#29 結集する仲間達
これからの予定について活動報告に掲載させて頂きました。申し訳無いのですが、私自身の都合により不定期更新にさせて頂きます事を御詫び申し上げます……。
※長らく更新を停止していてすいませんでした!
今回リハビリとして、前の章が終わった後に望と狐少女達との過去を補填する閑話を投稿させて頂きました。
赤鬼達の襲撃から始まった一連の騒動が収束した事もあり、改めて再開を喜び会う望達の元に、海岸で赤鬼達が連れてきた大量の餓鬼との戦闘を終えた真理恵とクネクネがへとへとになって歩いてきた。
「やれやれ、やっと彼等も諦めてくれましたね」
「いやー……暴れに暴れたねクネクネさーん。……おりょ? 見掛けない人達(?)が増えてる!?」
その声に反応したきつ姉がゆっくりと振り返り、真理恵達を視線にとらえる。
「あら。彼女が望達が探していたって言うーー」
「狐巫女様だぁぁぁぁ!!!」
きつ姉のその台詞が言い終わる前に、真理恵は初めて見る空とモフモフの毛並みとナイスバディな容姿を持つきつ姉を見て目を輝かせ、興奮したまま抱き付くものだからきつ姉も苦笑いを浮かべながら抱き止める。
「稲荷様の身体はマシュマロみたいに柔らかくて、凄く良い匂いがするんですねー……ずっとこうして居たいです……」
「……あらあら、随分と苦労をしてきたのね真理恵さん。貴方が本当に無事で良かったわ」
そんなきつ姉に気軽に接する真理恵とは対称的に顔に顔文字の様な仮面を被り、黒い寝袋で全身を覆った状態のクネクネはきつ姉の前でかがみこみ、今までのおちゃらけた声ではなく俳優の様に低音の良く澄んだ声で話しかける。
「失礼ながら、貴方様は仙狐様でしょうか?」
「以下にも、私は狐達と人の繁栄を支える仙狐であるが……。貴方、この妖力は……」
紳士的なクネクネの対応に少し警戒心を抱いたきつ姉が、彼の身体を注意深く調べた所で驚くべき事に気づかされ、その対応を見てとったクネクネは次なる行動に移る。
「真理恵さん。私の顔の仮面を取って頂けませんか?」
「い、良いんですか?」
「はい、仙狐様は私の正体を知っておられる様子ですから」
「わかりました、じゃあ取りますよ?」
そう言って、戸惑いながらも真理恵はクネクネの仮面に手をかけて、その様子を皆が固唾を呑んで見守る中、その仮面が取り外された彼の顔は望達の予想を斜め上を行く物だった。
「なっ……!!」
ずっと隠されていた彼の顔は火傷で焼き爛れていたり、悪魔の様な醜い顔では無く、驚くべき事に人の顔を狐顔にした様な獣人であった。
「クネクネさん、狐だったんですか?!!」
思わず彼とメンバーの中では一番付き合いが長い真理恵は目を丸くして声をあげ、離れていた望達も彼の元に駆け寄る。
「隠していてすまないね、皆。この仮面と衣服を外すと妖力が漏れて鬼達が側に来た場合に存在がバレてしまうから隠していたんだ」
そう言いながら寝袋まで脱いでしまった170㎝前半の細めなクネクネさんの身体はまさしく人間を狐にした様な体格であり、狐色と白色の毛色の汗に濡れて縮んだ毛と細いながらも鍛えられた身体が目を引く逞しい姿に、真理恵とのぞみが思わず顔を赤らめて黄色い声をあげる。
「おおおお!!! 格好いいし、可愛いですし最高じゃないですか!!!」
「ふわぁ……クネクネさん素敵なのです……」
「ありがとう、二人とも。そして今まで身分を偽っていた事を許して欲しい」
そう言って、軽く会釈するクネクネを皆が責める訳も無く。彼の濡れた身体を乾かす為にきつ姉が御札を用いて彼の毛色をどういう仕組みかは分からないが、一瞬にして清潔な状態にし。
ツヤツヤでフサフサの毛並みとなった彼と毛は収穫前の麦穂の様に輝いていて、その光景に今度は望と空も共に黄色い声援をあげてしまう程にその姿は美しかった。
「ありがとうございます、仙狐様。この佐久間、この恩は忘れません」
「母ならば誰でもする様な毛繕いが、そなたが心から望む事では無いでしょう。貴方の望事を全て話しなさい」
その仙狐としての凛々しく威厳のあるきつ姉の声に思わず望達も聞き入る中、佐久間は身を屈め、きつ姉を見上げる形で説明を行う。
「……では、僭越ながら。現在我々がいるこの世界は武力派の鬼達が人間を浚って造り出した物であり、彼等は拉致した人間達を自分達の言うことを聴く化け物に変貌させる牧場の様な世界を構築している訳ですが。
鬼達の本題はこの世界と仙狐様がおられる世界とを入れ換える為に製作されているのだと思います」
そのとんでもない内容に皆は絶句し、今まで起きていた地獄のような出来事が自分達が暮らす地球で起きるイメージを浮かべて顔色を悪くさせる。
「なるほど、やはりそうなるのね……。でも彼等の中でも派閥争いが起きていると言う事は何故分かったの?」
その質問に対しては元気良く手をあげた真理恵が説明をする。
「はい! それは各世界にいる鬼達が言い争いをしているのを私達が偵察に出ていた時に確認したからです!」
「鬼達がどんな言い争いをしていたの?」
突然の乱入してきた真理恵に対してきつ姉は穏やかに話の続きを促し、真理恵は嬉しそうに「はい!」と声をあげてから話を続ける。
「私達が知る限りはですが、鬼達の中にも派党があって。先ず、現状維持を訴えている酒呑童子が率いている赤鬼と青鬼のグループと。過激派の黄鬼とそれに引っ張られている緑鬼達が率いるグループがいるみたいでして。
考え方が正反対な彼等は互いの考え方を否定しあっているのを何度も確認しています!!」
その説明を聴いてきつ姉は手を口元に当てて考える。
「ふむ、では保守派の酒呑童子と手を組むことが出来れば、私達の世界を襲撃しに来ている彼等を押さえ込み安くなるかもね……。でも、彼と私達を繋ぐパイプは無いのよね……」
「その役目、私達が引き受ける」
考え込んでいたきつ姉をフォローするかの様に、望達が中にいて黄鬼達に激しくシェイクされたボロボロのビルの中から衣服がボロボロになった一本角の赤鬼カップルが歩いて来た。
その数分前までは命の奪い合いをしていた筈の乱入者の登場にのぞみと真理恵達が身構える中で、青年の姿となって背も延びたが相変わらず童顔の望が彼等の元に歩み寄る。
「良かった、もう身体の調子は良いの?」
「ふん、鬼の生命力を見くびらないで。あの程度の怪我、少しすれば自己再生するから何の問題にもならないわよ!」
剥きになってボロボロの制服姿でそう言い切る男に詩織と呼ばれていた気の強い女の赤鬼に、望は苦笑いを浮かべながら質問の意図を伝える。
「角を折って、彼氏さんに分け与えていたから大丈夫だったのか気になっていた物で」
その言葉を聴いて彼女は一瞬身体をビクンと揺らせて後、言いずらそうにポツポツと話始める。
「大丈夫、例え角が一本無くったって私が赤鬼一族の一人である事には変わりないわ」
そう自分を励ます様におでこの左側にあった赤い角を無くした事を辛そうに言う彼女の様子を見て、鬼にとっての角は人間に取って手足の様な物である事と、象徴的な物でもある事を望達は理解し。
彼女が命を分け与えてまで助けたチャラ男風の颯汰は申し訳なさそうに彼女の肩を抱いて、彼女を擁護する。
「詩織姉、俺は詩織姉が命を掛けて助けてくれた事を絶対に忘れない……。例え周りの奴等が詩織姉が馬鹿にして来たときは、俺が詩織姉を全力で助けるから!!」
「颯汰……」
そんな二人がイチャイチャし出し、皆が生暖かい目で眺め始めていた所で、突然その流れを変える様に彼女達の真後ろに噴水ほどの大きさの円形の魔方陣が展開され。
「きゃあぁぁぁ?!!」
「詩織姉こっちだ!」
その中から大勢の人々が降り立って来たものだから、下にいたカップルに再び悲運が雪崩れ込んできた為に、慌てて回避させられる事となる。
「よし! 位置も目標も予定通り!!」
「ここが……鬼達のいる世界……」
「おー! お兄ちゃん達がいるよ!」
「本当だ!? しかも、のぞみちゃんとお兄ちゃんがまた分裂しているじゃない!? どういう事なの?!」
先人として鬼の地に降り立ったのは狐巫女である秋葉、小春と意識を取り戻し復帰した風香であり。
彼女達は望達の姿を確認した3人は望達の元へと駆け寄って行き、その後ろ姿に詩織達が抗議する。
「ちょっと!! 突然現れたら危ないじゃない!! ぶつかったらどうするのよ!?」
そんな半泣きで、両腕を胸に当てて抗議する詩織を無視するあの様に次々と魔方陣を潜って3人の神主達と少し赤みがかった黒い軍服一式を揃えた姿の少女が降り立つ。
「ほほう……こいつは中々に不安定な妖力で造られた空間ですな」
「確かに、まるでヒビが入った家の様に不安定な空間ですな……」
「ふむふむ……これなら何とかなりそうだな」
そう言って互いの意見を出し合いながら神主達は散策を始め、
「ちょっと、御待ちください神主様?! まだ安全は確保されていませんので、迂闊に出歩かないでください!!!」
彼等の護衛を担当している軍服姿の何処か聞き慣れた声で話す少女が慌てて彼等を押し止めようとしている。
「彼女はもしかして?」
「うん! 助けが欲しいって頼んだら、特別に駆け付けてくれた飛鳥ちゃんだよ!!」
「秋葉姉さんが頼んだら……直ぐに来てくれたの……。やっぱり……姉さんの事……好きなんだね……」
そう言って望にしがみついている秋葉と、にやにやと笑みを浮かべている風香が教えてくれた様に放って置けば好き放題しようとする神主達を護衛しているのは、悪魔召喚者であり今は友人である飛鳥であり。
秋葉と同年代の少女でありながらも、狸族の反乱を押さえ込み無力化するだけの実力と経験を持つ彼女の登場に、望は内心大喜びつつも先程から話していた事を振り替える。
「皆が来てくれて本当に助かるよ。風香は奴等に触られた所は大丈夫?」
「うん……空さんが助けてくれたし……その後に……小春達も来てくれたからね……」
そう言って苦笑いを浮かべている風香を突然望とのぞみが両側から抱き締める。
「きゃぁ……!? 兄さん達何を……」
「良かった、本当に良かった……」
「ううう、風香お姉ちゃんが無事で本当に良かったのです……」
そう言って、心から自分の無事を喜んでくれている二人に風香も穏やかな微笑を浮かべて抱き締め返す。
「私も……兄さん達が分裂したとは言え……無事で本当に良かったよ……」
そんな大勢の仲間達が来てくれた事もあり、孤軍奮闘していた望達が盛り上がる中で、最後の来場者がまだ空中に浮かんでいる魔方陣を潜り抜けて静かに姿を表した。
その登場人物を見て、望達は言葉を失う。
「アルジ殿……御無事デしタカ……? ヨかった……」
そこにいたのは梶田さんと共に病院に先行して潜り込み、遂には望達が発見する事が出来なかった要であり。
カタコトで話す彼女の容姿は以前とは違う変わり果てた物となっており、後ろで結んで綺麗に纏められていた黒髪のポニーテールは枯れたように白く染まっており。
目も虚ろで目の白い部分が灰色に染まり、ボロボロになった服の変わりに与えられたのであろう青いミニスカートと白いセーラー服に身を包んだ彼女がふらふらと望達の元へと歩いて来るものだから、望とのぞみと空は慌てて駆け寄る。
「こんな……こんな事って……!!」
「要ちゃん!!」
彼女を囲むように抱き締めた3人は再び驚かされる。
彼女の身体が中身の無い三角コーンの様に軽いのだ。
(要の中にある物全てが自力で回復できないまでにズタズタにされている……!! 妖力も辛うじて感じられる程度に酷く弱り果てている……)
身体を預ける様に望達に身体を預けている要の身体を自分の妖力を流すことで分析した望は絶望させられる。
(このままだと彼女は確実に死ぬ……!! 何故彼女を連れてきたんだ……!?)
その心の中の葛藤を要は察したのか、弱々しい笑顔を浮かべて小さな声を出す。
「ワタシがコッソリと来たノデス……。もう、ニドト主殿に……会えないかもシレナイト思ったから……」
「馬鹿を言え!! きつ姉達も居たのに何で……!! のぞみ!!」
悲鳴の様な絶叫をあげて、望はのぞみに要を助けて欲しいと願うのだが……。
「やっているのですお父さん!! 要ちゃんの身体に妖力を流しているのです……!! でも、でもっ……!!」
「駄目なのか?!!」
まるで大量の穴の空いたタイヤの様に、のぞみの入れた妖力が身体から漏れているらしく。幾ら注ぎ込んでも要の容態が改善に向かう様子全くなく、3人は必死に要に声をかける事しか出来ない。
「ちくしょう!! 打つ手は無いのか?!」
そう言って叫んでいる望の元に赤鬼の詩織が駆け寄ってきた。
「これは……貴方達では治せないわね……」
「っつ、そんな事は分かっているよ!! じゃあ鬼であるあんたなら何か手を知っているのか?!」
その絶叫に近い望の叫びを受けた詩織は、要を抱き止める為にしゃがんでいる望を見下ろす様に一言言い返した。
「治し様はある。正しその方法は……我が主である酒呑童子様か、敵対している黒鬼達しか知らないわ」
「だったらーー」
「正し!!」
そう言葉を続けようとする望を差し止める様に詩織は割り込み、条件を出す。
「それはお前達が馬鹿な黄鬼達と戦う酒呑童子様に味方するならばのはなーー」
「分かった! その条件を飲む!!」
「しっ!!? ちょっと、そんな簡単に決めて良いの?!!」
思わず聞き返してしまった詩織に望は直ぐ様に答える。
「今は迷っている暇は無いんだ! 時間がおしい!! 直ぐに案内してくれ!!」
「あんたねぇ……」
「良いじゃねーか詩織姉!! 男がダチのために必死こいて頼んでんだ!! 連れていってあげてくれよ?」
「もう、颯汰まで!! 良いわ! あんたがそこまで言うのなら手伝ってあげる、着いてきなさい!!」
そう言って彼女は来たときと同じ様に人一人が通れる程の扉型のワープホールを作成し、無事に通れる事を証明する様に藁で出来た屋根を持つ家が幾つか見える向こうへと颯汰と共に先に行ってしまう。
それを見た望はぐったりとしている要を抱き上げて、皆に視線を送る。
「勝手に決めてしまってごめん!! ただ、要を直ぐに助ける為には彼女が言っている事にすがるしか無いと思うんだ!」
「そうね。仙狐である私であっても解除できない何千にも掛けられた細かい呪いだったからね……。私も同行させて貰うわ、望」
そう言って、先ず名乗りを上げたきつ姉に続くように、一連の流れを見ていた皆も次々と名乗りを上げて行き。
神主達も最初は渋っていたが、望達の事を良く知っている同行していた木下が残り二人の背中を押した事で全員の同行が決まっていく。
「ありがとう……ゴザイマスアルジ……殿……。ワタシ、本当は……」
「生きていたかったんだよね? ……安心して、要は必ず助けるから」
「……ハイ」
弱々しくも微笑んだ要の笑顔に頷く事で答えた望は、皆と共にワープホールのその先に向かっていった。




