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レベル1の時点で異世界最強  作者: ろーたす
1章 英雄の息子
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04.学園地下迷宮

「どうして貴方のような人と·········」

「うるせーな。俺だって、あんたみたいな女とペアで行動するのは嫌なんだよ」

「なんですって?」

「もう1回言おうか?あんたみたいな────」

「もうっ、喧嘩しないの!次はユウ君とエリナちゃんの番だよ」


何故か俺だけマナ姉に叩かれ、やたら突っかかってくるお嬢様と学園地下迷宮に挑むことになった。


1週間程前に造られた地下迷宮には下級の魔物が放たれており、今後は授業などで積極的に使用していくという。


世界各地に存在する迷宮を真似ているので内部は迷路のようになっていると思うが、本当に俺達はゴールに辿り着くことができるのだろうか。


「それじゃあ気をつけてね。私は迷宮の出口付近で他の子達と一緒に待機しておくから」

「はい、分かりました」


マナ姉が遠ざかっていく。


地下迷宮に挑むのは俺達で最後なので、後続の生徒に追いつかれるかもしれないというプレッシャーは一切無い。


しかし早くゴールしなければ他の生徒達が教室に戻れないらしいので、面倒だが俺はお嬢様と協力しなければならないわけだ。


「足を引っ張らないでね、英雄の息子さん?」

「こっちの台詞だ、お嬢様」


愛刀を片手に迷宮へと足を踏み入れる。


一定の距離ごとに輝く夜光石が壁に埋められているので、内部はそれなりに明るかった。


さて、問題はお嬢様だ。どうやら俺と会話する気は一切無いらしく、スタスタと先へ進んでいく。


すると、早速魔物が姿を現した。棍棒を片手に岩陰から飛び出してきたのは、女性を好んで襲うという下級魔物のゴブリンだ。


「貴方は手を出さなくていいわ。私が始末するから」


出てきたゴブリンは合計3匹、しかしお嬢様は焦ることなく魔力を魔法へと変換する。


「雷光よ、敵を穿て──【サンダーランス】!」


放たれた雷属性の魔法は3本の槍と化し、お嬢様を襲おうとしていたゴブリン達を一瞬で焼き尽くした。


焦げた臭いが周囲に広がるが、お嬢様は表情一つ変えずに再び歩き始める。


「へえ、なかなかやるな。マナ姉と同じで適性属性は雷だったのか」

「そう言う貴方は無属性だそうですね」

「見せてやろうか?」


お嬢様は気づいているのか分からないが、天井からブルーバットという魔物が数匹攻撃を仕掛けてこようとしている。


俺は刀を鞘から抜き、刀身に魔力を纏わせ天井を睨んだ。


「落ちろ、風斬かぜきり!」


そして魔力を斬撃に変え天井に放つ。


驚いたブルーバット達はその斬撃を避けようと動き出したが、それよりも早くに斬撃は天井を砕いた。


衝撃波や飛び散った岩を浴び魔物達は地面に墜落し、そのまま息絶える。


「小石が頭に当たって痛かったのだけれど」

「まあ、襲われる前に仕留めたんだから許してくれよ」


その後も、迷宮内で出てきた魔物はゴブリンとブルーバットだけだった。


お嬢様の雷魔法と俺の剣技で特に焦ることなく魔物を倒して先へと進み、迷宮に入る前にマナ姉から貰った地図を確認。


どうやら現在地は迷宮の丁度中間地点らしい。さっきから魔物と戦いっぱなしだったので、数分だけ俺達は休憩することにした。


「それにしても、先に入った連中もゴブリン達を倒してるはずなんだけど········なんであんなに湧いてくるんだろうな」

「ゴブリンとバット系の魔物は繁殖力が非常に強いので、私達では入れない場所に身を潜めているのでしょうね」


優雅にお茶を飲むお嬢様と、水筒の中身を一気に飲み干した俺。この調子で進めばすぐに迷宮から出れると思うので、なかなか気まずい俺としては早く先に進みたい。


「·······ねえ、何か聞こえない?」


立ち上がろうとした時、お嬢様にそんなことを言われた。耳をすませてみれば、確かに人の話し声のような音が聞こえてくる。


いや、それだけじゃない。さっきから何度も小刻みに壁が振動しているのだ。


「迷宮には必ずヌシがいるらしいからな。この迷宮にもそういうボス的な魔物がいて、先に入った連中が戦ってるんじゃないか?」

「その可能性は高いわね。怖いんだったらここにいてくれていいのよ?私1人で殲滅してくるから」

「ふん、大した自信だな。ペアで迷宮を攻略するっていう指示を忘れてるのか、お嬢様?」

「なんですってぇ?」


と、次の瞬間。


「ぎゃあああああッ!!」

「「っ!?」」


悲鳴が響き渡った。


それを聞いたのと同時に俺達は駆け出し、そしてかなり広い場所に辿り着く。


「な、なんだありゃ·······!」

「ドラゴン·······!?」


一瞬自分の目を疑ったが、そこには確かに巨大なドラゴンがいた。赤黒い体、背中から生えた翼、鞭のように振り回されている尻尾。


そんな怪物が、数人の生徒達を吹き飛ばしていたのだ。


「おい、俺達が時間を稼ぐから今すぐ避難しろ!」

「す、すまない、助かる·······!」


全員大怪我を負っているが、自力で安全地帯に避難してもらうしかない。その時間を稼ぐために俺は刀を構え、ドラゴン目掛けて地を蹴った。


「生徒を半殺しにするような上位の魔物をこの学園は飼っているのか!?」

「グオオオオオオオッ!!!」


咆哮が迷宮を震わせる。


咄嗟に耳を塞ぎながら振り下ろされた爪を避け、ドラゴンの体を刀で斬った。しかし、鱗に覆われた皮膚に少し傷が入っただけで、逆に俺の腕がビリビリと痺れる。


「硬い········!」

「退きなさい、ユウ・シルヴァ!」


天井付近から数発の雷が放たれ、吠えるドラゴンを襲う。その隙に俺は一旦ドラゴンから離れ、お嬢様のところまで戻った。


「おい、どうする?」

「決まってるわ·······殲滅する!」


膨大な魔力がお嬢様の体から放たれ、空中に魔法陣が浮かび上がる。何となく分かるのは、これがお嬢様が使える最大の魔法なんだろうってことだ。


「チッ、あの野郎!」


しかし、それを撃つ前にドラゴンは動き始めた。俺達に向かって駆け始めたので、俺はお嬢様から離れて右側からドラゴンに斬撃を放って注意を引く。


「我が身に宿りし雷光よ、荒ぶる怒りの烈風よ。吹き荒れる裁きの嵐となりて、我らが敵を穿ち砕け────」


詠唱が終わり、魔法陣が輝きを放つ。俺を食おうと進行方向を変えたドラゴンはそれに気づいたが、もう遅い。


「【ライジングストーム】!!」

「ゴア────」


放たれたのは、まるで雷を纏った竜巻。それは凄まじい速度でドラゴンに迫り、巨体を浮かせて壁に叩きつける。


さらにそれだけでは終わらず、風が身を裂き雷が肉を焼く。どうやら適性属性の雷魔法に、風属性の魔法を合わせた複合魔法のようだ。


お嬢様も今の魔法には相当な自信があったらしく、膨大な魔力を嵐に変えながら笑みを浮かべている。


だが、そこで油断したのが間違いだった。


「っ、危ない!!」

「え────」


突如魔法が消し飛び、ドラゴンが放ったブレスがお嬢様に迫る。それを見た俺は全力で地を蹴り、お嬢様を突き飛ばした。


見ればブレスは目の前まで迫っており、それをどう回避しようかと考える間もなく俺は炎に飲まれて吹っ飛んだ。


「ゆ、ユウ・シルヴァ·········!」

「がはっ·······!?」


壁に衝突し、意識が吹っ飛びかける。そんな俺に駆け寄ってきたお嬢様は、先程までとは違って顔を真っ青にしていた。


「な、何故庇ったの!?」

「ぐっ、揺らすなって」


全身が痛む。皮膚が焼け、血が流れ落ちている。しかし、まだ敵は生きている。


俺は全力で踏ん張りながら立ち上がり、そしてドラゴンを睨みながらお嬢様に言う。


「お嬢様、逃げろ」

「え?」

「お嬢様の魔法ですら跳ね返すような化物だ。マナ姉を呼んできてくれ」

「ふ、ふざけないで!」


怒鳴ったお嬢様だったが、急にバランスを崩して転倒した。どうやらさっきの魔法で魔力を使い果たしたらしく、体を震わせながら起き上がろうとしている。


「な、何故、魔力が·······」

「はあ、魔力の調整をミスったんじゃないか?」

「このままじゃ、ふたりとも、こんなことで·········」


お嬢様が意識を失う。


ふむ、魔法を消し飛ばされた際に余分な魔力も消費してしまったのかもしれない。


とにかく、これでマナ姉を呼んできてもらうことはできない······って、先に逃がした連中が出口まで辿り着けてたら大丈夫か。


「それじゃ、ドラゴン野郎。もうちょっとだけ、俺と遊ぼうか」


いちいちイライラさせてくれる女だが、これでも一応クラスメイトだ。俺はお嬢様を離れた場所に寝かせてやり、そして刀に魔力を纏わせた。

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