った。猛スピードで迫るゴリアテボアを吹き飛ばすことはなかったが、突進速度を緩めることには成功している。


「だあああッ!!」


そして、リースは眼前まで迫ったゴリアテボアの両牙を素手で掴み、床にヒビが入る程力強く踏ん張る。


「ま、け、る、かああッ!!」


さらに動きの止まったゴリアテボアの腹を本気で蹴り、その巨体を天井付近まで吹っ飛ばした。


とてつもない威力だ。恐らく魔闘力の大半を筋力が占めているんだろうな。


でも、彼女は別に筋肉質というわけではない。見た目は華奢な女の子なので、ギャップに度肝を抜かす男子は多いだろう。


「エリナちゃん!」

「我らが敵を穿ち砕け───【ライジングストーム】!!」


続いて放たれたのはエリナの切り札。リースが先程使った魔法に雷を合わせた大魔法が、落下中だったゴリアテボアを向こうの壁に叩きつける。


「はぁ、はぁ······倒せたかな?」

「っ、まだよ!」


崩壊した本棚を吹き飛ばし、怒り狂ったゴリアテボアが煙の中から飛び出す。


そして2人目掛けて駆け出した、が。


「残念だな、お前は終わりだ」


待機していた俺は壁伝いに天井まで跳び、そして魔力を纏わせた刀をゴリアテボアの頭に突き刺した。


エリナの魔法で体がほぐれていたのだろうか。あっさりと脳天を貫くことに成功し、強敵はその場に崩れ落ちる。


「おおっ、大成功やね!」

「疲れたわ········」


詠唱でゴリアテボアを引きつけ、リースが突進を受け止め空中に浮かせ、エリナの魔法で弱らせる。


そしてとどめは俺が······というのが今回の作戦内容だった。その場で思いついた危険すぎる作戦なので、2度と行うことはないだろう。


「流石ですね、先輩」


とりあえず勝利したので、笑顔で駆け寄ってきたリース達と話をしようと思った直後。


聞き覚えのある声が耳に届いた。


「招待して良かった、格好良く戦う姿をこの目で見ることができたから········」

「やっぱり、君だったのか」


上を見れば、崩れた天井から凄まじい魔力を纏った少女がゆっくりと下降してきていた。


眼鏡が良く似合う、腰あたりまで茶髪を伸ばした大人しそうな少女。


彼女は、図書委員の下級生だ。


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