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レベル1の時点で異世界最強  作者: ろーたす
ユグドラシルの守護者達
123/257

第120話 英雄

あけましておめでとうございます、今年もよろしく!

『貴方の中には絶対に使ってはいけない力が眠っています』


テミスが傷付けられ、俺の魔力が暴走して裏の世界に呼ばれたあの日。俺がこの世界に召喚された理由や女神の役割などを聞いた後、ユグドラシルはその力について説明してくれた。


『魔力とは別のものか?』

『そうです。それだけは絶対に使わないでください。もしそれを使う時が来たとしたら、それは初代魔王が復活した時です』

『・・・使うとどうなるんだ』


あの時、聞いておいてよかった。


『それは──────貴方の〝命〟を燃やして力を生み出す、正真正銘最後の切り札。魔力とはまた異なった、あらゆる魔を滅する光・・・〝神力しんりょく〟です。そして、その力を使った場合、貴方は確実に死にます』

『おいおい、そんな力を持たせないでくれよ。間違って使ってしまったらどうするんだ』

『大丈夫ですよ、多分』

『で、それは強い力なのか?』

『当然です。命と引き換えに解放可能な神力を纏えば、相手が初代魔王だろうと魔神だろうと、絶対に負けることはないですから。まあ、初代魔王が復活したとしても、魔力を纏えばきっと勝てますよ』












◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆











「だあああああッ!!」

『ウオアアアアアアッ!!』


神の力を纏った俺の拳とグリードの拳が激突し、衝撃波で付近にあるもの全てが吹き飛ぶ。


なるほど、こいつはとんでもない力だな。さっきまで勝ち目なんて無いと思ってた相手に、今は絶対勝てるって心の底から思わせてくれてるんだから・・・!


『何なのだその力はァッ!!』

「お前をぶっ潰す力だよ!!」


顎を蹴り上げ、グリードが真上に吹っ飛ぶ寸前に尻尾を掴み、全力で地面に叩き付ける。それだけでは終わらない。神力を集中させた拳を振り下ろし、グリードの腹部を粉砕した。


「お前が強い相手と戦いたがってたのは、どんな奴が相手でも絶対に勝てる自信があったからだ!」

『ゴフォ・・・!?』

「でもなぁ、俺達に負けることをお前は恐れていた!世界樹を破壊したかったらしいけど、それなら何故直接俺達の前に現れなかったんだ?理由は簡単、全快の俺達全員を相手にするのは面倒だったからだろ?」

『貴様、何が言いたい・・・!』

「だから浮遊大陸に俺達を呼び寄せ、体力や魔力を消耗させたんだ。傲慢なお前は、余裕を持って俺達を叩き潰したかったんだろ?でも残念だったな、普通に世界樹を破壊しなかったこと・・・後悔させてやるよ!」


グリードを蹴り飛ばし、神力を放って加速した俺はそのままグリードに追撃を加えようとした───が。


『舐めるな糞ガキが!!』

「ぐっ!?」


グリードの尻尾が顔面に直撃し、バランスを崩した瞬間にブレスを浴びて、俺は逆に吹っ飛ばされた。


空中で目を向ければ、既にグリードは俺目掛けて疾走を開始している。やばいな、神力を纏っても実力は互角ってとこか・・・!


『余は偉大なる魔神であるぞッ!!』

「知るかよ!」


迫る拳を避け、腹を蹴る。そして蹌踉めいたグリードの顔面を殴ろうとした瞬間、右腕に尋常じゃない激痛が走った。


「がっ、ぐうぁ・・・!?」


これはやばい、あまりの痛さに意識が吹っ飛びかけた。これ以上右腕を使えば、もう二度と指一本でさえ動かせなくなるんじゃないかってレベルの激痛だ。


「くっそ、あの魔法のダメージか・・・!」


さっきグリードが放った特大の魔法を、俺は神力の解放と同時に右手で殴って消し飛ばした。多分だけど、あの時の痛みが今更出てきたって感じだろう。


『馬鹿め、何処を見ているのだ!』

「しまっ─────」


大砲のようなパンチを浴び、俺はとんでもない速度で吹っ飛んだ。このままでは山にぶつかる・・・そう思った俺は神力を纏って身を守ろうとしたが、突然上から衝撃を受けて地面にめり込む。


『ハハハハハッ!!』

「くっ・・・!」


そんな俺に馬乗りになり、グリードは何度も拳を振り下ろしてくる。とんでもない攻撃だ。ただ俺を連続で殴ってるだけなのに、衝撃で付近の山や地面が砕け散っているじゃないか。


「こっちは命を消費してんだ・・・大人しく消えやがれ!」


魔力を顔面に放ち、宙に浮いたグリードを本気で蹴り飛ばす。右腕には相変わらず激痛が走ったままだけど、このチャンスは逃さない。


全力で駆け出しグリードに急接近、空中で腹を蹴り上げ俺も着地と同時に跳躍し、グリードの顔面を殴った瞬間に神力を解き放つ。


『うおおおおおおッ!?』

「おらァッ!!」


その直後にグリードの背後に回り込み、踵で背中を蹴って地上に落下させる。数秒後、地面から煙が上がった。


まだまだ攻撃の手は緩めない。そのまま俺も煙に突っ込み、立ち上がったグリードを殴りまくる。


『ぐっ、ははは・・・どうだ、今の気持ちは!』


腕を交差させ、グリードは自分の身を守りながらそんな事を言ってくる。


『もう二度と、貴様は愛した女と話すことも触れることもできんのだ!余が貴様の未来を奪ってやったぞ・・・!』

「ああ、そうだな」


俺を動揺させるつもりだろうか。確かに、もう二度とテミスとは会えないというのはかなりショックだけど、それよりも────


「大好きな彼女の未来を守れたんだ、俺の未来なんかいらないさ!」

『ごあっ!?』


俺の拳がグリードの腕を砕く。


「今度は俺が、お前の未来を奪ってやるよ!」


隙を見せたグリードを本気で殴る。その瞬間にまた右腕に激痛が走り、呻いた俺を見てグリードがニヤリと笑った。


『その前に貴様が消えろ!!』

「ッ・・・!」

『スカーレットノヴァッ!!』


いつの間に展開していたのか。空から放たれた紅い弾丸を避けることは出来ず、凄まじい爆発に巻き込まれて意識が飛びかける。


「────まだ、だァ!!」

『なっ・・・!?』


それでも俺は勢いよく踏み込み、目を見開いているグリードをぶん殴った。正直、こいつは強すぎる。どうしてこれだけダメージを与えても倒れないのか・・・まあ、それはお互い様だけどな!


『何故、倒れんのだ・・・!?』

「仲間達のためだ!」


落ちていた岩を蹴り、グリードの顔面にぶつける。そして砕けた岩が視界を遮ったところを狙い、グリードに突進。そのまま掴んで振り回し、遠くの山目掛けて投げ飛ばす。


「お前に守りたい人はいるか!?」

『貴ッ様ああああああ!!』

「自分の為だけに戦ってるお前なんかに、俺は───俺達は!負けたりなんかしないんだよ!!」


俺も地を蹴り、山にめり込んだグリードを足裏で踏む。そして神力を放ち、山諸共吹き飛ばした。


『「うおおおおおおおおッ!!!」』


そこから全力の殴り合いが始まり、互いの血が舞い散る中、光が俺を包み込む。振り返れば、笑みを浮かべるユグドラシルが俺の背中に手を置いて浮遊していた。


「頑張ってください、決着は目前ですよ・・・!」

「ははっ、まじで助かるぜ相棒!」

「あ、相棒だなんて、そんな・・・」

『邪魔をするなゴミ虫があああッ!!』


何故か照れているユグドラシルから視線を戻した瞬間、凄まじい魔力を纏わせた拳が俺の顔面目掛けて放たれる。しかし、たった今ユグドラシルに体力を回復してもらった俺なら、その拳を避けることは簡単だった。


「いいえ、私はこの方の相棒なので!残念ですが、ゴミ虫などではありませーん!」

「らしいぜ魔神様!」


グリードの胸部に俺の拳がめり込んだ。骨が砕ける感触が伝わってきたけど俺はさらに力を入れ、そのままグリードを吹っ飛ばす。


「ごフッ、がは・・・!?」

「っ、大丈夫ですか!?」


その直後、俺は血を吐いてしまった。いよいよ俺の命も尽きる寸前らしい。ユグドラシルの回復魔法でも癒せない力の代償が、俺の体を着実に蝕んでいるようだ。


「そろそろ決着、つけないとな・・・!」

『うがあああああッ!!』


吹っ飛んだ先でグリードが空高く飛び上がり、そして魔法陣を展開した。というかあの魔法、何発も使えるのかよ・・・!


『余が負けることなど、絶対に有り得んのだァッ!!』

「やるしかないか!」


全神力を解き放ち、俺は上空のグリードを睨んだ。俺の神力が、命が尽きるのも時間の問題である。これで倒せなかった場合、俺は死んでテミス達も殺されてしまうだろう。


だからこそ、これで全てを終わらせなきゃならない。


「・・・佐藤、太郎。これで、貴方は本当に・・・」

「ユグドラシル・・・」

「貴方を巻き込んでしまったというのに、貴方の最後の戦いを見届けることができないなんて・・・私は最低な女神です」

「大丈夫さ、必ず勝つから。世界が平和になったらテミス達のこと、よろしく頼むぜ」

「はい、勿論です。それと・・・佐藤太郎。こんなことを、私が貴方に言っていいのかは分かりませんが────」


ユグドラシルの体が光の粒になり、徐々に消え始める。彼女は。俺の魔力や神力を使って表の世界に出てきてたらしい。しかし、俺がそれらの力をほぼ全て使い果たしたことで、こちら側に実体化できなくなったのかもしれないな───そんなことを思っていた時だった。


「愛してます、私のヒーロー・・・!」


最後にとんでもないことを言ってから、ユグドラシルの姿は消えた。危なかった、今のは普通にドキッとしてしまったじゃないか。


「・・・さて、これで残ったのは俺だけか」


この神力を放てば俺は死ぬ。それはやっぱり怖いけど、俺がテミス達の未来を守らなきゃならないんだ。


「いやー、最高の人生だったな!」


全ての神力を拳に集め、構える。その直後、空からグリード最大の魔法が勢いよく放たれた。


『消えろォ、サトータローオオオオッ!!』

「これで終わりだ、グリード!!」


踏み込んで、迫る魔法目掛けて跳ぶ。そして俺は拳を握りしめ、グリードの魔法を全力で殴った。


凄まじい力がぶつかり合い、押し返されそうになる。いや、もう既に押し返されてるか・・・!


「ぐううぅ・・・っ!」

『フハハハハ!見たか、思い知ったか!貴様が自らの命を代償に得た力さえも、余は圧倒してみせたのだ!!』

「くそっ、負けてたまるかよ・・・!」


魔法を使って体を浮かせてるから、まだ空中で何とか踏ん張れてるけど・・・やばいな、このままじゃ確実に押し負ける。


『余の、勝ちだあァ!!』

「ち、畜生ッ・・・!!」


右腕の感覚が完全に無くなる───その直前、光が俺の右腕を包み込んだ。懐かしく温かく・・・いつも傍で感じていた、銀色の魔力。


「て、テミスの・・・」


いや、それだけじゃなかった。様々な色の魔力が俺の周囲を渦巻き、そして身体の中に入ってくる。感じたのは、ベルゼブブやディーネ達魔王軍の魔力、そしてソンノさん達世界樹の六芒星の魔力に、毎日成長を見てきたマナの魔力。ずっと俺の中にあった、ユグドラシルの魔力や、ルナちゃんの魔力まで。


「・・・ははっ、結局最後までみんなに助けられっぱなしだったな、俺は」


神力と魔力が合わさり、グリードの魔法を押し返す。


『な、なんだと・・・!?』

「悪いなグリード。俺は仲間達と一緒に、お前をぶっ倒して世界を救うぜ」

『あ、有り得ん!何故奴らの魔力が此処まで届いたのだ!』

「さあな。みんなの思いが起こした奇跡・・・まあ、そんな感じだろ」


目の前が真っ白に染まる。全身の感覚が、感じていたみんなの魔力が一瞬で消える。それでも、俺達の力がグリードの魔法を完全に消し飛ばしたのは分かった。


『う、うおお!?余は、新世界の支配者となる魔神グリードなのだぞ!?旧世界のゴミ虫共などに・・・ただの人間一人に余は敗れるというのか・・・!?』


グリードの魔力が消滅し始める。


『そ、そんな・・・こんな、ところで、余は・・・余はあああああああッ!!!』

「いっけえええええッ!!」


そして、光が世界を照らした。



















そんな所で突っ立って何をしているんだ?



それが、彼女との出会いだった。



うちに泊まっていくか?

・・・へ?

そうだな。うん、今日はそうするといい



知らない人と接するのが苦手だった時期に、俺みたいな男なんかを家に泊めてくれたっけ。



いや、嬉しいよ。本当にありがとう、タロー



ネックレスをあげたら喜んでくれて、多分その頃からだな。俺がテミスに本気で惚れてたのは。まあ、最初はそれが恋心なのかはいまいちよく分からなかったけど。



それなら私の家に、す、住むか・・・?



毎日宿に泊まってた俺に、テミスはそう言ってくれた。もしかすると、彼女もその頃から俺を好きになってくれてたのかな。



はっ!?き、急に何を言ってるんだ!



可愛いって言うと、いつもそんな感じで恥ずかしがる。その反応が可愛かったから、ついつい何度も言っちゃうんだよな。



無理無理!無理だ!き、きっとその袋を食い破ってくる!



虫と幽霊が苦手なテミスがパニックになってるのを見た時は驚いた。半泣きになってるのは写真撮りたかったよ、うん。



お、おはようタロー。そ、そろそろ手を離してくれると助かるんだが・・・



胸を触ってしまったり裸を見てしまったりもした思い出がある。それでも怒らずに許してくれたテミスはほんと天使だった。



もし私が優勝できたとしたら、伝えたいことがあるんだ



魔闘祭の時、花火を見ていた最中にテミスからそう言われた。優勝したら告白しようと思ってた俺と同じで、テミスも俺に告白しようとしてたなんて・・・知った時は嬉しかったなぁ。



わっ、私もベルゼブブ達と同じように、タローのことが好きだから、他の女性が好きだって言われるのは嫌だ・・・



で、告白しようとしたら先にそんな事を言われて。そしてようやく付き合うことになった。結局キスまでしかできてないけどね。



泳ぐのが、苦手で・・・


い、いや、寧ろ幸せなことの方が多くなってるよ。こうしてタローと話が出来ているだけでも幸せだし・・・


タローが守ってくれるから大丈夫


ううぅ、でも・・・



彼女と出会ってから、本当に毎日が楽しかった。幸せだった。




別の世界から来た人だったとしても、タローはタローだ。身体の中に宿しているのが女神様の魔力でも、努力してそのステータスを手に入れたわけじゃなかったとしても。そんな事を言われたからといって、タローを好きだというこの気持ちが変わることは絶対にないから



これからも、テミスには毎日笑顔で過ごしてほしいな。あー、でも心配だ。俺がいないからって、変な男達が寄っていきそうで。そこは保護者のソンノさんやラスティに任せよう、頼みますよ。



タローになら、何をされても、怒ったりはしないし・・・一度ソンノさんに、何もされないというのは女として意識されていないんじゃないのかと言われて悩んだこともあったから、寧ろその、だから・・・



いやいや、手は出したかったさ。触ったり抱きしめたりなでなでしたり。勿論、卒業もしたかったし。いつか俺以外の男が彼女を抱くとしたら・・・うわっ、超嫌だ。絶対許さんぞ俺は。



嫌だ嫌だ!お願いだから、私を一人にしないで・・・!



でも、俺の物語はこれでおしまいだ。テミスのこれからを見れないのは辛いけど、幸せになってほしいな。もう泣かないでほしい、ずっと笑っていてほしい・・・。










「タロー、おかえりなさい」





あー・・・、もう一度だけ。もう一度だけでいいから、テミスの笑顔が見たいなぁ─────




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