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レベル1の時点で異世界最強  作者: ろーたす
エピローグ
130/257

最終話 愛する人との物語

「お父さん、朝だよ!」


そんな元気な声を聞き、俺は目を開ける。すると、頭から耳を生やした可愛らしい女の子の笑顔が目に映り、頬が緩んでしまう。


「おはようマナ、今日も変わらず可愛いぞ〜」

「や、やだなぁ。照れちゃうよ」


体を起こし、しっぽを振っているマナの頭を撫でる。そしてベッドから降り、俺は欠伸をしながら部屋から出た。


少し残念なのが、昔と違ってマナが頻繁に抱きついてこなくなったことだ。相変わらず俺を好きだと言って懐いてくれてるマナだけど、彼女も成長しているということか。


それから一階に向かい、リビングで洗濯物を畳んでいたテミスに声をかける。


「おはようテミス。今日も最高に可愛いぞっ!」

「お、おはようタロー。毎日そう言ってくれるのは嬉しいけど、ちょっと恥ずかしい・・・」


マナと同じように頬を赤らめるテミスの前に座り、彼女のお腹に頬を当てる。すると、まるでそれに反応したかのように、彼女の大きく膨らんだお腹の中で何かが動いた。


「い、今動いたよな!?」

「うん、動いた」

「うおおぉ、泣きそう!」
















テミスと結婚してから二年が経った。

初めて彼女を夜に抱いた時ではなく、その後何回かハッスルしている間に彼女は妊娠したらしい。


そりゃもう妊娠したと言われた時は号泣したし、ソンノさん達を呼んでお祭り騒ぎだった。懐かしい。


妊娠といえば、実は去年ラスティが子供を産んだ。アレクシスと同じ赤髪の男の子だった。その時もめちゃくちゃ盛り上がって息子誕生を祝ったっけ。懐かしい・・・。


今度はテミスは子供を産む番だ。男の子だろうか、それとも女の子だろうか。どちらでも嬉しいので、早く生まれてきてほしいものである。


「もうすぐ私もお姉ちゃんになれるんだね。楽しみだなぁ」


そう言うマナは、神獣種ということもあってか普通の獣人よりも成長がかなり遅い。


しかしソンノさんによると、常に獣人化していることで成長速度が人間とほぼ同じになってきているという。数年後には、もうすぐ産まれてくる俺達の子供の2、3歳年上ぐらいの状態で成長していくらしい。


「もし産まれてきたのが男の子だったら、マナに悪い虫が寄らないよう頑張ってもらわないとな」

「ええ〜、私がその子を守ってあげるんだよ」


まさかマナがそんなことを言うとは。こうして娘は大人になっていくのか・・・少し寂しいな。


「タロー、テミス。子供は産まれたの?」

「ち、ちょっとベルちゃん。いきなり入るのは駄目だよ・・・」


そんなことを思ってたら、玄関の扉が開いてベルゼブブが中に入ってきた。そんな彼女に続き、申し訳なさそうにごめんねと言いながらディーネも入ってくる。


「残念ながら、赤ちゃんはまだ私のお腹の中だ」

「ええ〜、楽しみにしてたのに」

「だよなぁ。俺も楽しみで楽しみでウズウズしてるよ」


それに、テミスが妊娠してから一度も夜のお楽しみはしていない。結構我慢しているので、また早く再開したいもんだ。


初めての夜は未だに忘れられない。控えめな声とかやばかったし・・・いかんいかん、妄想が爆発する。


「・・・タローさん、今えっちなこと考えてたでしょ」

「えっ。いやいや、そんなことは」


じとーっと見つめてくるディーネから目を逸らす。大丈夫、今の俺は我慢できる男なのだ。


「も〜、お父さんは相変わらずだね」

「ま、マナぁ」


マナにまで呆れ顔でそんなことを言われた。ショックでちょっと泣きそうになったけど、そんな俺を見てテミスが笑っていたので思わずにやけてしまう。


「タローにテミス、子供は産まれたか?」

「ひゃあっ!?」


愛しい我が妻の笑顔を眺めていると、突然ベルゼブブが悲鳴をあげた。よく見れば、彼女の背後にいたずらっぽい笑みを浮かべたソンノさんが立っている。


空間干渉魔法を使って移動してきたんだろう。ベルゼブブを驚かせることに成功したソンノさんはとても嬉しそうだ。


「おや?怖がり魔王も来てたのか」

「ぐうっ、ソンノ・ベルフェリオぉ・・・!」

「あ、暴れちゃ駄目だよ。テミスさん妊娠してるんだから」


やれやれ、何年経ってもこの二人は変わらないよな。喧嘩するほど仲がいいとはよく言うけど、まあ彼女達も心の底では互いを認め合ってるはずだ。多分。


「もう許さない、今日こそ消し炭にしてあげるわ!」

「上等だ、転移させまくってやる」

「だ、だから、喧嘩は駄目だって言ってるでしょーーーッ!!」


次の瞬間、ディーネの姿が一瞬で変化する。そして、嫉妬の魔力を解放した彼女に凍らされ、ベルゼブブとソンノさんは氷の彫刻と化した。


「ほんとごめんね、この二人にはきつーく言っておくから。またあとで遊びに来るよ」

「ああ、待ってるぞ〜」


凍った二人を引き摺り、ディーネが家から出ていく。


「やれやれ・・・」

「馬鹿だねぇ・・・」


テミスとマナにそんなことを言われる彼女達が、いつか互いを親友だと呼び合う日は来るのだろうか。


・・・さて、そろそろ準備をしますか。


洗面所に向かって顔を洗い、歯を磨いてから台所へ。そしてぱぱっと朝食を作ってテーブルに並べる。


テミスは妊婦なので、前まで彼女が担当してくれていたことも、今は俺が大体任されている。


そのおかげで料理スキルなどがかなり上昇した気がするぜ。目標は、産まれてきた子供に『パパの料理、高級レストランの料理より美味しいよ』なーんて言われることかな!


「よし!それじゃ、そろそろ勉強してくるね!」

「おー、暇になったらいつでも声かけてくれよ。お父さんはいつでもマナを待ってるぞ」

「は〜い」


それから朝食を食べ終え、マナは自分の部屋に戻っていった。あぁ、一緒の部屋で寝ていた日々が懐かしい。お父さんはとっても寂しいよ、マナちゃん・・・。


「テミスぅ、慰めて」

「ふふ、よしよし」


抱きつくと、テミスが頭を撫でてくれた。それだけで沈んでいた気持ちが再浮上し、ものすごくやる気が出てくる。


「おはよーございまーす!」

「赤ん坊は産まれたか?」


テミスに甘えている最中、今度はアレクシスとラスティがやって来た。今日は妙に来客が多いな。


「ほら、ソルも挨拶しなさい」

「あう」

「か、可愛い・・・!」


そして、ラスティは抱っこしていた赤髪の赤ちゃんにデレデレだ。彼はソル、去年産まれた二人の息子である。


「おおー、ソル。タローさんですよ〜」


どちらかというと見た目はアレクシス似な気がするけど、性格はラスティに似ているか。顔を近付けると、笑いながら鼻を掴もうとしてきた。やばい、可愛い。


「というかさ。さっきソンノさんやベルゼブブ達が来て、二人と同じこと言ってたよ。ディーネに凍らされて連れてかれたけど」

「何があったの!?」

「どうせまたギルド長が余計なことをしたんだろう」


ソルの頭を撫でながら、アレクシスがそう言った。彼もこう見えてかなり親バカらしく、今も頬が緩みきっている。


「テミっちゃーん、久しぶり!」

「ああ、最後に会ったのは二ヶ月前だったか」

「二人の子供、ほんとに楽しみなの!我が子のように可愛がっちゃうからね!」

「勿論、存分に可愛がってあげてほしい」

「ああっ、ソル君来てるじゃん!呼んでよお父さ〜ん!」


ラスティ達の声を聞いたらしく、マナが階段を駆け下りてきた。そして彼女達に挨拶すると、マナは笑顔でソルの頭を撫で始める。


前までは俺があんな感じでマナを可愛がってたのに。畜生駄目だ、何か見る度に昔を思い出して泣きそうになってしまう。


「あ、そういえばお父さん。窓から見てたんだけど、ソンノさんとベルゼブブさんが空で戦ってたよ」

「何してんだあの人達は!」

「あはは、ちょっと見に行こうよ」

「あぅ〜」

「ラスティはソルを見ていろ。俺がギルド長を止めてくる!」


アレクシスが家の外へと走り、ソルを抱えたラスティもそれに続いた。


「私も見てくるね。ディーネさんと協力して、一回きちんと怒ってあげなくちゃ!」


そして、マナも楽しげにソンノさん達のところへ。結局、残ったのは俺とテミスだけになった。


「成長したように見えても、まだまだマナも子供だな」

「はは、そういうところが可愛いんだよ」

「じゃあ、私とどっちが可愛い?」

「うっ、それは・・・テミスは女性として、マナは娘として可愛いってことで」

「知ってるよ。からかってみただけ」


焦る俺を見てテミスは笑う。大人になってから、昔と違って逆に俺がテミスに弄られることが増えた気がする。


まあ、そういういたずらっぽいテミスも可愛いんだけどね。


「・・・・・・」

「・・・・・・」


やばい、凄まじい魔力と魔力がぶつかりまくっている。結局アレクシス達はソンノさんとベルゼブブを止めれていないらしく、たまに衝撃で家が小刻みに揺れるんだが。


「あーもう、俺もちょっと見てくる」


せっかく二人でイチャイチャしようと思ってたのに、これじゃ外が気になって何も出来ない。


そのことを少し残念に思いながらも、俺は玄関の扉に手を置いた。けど、外に出る前に一度振り返る。


やはりというべきか、テミスは玄関先まで見送りにきてくれていた。


「気をつけてね」

「ああ」

「もし危ないと思ったらすぐ戻ってくること」

「大丈夫!」

「ええと、それから────」


まだまだ何かを言おうとしてるテミス。そんな彼女の唇を不意に奪うと、顔を真っ赤にしながらも照れくさそうに笑ってくれた。


「愛してるよ、テミス」

「私も、貴方を愛しています」

「それじゃ、行ってくる!」

「ふふ、いってらっしゃい」


そして、俺は扉を開けた。














彼女の笑顔をいつまでも見ていたいから。彼女にいつまでも笑っていてほしいから。


平和を脅かす馬鹿がまた現れたりもするだろう。それによって彼女が涙を流すことになるのなら、俺は何度でも戦ってみせる。


まだまだこれは序章だ。


愛する人との物語は、まだ始まったばかりなんだ。

これにて本編完結となります、長かった!


そしてここから数話、各キャラの番外編的なのを投稿します。


あと少しとなりました『レベル1の時点で異世界最強』ですが、これからもよろしくお願いします!

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