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レベル1の時点で異世界最強  作者: ろーたす
これまでと、これから
131/257

アレクシスとラスティ

「えっとねぇ、アレくん。あたし───」


それを聞いた瞬間、アレクシスは猛スピードで自宅から飛び出した。そして急いで馬に乗り、王都を駆ける。


「あ、アレクシス様だわ!」

「かっこいい〜〜〜」


あちこちから聞こえてくる主に女性達の声を無視し、最短距離でオーデムへ。


「た、タローッ!!」

「うおっ、アレクシスか。どうした?」


しばらくして辿り着いたオーデムで、アレクシスはテミスと買い物中だった太郎を発見し、馬から降りて彼の肩を力強く掴む。


「よ、嫁が!に、にに、にっ、妊娠したんだ!!」

「なんだと!?」


大きな声でそう言ったので、当然周囲の人達は目を見開いていた。


誰もが知っている、今やって来たアレクシスの妻がラスティであることは。つまり、そのラスティが妊娠したということだ。












◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆












「アレクシスも、やることはやってんだなぁ・・・」

「当然だろう。しかし、まさか本当に妊娠するとは。い、今のうちに子育て用の道具を全て買い揃えておくべきだろうか」

「まあまあ、とりあえず落ち着けよ」


シルヴァ家にお邪魔させてもらったアレクシスは、テミス手作りのクッキーを震える手で食べている。


子供ができた時のことをほとんど考えていなかったらしく、どうすればいいのか分からないので焦っているらしい。


「産まれるのはまだ先の話なんだから」

「そ、そうだが、子供を産むのは相当痛いとも聞く。ら、ラスティはそれに耐えられるのだろうか・・・」

(なんだかんだでラスティのこと、大切に思ってんだなぁ)


心配そうに慌てているアレクシス。そんな彼を見てやっぱり良い奴だと思いながら、太郎もクッキーをかじった。


「そういえば、アレクシスってラスティのどこに惚れて結婚したんだ?」

「急にどうした」

「いや、何となく気になってさ。前からいい感じだったけど、ラスティの方が一方的に惚れてる感じだったし」

「ふむ・・・分からないな。昔から一緒にいるのが当たり前だったから、いつの間にか惚れていたとしか。まあ、強いて言うなら性格じゃないか?」

「なるほど、ラスティ可愛いもんな」

「おいタロー、お前の嫁が嫉妬しているぞ」


アレクシスの言葉を聞いて振り向けば、台所で洗い物をしていたテミスが少しムスッとしているではないか。


しかし太郎に「テミスも可愛いよ」「世界一だ」などと言われ、一瞬で機嫌が良くなる。


「タローはテミスのどこに惚れたんだ?」

「全部」

「お、おお」


しれっと即答され、アレクシスは焦る。


「子供は欲しくないのか?」

「そりゃ欲しいさ。なあ、テミス」

「え、ああ、欲しいな」

「もうちょっと夜に頑張ってみるか・・・」


太郎の呟きを聞き、テミスの顔が真っ赤になる。それを見て、こっちの夫婦もやることはやっているんだなとアレクシスは思った。

















「ええっ、さっきまでここに居たの!?」


アレクシスが帰ってから10分後、今度は妊娠したらしいラスティが二人の家にやって来た。


しかし、帰ってしまった夫を今から追いかけるのは面倒らしく、ラスティはシルヴァ家にお邪魔させてもらうことに。


「あっはっはっはっ!アレくん、めちゃくちゃ慌ててたでしょ。急に家を飛び出して馬でどっか行っちゃったから驚いたよ」

「はは。ラスティのこと、心配してたぞ」

「そっかそっか」


相変わらず元気なラスティ。彼女はテミスの手作りクッキーを美味しそうに食べたあと、楽しげに語り始める。


「いや〜、夜のアレくんってほんと野獣だから」

「おお、意外だな」

「あたしって結構体力には自信があるんだけど、アレくんには勝てないかなぁ」


突然そういう話が始まり、恥ずかしがり屋なテミスの顔は赤い。


しかし、二人の話は段々内容が酷くなり───


「確かになぁ。俺もテミスと────」

「す、ストップ!まだ昼間なんだから、そういう話は・・・」

「あれあれ、テミっちゃん。夜だといいのかな?」

「うっ、そういう問題じゃなくて・・・」

「あはは、ごめんごめん。タローくん相手だと、なんでも気楽に話せるから、つい・・・」


テミスに謝り、ラスティは立ち上がる。


「そろそろ王都に戻ろっかな。アレくんと、色々話をしないとね」

「ラスティも馬で来たのか?」

「ううん、あたしはソンノさんに頼んだの。小型の通信機を使ってオーデム魔法学園にいるソンノさんに連絡すれば、わざわざ空間を繋げてくれてね」

「さっきまでアレクシスも居たんだから、すぐ来ればよかったのに」

「どこに行ったのか分からなかったんだもん」


そう言うと、ラスティは笑顔で二人に挨拶してから家の外に出ていった。彼女を見送ったあと、太郎は隣に立つテミスに顔を向ける。


「よし、俺達もイチャつくか」

「ま、まだ夜じゃ・・・」

「夜には夜の、昼には昼のイチャつきがある」


早速太郎がテミスにちょっかいを出そうとした時、まるで狙っていたかのようにマナが帰宅した。


「ただいま〜。もう、全然魔導書売ってなかったよ・・・って、玄関で何してるの?」


顔が赤いテミスと焦っている太郎を見て、よく分かっていないマナは首を傾げるのだった。












◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆













「あらためましてアレくん。あたし、妊娠しました!」

「あ、ああ・・・」

「なにその微妙な反応は!」


王都、二人の自宅にて。


「も〜、アレくんお父さんになるんだからね。しっかりしてよ」

「それは分かっているが・・・」

「おっ、もしかして心配してくれてんの?」


落ち着かない様子のアレクシスを見てラスティは笑い、そして彼の肩をポンポン叩きながら安心させるように言う。


「確かにあたしって馬鹿だから、アレくんが心配する気持ちも分かるけどさ・・・」

「何を言ってるんだ馬鹿」


不意にアレクシスが真面目な顔でラスティを見つめ、そして彼女の頭を撫でながら口元を緩めた。


「お前が好きだからこそ心配なんだろうが」

「へっ?」

「まあ、家族が増えるのは嬉しいさ。これからも俺がお前を支えるから、一緒に頑張ろう」

「あ、あうぅ・・・」

「ん?どうかしたのか?」


普段怒られてばかりなので、そういうことを言われるのにラスティは慣れていない。


顔を真っ赤にしながら胸に手を置き、呼吸を落ち着かせてからラスティはアレクシスに抱きつく。


「アレくん大好きっ!」

「むっ・・・」


そして、今度はアレクシスが顔を赤くするのだった。

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