#23 遅すぎた速報
全体的にきつ姉達が救援に向かうだけの話になります。そして、書き置きが無くなった為にまた更新が遅れると思います、すいません!
※次回の更新は、明らかに望と空を無理矢理にくっつける話となってしまっていて、大勢の読者の方が読む事を辞める原因となっている「スクウェア・ラブソディ【下】」と「不器用な二人の信頼確認」の改編を予定しています。←改編しました(7/10)
・真理恵の容姿を追加しました。(8/2)
時は望達が病院に突入する数分前の時刻。狐乃街稲荷山神社のある美しい桜が咲き乱れる庭園の一角に移る。
そこでは落ちた桜の花びらを塵取りでとったり、施設の清掃・整備を終えた20人程にもなる清掃着姿の三角頭巾から可愛らしい狐耳と尻尾をピンと伸ばした狐娘達が、汚れた手を洗うために五人まで横に並んで一緒に手を洗う事が出来る手洗い場に列をつくって集まっており。
その中にはこの日が清掃当番であったために望達に同行する事が出来無かった秋葉が、列の真ん中程の位置でソワソワした様子で列の順番を待っていた。
「うー……望お兄ちゃん達今頃病院に着いてる頃かなー。私もついていきたかったな……」
「まーた秋葉の望お兄ちゃん依存症が始まったー」
「大丈夫ですよ秋葉さん。望お兄ちゃんの事だから直ぐに帰ってきますよ」
「もう望お兄さんは私達よりも強くなる程に猛特訓をしていましたし!」
「そうかなー……そうだと良いんだけど……」
思わず思っている事が口に出てしまう程に落ち着きを無くしている秋葉の様子に、周りの狐少女達が苦笑いを浮かべながらフォロー入れるそんな中。
突然秋葉の背後からこっそりと忍び寄る桃色の影が彼女に襲い掛かる。
「お・姉・ちゃ~ん!」
「ひやっ!? つっ冷たい!! もう誰よー、後ろから冷たい手で私の両頬を挟む、いたずらっ子な妹は!」
背後からのささやかなどっきりを仕掛けた犯人を確認するために秋葉は両手で頬を挟まれたまま後ろを振り返ると、そこにいたのは秋葉よりも少し背の低い156㎝程で巫女服姿に身を包み、柔らかい笑顔が印象的なフワフワした髪質の桃色ロングカールの少女が立っていた。
「えへへーおひさしぶり秋お姉ちゃん」
相手の耳を刺激するようなその甘くて柔らかなその声と、姿を見るやいなや、先程までのいたずらされた為に悔しそうだった秋葉の表情は満面な笑みに変わり。訳あって修行に出ていた愛する末っ子の妹である小春との久し振りの再開の喜びの余りに、両手を広げて二人は熱い抱擁を交わす。
「こはちゃんいつ帰ってきてたの?!! 帰ってくるだなんて知らなかったわ」
「今日の朝だよー秋お姉ちゃーん。みんなが驚くと思ってこっそりきちゃいました。はい、おみやげの出雲そばだよー」
「わぁ! おいしそう!! でも小春これ、麺好きのお兄ちゃんに渡すためのおみやげでしょ?」
「おー、バレちゃった。流石はお姉ちゃん」
そんなやり取りをしていた二人であったが、ふと上を見上げると神社の本殿の方が騒がしい事に気づかされる。
「何かあったのかしら?」
「おー? 秋お姉ちゃんは知らないの? 鬼さん達が急に悪い事を始めたんだって、小春が泊めてもらった出雲の神主さん達が怖い顔で話してたよー?」
「ええっ?! 鬼って、あの昔話とかに出てくる鬼?」
「うん、そうだよー。鬼さんが寝ている人の夢の中で暴れるから、朝起きれなくなってしまうんだって」
その説明を受け、秋葉は朝のテレビニュースで特集されていた日本中で突然意識不明になる人が増えたと言う内容と。先日の昼休みに望達との間で話題になった意識不明の同級生を御見舞いに行くと言う話の末に、今日出掛けている望達の事が頭によぎり、秋葉は焦り始める。
「ねえ、こはちゃん。その鬼って、起きている人にも危害を加える事が出来るの?」
「えーとね……確か、おきにいりに選んだ人の意識を鬼さん達が暮らしている異世界に引きずり込むんだけど。その時に鬼さん達と私達の世界を結ぶ人一人分の大きさの“境界”を作るみたいなの。その境界に近付いてしまうと……鬼さんが迎えに来るんだって」
「迎えに来る……? どうやって?」
「うん。たまたま家族が鬼さんに連れていかれてしまった人がいて。寝ているその人の側にいたときに、突然何も無い所に人一人が通れる程の土管の様な穴が生まれて、その穴を不思議そうに見ていたら突然鬼さんの手が出てきて掴まれそうになったみたいだよー。……秋お姉ちゃん?」
その話を聴いた秋葉の顔は顔面蒼白となっており、思わず小春が心配になり駆け寄ろうとするがその前に秋葉が弱々しく声をあげる。
「大変な事になったわ……。望お兄ちゃんと風香が危ない……!!」
「望お兄ちゃんと風香お姉ちゃんが?」
その思わぬ話に小春は思わずキョトンとした表情になっている間に、何やら山の上階層から慌ただしい足音が複数迫って来ている事に秋葉達は気づかされる。
その足音の発生源は神主衣装で息も絶え絶えに走る木下と、その前を必死に走り乱れぎみの巫女服姿のきつ姉であり。二人は慌てた様子で下山してきた様子で、秋葉達がいる道を丁度通過する動きを見せていたため、秋葉は声をかける事にする。
「きつ姉さん! もしかして望お兄ちゃん達に何かあったの?!」
その質問にきつ姉は秋葉達に気付き、正面を通過する前に答えようと早口で説明する。
「さっき望達が、鬼達の縄張りになりつつある病院に入っていく姿がテレビ中継で報道されていたの!! だから今から望達が鬼達に襲われる前に、今から私が助けに行くところよ!!!」
その言葉を残して秋葉達の横を疾風の如く通りすぎるきつ姉であったが、彼女は望の事を心配する余りに焦りすぎていた。
「はあはあはあは……!! ま、待ってくだされ仙狐様……何故御札ではなく、電車で行こうとするのですか……はあはあ……」
「ええっ?! きつ姉またポンコツモードになってるんですか?!」
当たり前だが高齢者である木下がきつ姉に追走出来る筈もなく、息も絶え絶えに項垂れて歩みを止め、動けなくなってしまい。そこに秋葉達が慌てて両側から寄り添う形で木下ほ元へと駆け寄る。
「おー。おじいちゃんおひさしぶりー。大丈夫? 今、楽にしてあげるねー」
「ちょ、ちょ、ちょっと待っておくれ……小春?! 介錯を頼む程には疲れてはーー」
突然、語弊を生む小春の発言に思わず声を上擦らせる木下であったが、その恐怖は直ぐに優しく彼の肩に手を乗せ、治癒の力を小春が発動させたことにより解かれる。
「治癒と活性化のひかりー」
「おおっ! おおおおお!!! 力が、力がみなぎって来るぞ!!!」
その声に合わせる様に肩に置かれた彼女の手が、ピンク色と黄色が混ざった光を放ち始め。
先程まで苦しそうにしていた木下の疲労が取られて次第に良くなる処か、頬のシワが若干薄くなる程の若返り始めると言う細胞レベルの治癒の妖力をさらっと小春が発揮して見せたものだから、周辺でその様子を見ていた他の狐少女達も歓声を上げながら小春達の周辺を囲い混む大騒ぎになってしまう。
「あっ……そういえばきつ姉は……」
「「あっ……」」
ふと皆が冷静になった頃には暴走するきつ姉の姿は影も形も無くなってしまっていた。
「あー……不味いことになった……。夏魅が出払っていて、只でさえ危険な時にこの体たらく……。悠長にしている時間は無いと言うのに……」
20歳ほど若返り、つい浮かれてしまった自分を頭を抱えて攻める木下に、小春が穏やかな口調のまま言葉をかける。
「大丈夫だよ、おじいちゃん。夏魅さんがいなくても私達がいるもん。ね? 秋お姉ちゃん?」
「ええ、その通りよ!! こはちゃん!! 私達も今から望お兄ちゃん達を助けに行きましょう! 良いよね、おじいちゃん?!」
「私たちも力になります!」
「秋葉お姉さん達だけじゃなく、私達だって普段から鍛えていますから大丈夫の筈です!」
秋葉の提案にその周辺に集まってきた狐少女達も賛同し始め。何とか興奮する狐少女達を宥めようと木下も言葉を選びながら落ち着かせようとする。
「いやいや、まてまて皆の者。相手は我が日ノ本を代表する、神狐様と同等の力を持つとされる鬼族達じゃぞ? この前単独でちょっかいを掛けて来ただけの大蛇族とは格が違うんじゃよ!!」
その言葉を聴いて、以前大蛇族との騒動ではきつ姉を含めた狐側がやられたい放題にされた事を思い出した一同は冷静になり、自分達の非力差に悔しさを滲ませる。
それは今朝のニュースで、救援に向かいたい彼女達と同じ思いを持って向かったであろう仙狐の力を引き継いでいて、自分達よりも優秀で経験豊富な筈の望達からの連絡が途絶えている事も既に話題になっていたからであった。
一同に意気消沈し、悔しそうに皆が頭を垂れる中で秋葉が木下の元へと歩みでる。
「神主さんはこれから病院に向かわれるのですよね?」
「ああ。既に日本各地から地域を取り仕切っている神主様達が、一同に集まって対策会議を開く予定となっておるからのう……。まさかお主達まだーー」
顎髭を触りながら、木下が却下を下す前に今度は小春も説得に加わる。
「おじいちゃん。被害を受けた病院の中だけでなく外にも望お兄ちゃんと同じ様な被害を受けている人がいるみたいなの。小春は出雲大社で呪いや、健康を回復させる技を沢山学んできたから役にたてると思うよー。それに、秋お姉ちゃんも力持ちだからきっと皆助かると思うの! どうかなー?」
「ううむ……しかしなあ……」
その提案を受けて唸りをあげる木下。そしてここが正念場とばかりに秋葉が近付き、上目遣いでお願いする。
「お願い神主さん!! 絶対に邪魔はしないし、神主さんの言うこともちゃんと聴くから! 私達を望お兄ちゃん達の所へ連れていって!」
「はあ……本当に良いのだな? これから行こうとする場所に安息の地は無いぞ?」
「はい! お願いします!!」
「おー! 小春も大丈夫だよー!」
「ふふん。中々に良い妹達を持ったもんじゃな望くんは……。あいわかった、今から秋葉と小春の同行を許可しよう。ただし、命の危険が明白になった場合は強制的にお前達を離脱させるからそのつもりでついて来なさい!!」
そう言いながら、木下は一枚のお札を空中に浮かべて発動させる。
「先ずは一番焦っておる狐乙女を連れ戻さんとな……」
やがて朝の通勤ラッシュに巻き込まれてひいひい言っていたきつ姉は彼女が降りる予定であった駅のホームで木下達に発見され、散々木下に御灸を添えられた後、無事に望達が襲撃を受けた病院へと到着する事となる。
ーーーーー◇ーーーーー
「う……うーん。ここはどこだ?」
僕が目を覚ましたその場所はどういう理由かはわからないが、フカフカのベットの上であり。辺りを見渡すとどうにもこの部屋の主が女性であることが人目で解る程に可愛らしい大小様々な動物のぬいぐるみが飾られていたり、可愛らしい絵柄のカーペットやカーテンが窓にかけられた、12畳ほどの小綺麗な洋室であった。
ふと、右に顔を向けると勉強机の上にマフィアな梶田さんが左に、真ん中に春物の服を着た真理恵さんらしき女の子と右側に優しそうなお母さんと思える人物が遊園地の花壇の様な所で写したと思える写真が写真建てに飾られていた。
「もしかしてこの部屋は真理恵さんの部屋なのか……しかし、何で【色】が無いんだろ……」
望がこの部屋で目を覚ました時から気になっている違和感、それは目にする気色に白と黒以外の色が無く。まるで古い映画の世界に自分がいるような……もしくはあの世にいるような……。
そんな不気味さに望が軽く身震いしていた所で、ふと部屋の扉の向こう側から木の階段を昇る時に出るギシギシと言う音が、すこしづつ望がいる部屋へと近付いて来た為に、望は怖くて思わず悲鳴が出そうになる口を両手で塞いで何とか声を出すのを堪えるのだが。
そんなことをしていても状況が好転する訳も無く、遂に足音の主は扉の前でその足音を止めた。
(このままじゃ不味い!! そうだベットの下に隠れよう!)
そう思い、望がベットの下へと隠れた所で、部屋の扉が開けられた。
「妖力は補充したので、そろそろ起きているとは思うのですが……あれ?」
「うーん? 何処に行ってしまったんだろ望さん? 部屋には鍵が掛けられていたから、出てはいないみたいだけど。あれー?」
何処か聞き慣れた少女の声に続いて、自分の手を引いた片言喋りの女性の声に良く似た声で喋る二人組が部屋に入って来た事を望は認識した所で、突然ベットの下に自分以外の存在がいる事をやたらハスキーボイスな男性の声が背後からした事によって気づかされる。
「やあ。どうやら無事に目を覚ます事が出来たようだねぇ、少年くん?」
「のわぁぁぁぁ!!? でっ、でたああ!!?」
望はそのベット下にいた住人の姿を怖くて見ることも出来ず、一目散にベットの外に飛び出すのだが。そこには3人の者達が慌てて飛び出てきた望に驚いた様子で視線を送っている。
「へー。あれだけ魂を塗り替えられたのに無事でいられるなんて。やっぱり日本人はヘンタイって話は本当なんだ」
幼稚園生程の腰まで下げたロングポニーテールと殆ど目を瞑っているように見える少女がベットの上から見下ろすようにプルプルしている望の印象を語り、
「良かった! 女の子の魂が大丈夫だったから問題は無いと思っていたけど、無事に目を覚ましてくれて良かったー」
写真の中で満面の笑顔を見せていた真理恵をそのまま白黒でコピーした化のようなTシャツにジーパンと言うラフな容姿と声を持つが、何故か目元が見えない用に真っ黒のレンズが使われた【2016】と言う形のフレームの眼鏡をかけた女性。
そして、
「あの……おはようなのです。僕」
少女の姿で何故かメイド服を着た自分がいた。




