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レベル1の時点で異世界最強  作者: ろーたす
ユグドラシルの守護者達
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第104話 閃光の双子

「な、なんで・・・」


握りしめた拳に汗が滲む。見間違う筈がない。困惑するディーネは、父である四天王のグランネと共に幼い頃暮らしていた屋敷前に立っていたのだ。


「アトランディアに来たはずなのに、どうして・・・」

「どうしたディーネ。早く中に入るといい」

「ッ!?」


景色が切り替わる。周囲を見渡せば、幼い頃に監禁されていた地下室に立っており、振り向けば父グランネと目が合った。


「なんで、お父さんが・・・!」

「今日も始めるとしようか、ディーネ。お前の潜在魔力はまだまだ引き出せる。ククッ、後に俺が魔王となる日も近いな」

「来ないでっ!」


魔力を纏い、父を睨む。それでもグランネは怯むことなくディーネの肩に手を置いた。


「早く座れ。父に逆らうのか」


幼い頃の恐怖が蘇り、身体がガタガタと震え出す。しかし、そこでディーネの脳裏に浮かんだのは、昨日の夜に自分を受け入れてくれた太郎の姿。



『また皆でワイワイ騒ごうぜ。いつものメンバーの中にディーネが居ないなんて、寂しいからさ』



「ごめんね、お父さん」

「あ?」

「タローさんの為なら、お父さんにそんな事をされなくても力を引き出せる。タローさんの為なら、私はどんな事だってできる」

「お前、何言って────」


放たれた水の弾丸が至近距離で直撃し、グランネは凄まじい速度で吹っ飛んだ。そして壁にめり込み動かなくなった父の前に立ち、ディーネは言う。


「タローさんと笑っていられる世界の為に、私はこんなところで幻術なんかに怯えている場合じゃないの」

「・・・く、くくっ、そうかそうか。だが、そんな世界を得る前に、魔王軍の仲間は全滅だ」

「なっ・・・!」


次の瞬間、全てが消えた。いつの間にか広大な草原のど真ん中に立っており、ディーネは魔力を纏い直す。


「ベルちゃんは大丈夫だと思うけど───まさか、ヴェント君とテラ君が・・・?」


嫌な予感がする。僅かだが先程幻術で乱された心を落ち着かせ、仲間達と合流する為ディーネは駆け出した。












◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆










「おっかしいなぁ。もう何分も待ってるのに、誰も来ないんですけど・・・まさか放置ドッキリ!?」


一番最初にアトランディアに上陸したラスティは、自分に続いて誰もやって来ないことに若干焦っていた。時折古代魔獣が姿を見せることもあり、襲われた時は瞬殺しながら皆の到着を待っているのだが、何分待っても誰も来ず。


「うーん、一度動いてみるかな。もしかしたら、別の場所に居たりするかもしれないし」


やがて、ラスティはその場から動いた。遠くに巨大な山々が見えるだけで、周囲は何も無い荒野。浮遊大陸アトランディアはどこへ行ってもこんな景色なのだろうか。そんな事を思いながら、ラスティは仲間達を捜して歩く。


「もおっ、最悪なんだけどー!」


段々イライラしてきたラスティだったが、そこで不意に何かの気配を感じて振り返る。背後には何もいなかったが、今度は真上から気配を感じて鎌を召喚した。


「誰・・・!?」

「おっと、やるなぁお姉さん。まさか僕達の気配を感じ取るなんてさ」


勢いよく振るった鎌が何かに触れることは無かったが、突然少し離れた場所に少年が姿を現した。妙な魔力を感じてラスティは警戒したが、その直後に背中に激痛と衝撃が走り、堪らずその場に膝をつく。


「ぐあっ!?」

「けど、油断したね。あいつに気を取られて俺の接近に気付かないなんてな」


振り向けば、先程現れた少年にそっくりな魔力を纏う、顔や体格もほぼ同じの少年が立っており、咄嗟に跳んでラスティは距離を取ったが、少年達は不敵な笑みを浮かべたまま合流する。


「これが、グリード・・・?」

「あっはっは!何言ってるのさお姉さん。僕はヒカル、神罰の使徒に所属している者だよ」

「俺はヒカリ。同じく神罰の使徒に所属している者で、ヒカルの双子の弟だ」

「皆からはライトニング兄弟って呼ばれてるんだ。それで、お姉さんは《狂響魔人サタナキア》ラスティ・アグノスで間違いないかな?」

「お姉さん、その二つ名で呼ばれるの・・・あんまり好きじゃないんだけど」


神罰の使徒が浮遊大陸に居る。ということは、このライトニング兄弟だけではなくハーゲンティやノワール達も来ているということか。仲間達が早くも戦闘を行っている可能性があり、ラスティは拳をキツく握った。


「というか、変な女だな。ネビアの幻術が全く効かない奴なんて初めて見た」

「よく見なよ、ヒカリ。お姉さんが持ってるあの鎌、闇の精霊憑きだ。あれが幻術を打ち消してるんだと思う」

「っ、まさかそこまで分かるなんてね。あたしの魔鎌アダマスは、確かに闇の精霊憑きだよ」


黒い魔力が鎌から放出され、ラスティの表情が段々変化していく。先程までは、強敵と遭遇したことによる緊張が顔に出ていたが、好戦的な笑みを浮かべながら鎌を構えた。


「で、君達はどうやって死にたいのかな?」

「いやいや、何言ってるのさお姉さん。残念だけど、死ぬのはお姉さんだって確定してるんだ」

「俺達ライトニング兄弟は、あんた程度じゃ追いつけない世界へ至ることができる。闇雲に鎌を振り回したとしても、決して当てることはできないさ」

「ふーん、だったら何?」

「「っ!?」」


自信満々のライトニング兄弟だったが、一瞬で距離を詰めたラスティに胴体を真っ二つに切断される。しかし、攻撃を仕掛けたラスティは、違和感を感じて即座に二人から離れた。


「まさか、残像・・・!?」

「その通り!これくらいのスピードで動けば、残像を生み出すことなんて簡単さ!」

「くっ────」


振り向いた瞬間、鳩尾にヒカルの膝がめり込む。その直後には、真上からヒカリに頭を押さえられてそのまま地面に叩き付けられた。さらにヒカルの蹴りが放たれ、ラスティは猛スピードで吹っ飛ばされる。


「ほら、これで終わりとか言わないよね!?」

「まだ始まって数秒だぞ、狂響魔人!」

「当たり前でしょ、調子に乗るなッ!!」


黒い刃が地面を切断し、閃光の如く駆けるライトニング兄弟に迫る。最初は余裕の笑みを浮かべながら刃を躱した二人だったが、避けた瞬間に刃から大量の棘が放たれ、反応が僅かに遅れたヒカリの横腹を掠めた。


「っ、何・・・!?」

「あれぇ、血が出てるよ?私程度じゃ追いつけない世界とか言ってなかったっけ?」

「てめえ・・・!」

「まあまあヒカリ、落ち着きなよ。この程度で調子に乗られるのは鬱陶しいし、ちょっとだけ本気を出してあげようか」


ライトニング兄弟がさらに魔力を放出した。それに対し、ラスティも黒い魔力を鎌へと集中させ、地を蹴る。


「舐めるなァ!!」

「舐めてないよ。だからちょっとだけ本気、出してあげるって言ってるんでしょ」

「え───うっ!?」


直後、骨が砕ける音が響いた。何が起こったのか理解する前に、ラスティは吹っ飛ばされて地面を何度も転がる。


「い、あああっ!!」

「さーて、始めようか。痛がりお姉さん虐め」

「全ての骨を砕くまで終わらないからな」


そして、顔を上げれば既に二人は目の前に。そこから先は、一方的な蹂躙であった。

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