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レベル1の時点で異世界最強  作者: ろーたす
異世界転移、レベル1
13/257

第13話 今日は平和に魚釣り

「ご主人さまー、ひまだよぉ········」

「こらこら、抱きつかれたら動きにくいだろ。でも可愛いから許しちゃうもんねー」

「もんねー」


マナを抱えて膝の上に乗せ、白色のサラッサラな髪を撫でながら目の前に広がる海を見る。


ここは、オーデムから馬車に乗って1時間ほどの距離にある釣り場。とある雑誌に載っていた釣りの記事を見たうちの娘が『マナもこれやりたい!』って言うから、現在俺達はすぐ近くにあるレンタルショップで道具一式を借りて釣りに臨んでいる。


けど、やりたいと言った本人はもう飽きてしまったみたいだ。


「マナ、眠くなってきちゃった」

「俺も眠い。なかなか釣れないからなぁ」

「テミスおねーちゃんも寝ちゃってるよ」

「なんだと!?」


今日はテミスも俺達と一緒に釣りをしに来ている。マナの言葉を聞いた俺は、テミスの寝顔を見るために隣に顔を向けた。


「すぅ········」

「おおぉ、天使か········?」


竿を下に置き、体育座りの状態で可愛らしい寝息を立てているテミス。横顔だけど、初めて見るテミスの寝顔は思わずドキドキしてしまうほど愛らしかった。


「ご主人さま、へんなこと考えてるでしょー」

「いやいや、そんなことは」

「だってにやにやしてるもん!」

「むむ、よく気づいたな」

「えへへー」


顔を見ればにやにやしてる事なんて誰でも分かると思うけど、俺に身を寄せながら嬉しそうな声を出したマナを、俺は後ろから抱きしめた。


「可愛すぎだぜこいつめー」

「あはは、くすぐったいよぉ」


ほんと癒される。モフモフな耳をぴょこぴょこ動かしてるマナと、隣で天使のような寝顔を見せてくれてるテミス。俺、今幸せだよ!神様·········ルナちゃんありがとぉぉぉ!!


「おっと」


神様に感謝してたら、急に竿がカタカタ動いた。これはヒットだな。俺が動いたのに反応したのか、マナが不思議そうに俺の顔を見上げてきた。


「どうしたのー?」

「ふっふっふ、マナに生きた魚を見せてやるぞぉ」

「ほんとにー!?やったー!」


これは大物なのだろうか。筋力が上昇し過ぎて餌に食らいついた魚がどれほどの力で暴れ回ってるのか全然分からん。まあ、とりあえず引っ張ればいいか。


「ありゃ、まずまずだな」


数秒後、俺が釣り上げることに成功したのはそれほど大きくないアジみたいな魚だった。地面の上でぴちぴち跳ねているそいつを見たマナは、尻尾を振りながらその魚に顔を近づけ、そして指でつつき始める。


「うわぁ、いきてるよ!」

「どうだマナ、釣りって面白いだろ」

「うんっ!もっとやろー!」

「よしきた」


釣れた魚を海水の入ったバケツの中に入れ、釣り針に新しい餌を付けて海に入れる。そしてさっきのようにマナを膝の上に座らせて、チラリとテミスの方に顔を向ける。


テミスはまだ寝ていた。こんな可愛い寝顔を見れるなんて、俺はある意味幸せ者なのかもしれないな。


「········ん?」


しばらくテミスの寝顔を堪能していると、彼女が下に置いていた竿がカタカタと揺れ始めた。まさかのこのタイミングでヒットしちゃった感じか。


「起こすのは可哀想だし········よっと」


片手で置いてある竿を掴んで勢いよく引く。すると、海中からめちゃくちゃでかい魚が飛び出してきた。


「でっかーい!」

「待て待て、こいつ絶対魔物だ」


後ろの方に飛んでいった魚は、地面が揺れるほどの勢いでビチビチ跳ね回る。そして体勢を立て直し、ナマズみたいな顔を俺達に向けた。


「んぅ········」


揺れに反応したらしく、テミスが可愛らしい声を出した。しかし、それでもまだ起きてはいないみたいだ。


「あれもお魚さんなのー?」

「うーん、魚型の魔物というべきか」


食べたらうまいのだろうか。いや、見た目があれだからあまり食べようとは思わないな。そう思った次の瞬間、目を見開いた魔物が大きな口を開き────


「ギイイィィィエエエエエエッ!!!」

「ひゃあっ!?」


魔物の咆哮が響き渡ったのと同時にテミスが飛び起きた。いいね、テミスってあんな声も出すんだね········とか言ってる場合じゃなかった。


「ま、魔物········!?」

「ごめんよテミス。あんなの釣ってしまった」

「わ、私の武器は········」


慌てて立ち上がったテミスだけど、寝起きだからかぐらりと体勢を崩す。このままだと海に落ちてしまうので、俺は咄嗟にテミスの腕を掴んで彼女を引き寄せた。


「あっぶねー········。大丈夫か?」

「だ、だだ、大丈夫だが、そのっ········」

「うん?」


よく見たら、テミスの顔は真っ赤になっていた。しまった、わざとじゃないけど密着しすぎた。俺がテミスを抱いてるみたいになってるじゃないか!


「ギエエエエエッ!!」


うるさいなあの魚は。まさか、羨ましいのか?テミスとの距離が近い俺が羨ましいのか!?はっはっは、残念だな馬鹿め!


「さて、とりあえずあいつを倒してしまおうか」

「そ、そうだな········」


テミスから離れ、暴れるように跳ねている巨大魚の前に立つ。


「ギギィアアアッ!!」

「むっ!」


その直後、巨大魚は俺を飛び越えて真上からテミスとマナに襲いかかった。やっぱりあいつ、テミス狙いじゃないか!


「させるか!」

「ギ─────」


高い場所に跳ね上がった巨大魚に向かって跳躍し、ヌメヌメした身体に突進して仲良く海に落ちた。けど、巨大魚はまだ陸に向おうとしているので尾ビレを掴み、海中で巨体を振り回す。


「っ〜〜〜〜〜!!!」


そしてそのまま海底に向かって投げる。底が見える深さなので、巨大魚が海底に激突したのも確認できた。


「はぁ、最悪だ」


どうやら底に激突した衝撃で巨大魚は力尽きてしまったようなので、ひとまず俺は海面から顔を出して酸素を吸う。それにしても、替えの服が無いのに海に落ちてしまうとは。しばらくマナを抱っこすることはできないな。


「た、タロー。大丈夫か········?」

「大丈夫だぞー。魚も倒せたし」


陸に上がって海を見る。すると巨大魚が海面に浮かび上がってきた。そんな巨大魚を見ていると、突然俺の身体が光り輝いた。何事かと思ってテミスを見れば、何故か嬉しそうに俺を見ている。


「テミスさん、この現象は一体········」

「すごい、レベルアップだ!」

「レベルアップ?」


おっと、まさかのこの世界に来て初のレベルアップか。レベル1の時点でレベル400の魔王に勝てるほどのバグステータスが更に上昇したということですね。


しかしまあ······────


「レベル1に優しくない世界だなぁ」


普通レベル1の人って、序盤のスライムポジションの魔物を5匹ぐらい倒すだけでレベル上がるだろ。俺の場合、ドラゴンとかキラービーとかゴーレムとかを倒してきたけど、レベルが1上昇するのにどれだけの経験値が必要だというのか。


「ご主人さますごーい!」

「あ、こら。抱きついたらマナも濡れちゃうだろ」


その後、レベルが上がったことを少しだけ嬉しく思いながら、俺達はしばらく釣りを楽しんだ。

太郎

「巨大魚の死体が気になって釣りに集中できない!」

マナ

「マナが食べちゃおっか?」

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