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#04 スクウェア・ラブソディ 【上】

第四話大変御待たせ致しました! 今日は久しぶりに仕事が休みなので御昼に前半を投稿させて頂きまして、後半を夜までに書き上げて投稿させて頂こうかと思います。←すいません、二時まで粘って書いたのですが間に合いませんでした……。待っていてくださった皆様すいません。


※改めて、誤字の修正と文章の整理をしました。(1/21)

良く晴れた暖かな陽の光が射す早朝の狐乃街稲荷山神社には秋の少し肌寒い風が吹いており、紅葉で赤く色づいた木々と葉っぱが揺れ動く穏やかな風景の中で。紅白色の巫女服を着こなし、防寒の為にそれぞれ色とりどりのちゃんちゃんこを羽織った美少女達が参拝者達が訪れる前の稲荷山神社の敷地内を綺麗にする為に清掃作業を行っていた。


その清掃作業を行っている内の一人であり、昨日豆腐を届けに着た望を一番に出迎えた活発な少女秋葉は自分の分担場所である四方を四本の木の柱に支えられているだけの(やしろ)の様なしめ縄が吊るされた和風の屋根があり。


山の湧き水であり不思議な霊験をもつ御神水(ごじんすい)と呼ばれる汲み上げられた水が、温泉などでお湯が出てくる四角い湯口の様な設備から滝の様に流れ続けており。


その水は長方形でバスタブ程の大きさの石の中身をくり貫いて作られた水受けに集められていて、水受けの側には訪れた参拝者の方達が手軽に飲める様に蹲踞柄杓つくばいひしゃくと呼ばれる水を汲み取るための柄のついた容器が5本設置されている。


その周辺の清掃を任されていた秋葉は何処か上の空であり、ある程度清掃が完了したと感じた彼女は自らの清掃班長に声をかける。


「これでいいかな……。夏魅(なつみ)お姉ちゃん給水所の清掃が終わりました!!」

「おや? 何時もよりえらく速いやん秋葉ちゃん」

「えっ? そうかな~何時もと変わらないと思うけど」


その呼び声を聴いて敷き詰めらた白い砂利を下駄でジャリジャリと言わせながら歩いて来たのは、朝の掃除をする狐の美少女達を指揮する神主である山下藤吉郎の娘である山下夏魅であり。


彼女の容姿は少し青みがかった髪を自らの髪で後ろで巻き、わざと左右に前髪二本を垂らしたスタイルのポニーテールと。下の赤い袴はそのままだが上着の巫女服は袖を肩まで目繰り上げて捻り止め、祭り娘の様になっており。胸に巻いたサラシが時折胸元から姿を時折覗かせ。


ややつり目でありながらスラッとしたスタイルと健康的な褐色肌から外国のモデルさんをイメージさせる彼女だが、実際は面倒見の良い御姉さんであり。秋葉の呼び出しに嫌な気持ち一つせず、実の子供と対する親の様に彼女に起こっている異変を見抜く。


「……あちゃー。秋葉ちゃん、さては昨日の事を引きずってて仕事に集中出来て無かったんとちゃう? めっちゃ汚れや、落ち葉とかが残っとるよ?」


「うっ……夏魅お姉ちゃんごめんなさい。実はずっと昨日、きつ姉が望お兄ちゃんを連れ出して帰って着てからの話が信じられなくて……」


「まあなぁ。きつ姉さんが二人で駆け落ちでもするのかと思っとったら、まさか望が初恋の人の為に美少女になって帰って来るとは流石に皆予想外やったからねぇ。望を慕っていた一部の子達なんか目眩を起こしてそのまま床に就いた子もおったぐらいやし……」


昨夜の出来事を染々思い出しながら夏魅は袴のポケットから江戸時代等で良くみられた昔のたばこに当たる、細いパイプの先端にラッパの様な形をした煙管(きせる)を取り出して。麻薬では勿論なく、リラックス効果のあるハーブを擂り潰した粉上の物をラッパ部分の火皿に入れてマッチで火をつける。


するとハーブからお香の様に白い煙りが上がり始め、辺りには元々あった自然の香りとハーブの爽やかな匂いが漂いだし、自然と秋葉にまとわりついていた思い煩いが軽くなった気が彼女はした。


「う~ん、爽やかな良い匂いだね夏魅お姉ちゃん! お陰で頭の中がスッキリしてきたよ!!」


「……ふーっ、せやろ? 辛い事がある時は必要以上に悩み続けるんやなくて、一端忘れてからこうして一息ついてスッキリすのが一番なんやで? まあ、きつ姉みたいに弟としてではなく“初恋の人として”望の事を見ていた秋葉ちゃんには、昨日の話は辛かったとは思うけど……。 望との関係が無くなった訳やないんやから、これから自分が出切る事を色々と模索して見たら良いんとちゃうかな?」


「うん……。ありがとう夏魅お姉ちゃん!! 私、望お兄ちゃんと少しでも一緒に居られるようにもっと色んな手段を考えてみる!!」


「おお! 何時もの元気な秋葉が帰ってきたねぇ!! それじゃあウチも手伝うから、掃除の仕上げをしてまおうか?」

「わかったわ! それじゃあ……あっ、望お兄ちゃん!?」


気を取り直して掃除に移ろうとしていた二人であったが、彼女達の目線の先に巫女服姿に身を包んだ小学生サイズになり沢山の荷物を抱える望と朝にプレゼントされた服をそのまま着ているきつ姉が階段を上がって来る様子が二人の目線に入って来る。


「あんなに重そうな荷物を持って……助けにいかなきゃ!! 望お兄ちゃ~んお帰りなさ~い!!」

彼の姿を見た秋葉は条件反射的に駆け出して行き、荷物持ちを手伝いにいく。


秋葉の姿は余りの興奮のために鮮やかなやまぶき色の頭から二本の狐耳が出ており、お尻からも二本の尻尾が延びていて。 やがて合流を果たした三人はにこやかに談笑しながら、宿舎までの道をゆっくりと歩き始める。


そんな自分を取り残して行く三人を慌てて追いかける夏魅。

「まて、まて、まてい!! 何和やかにウチを無視して次のシーンに移ろうとしとんねん!?」

「あら? その騒々しい声と汚い関西弁は夏魅かしら? 朝から元気ね~ふふふ……」


親しい友人の叫びを聴くが、きつ姉は悪ぶれる事もなくおしとやかな御姉さん口調でちゃっかり罵倒していく。その発言にカチンと来た夏魅はきつ姉に詰め寄り、元々犬猿の中であった二人の会話と言う名のどつき漫才が開始される。


「なっなんやと!? うちらに仕事を全部押し付けて黙って望と駆け落ちしておいて、よぉくもぉそんな事が言えたもんやな!!?」


「迷惑をかけたのは謝るわ。だけど私と望に取ってあの時は一刻を争う自体だったんだから許してくれないかしら?」


「それは神社内で未だにパニクってる子達と神主様にあんたが直接伝えんとどうにもならんわ。大体、今回の事件が起きる予測ぐらい仙狐様であるあんたなら出来てたんとちゃうんか?」


その指摘に思わず事件を起こした望も体をビクッとさせて、きつ姉を見上げる。


「どうなのですきつ姉?」

「うーん……。まあ世界を揺るがすような大事件なら神様から御借りしている神器(しんき)を通して伝えられる未来予知から予測は出せるわよ? でも私個人の能力だけでは細かくて完全な未来予知は無理なの……。そして今回起こった出来事は私の千を越える未来予測の一つに過ぎなかった」


その説明に複雑な顔をしている望に気付いたきつ姉は極力感情を抑えた様な穏やかな微笑みを浮かべながら望の頭を優しく撫でる。


そんなきつ姉の何かを悟った表情を見て、昨晩から望の恋の行方を心配し続けていた秋葉は自分の元から望が知らない女性と共に手を繋いで去っていく未来を頭の中で描いてしまい。つい感情的になってきつ姉を問い詰める。


「それじゃあきつ姉さんの未来予知の中で今回の問題の解決策は出ているんですか!? 望お兄ちゃんが元の姿に戻って、また元の日常が戻って来る日は来るんですか!?」

「あっ秋葉ちゃん?」

「秋葉……」


彼女の内心を知らない望は普段余り感情的にならない秋葉が我を忘れた姿に驚き、内心を知る夏魅はせつなげに彼女の姿を見詰める。気付けば周辺に彼等の話声を狐の聴覚力で聞き付けた狐娘達が密かに集まっており、一応狐乃街稲荷山神社No.2であるきつ姉の発言を固唾を呑んで見守っている。


「それはね……残念だけど私の予測範囲では数が多すぎてわからないの。皆が知っているように、望を常識と言う区切りに当て嵌める事は出来ない人だからね? 仙狐と呼ばれる私にも解らないのよね~いや~困ったわ~」


その発言に思わずその場の空気が和み、此れから身の回りの状況が変わってしまうのではないかと心配そうに聴いていた狐娘達もほっと胸を撫で下ろして側にいる仲間達とにこやかに談笑を始めている。


「なるほどなぁ、まあ何でもかんでも運命で一くくりにされていない事が知れただけでも儲けもんとせんとあかんわな。……所で、此処に集まってるちゅうことは皆は担当場所の仕事は終わってるって訳でええんよね?」


その瞳を光らせて自分達を見渡す夏魅の視線に掃除をサボって話を聴いていた狐娘達は慌てて散り散りになって持ち場へと帰って行く。

その姿を煙管(きせる)をくわえて、一息ハーブの煙りを口に含み吐き出した夏魅の目はおどけて見せたきつ姉を捉えており、その視線に気付いたきつ姉は少し顔を強張らせながら微笑んでみせる。


「あっあら、そんなに私を見詰めてどうしたのかしら夏魅?」


「くくく、いんや日本を救う仙狐様ともあろう方が随分と演技が下手くそな大根役者やったもんで、ついつい夢か真かと目を疑って見詰めてもうたんや。なあきつ姉、ほんまはちゃんと予測はできとったんやろ?」

「ギクッ! なななんの事を言っているのか解らないわね~」


夏魅からの追及に嘘が苦手なきつ姉は冷や汗を垂らしながら、口笛を吹くと言う誤魔化しのテンプレの様な言動を真面目にするものだから。その場にいた皆は平気で嘘を付くきつ姉に対する怒りを覚えるよりも笑いが込み上げて来てしまい、少し和む一同ではあったが。


流石に真相を知れないままでは御開きには出来ないと判断した夏魅はきつ姉の肩に手をおきながら正面から向かいあう。


「まあ。きつ姉も話しにくい話題やとは思うからこの話はウチが責任を持って確認しとくから、秋葉と望はその荷物を宿舎まで持っていき。折角の豆腐が傷んだらかわいそうやろ?」


そう言って秋葉にウィンクして見せ、自分と望を二人っきりにしてくれた夏魅の気遣いに気づいた秋葉の表情はたちまち明るくなって行く。

「ありがとう夏魅お姉ちゃん! じゃ、じゃあ望お兄ちゃん私と一緒に御豆腐を持っていこ?」

「うん、それじゃあよろしくね秋葉ちゃん! 話し合いが終わるまで待ってるからねきつ姉!」


そう言って二人は御互いに荷物を持ち合いながら宿舎へと歩いていき、その遠くなって行く後ろ姿にあせるきつ姉であったが、彼女は夏魅にしっかりと掴まれていて逃げられない。

「あっ、ちょっと望! 私を置いていかないでよ!?」


「さーてと、きっちり説明してもらおうかきつ姉? どうにも色々と隠し事してるようやし」


「……うう、わかったわよ。ちゃんと逃げずに説明はするからその手を離してよ夏魅。折角望から借りた服がしわになってしまうから」

そう言われた夏魅は物珍しそうにきつ姉の全身を包む望から借りた服を足元から見上げた後、ゆっくりと手を離す。


「なんや男物の服を着てると思ったらそう言う事やったんかいな。てっきり男装にでもはまったのかと思ったは」

「はまってないわよ! これは私の着物が汚れないようにと優しい望が貸してくれた服なんだから!! さて、さっきの話の続きだったわよね……はあ……」


憂鬱そうなきつ姉が話し出す未来予知の話に、夏魅が驚きの余りに絶叫が響くのはしばらく後の事である。








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