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#10 由利原学園/紅の救世主

ジャンルを恋愛から、ファンタジーに変更してたがが外れたために散歩に出掛ける前の犬の様にはしゃぎながら書いてしまいました。


※パイモンの紹介文を修正しました(12/10)

2週間と言う長い眠りから目覚めたのぞみが目覚めて最初にお願いして訪れたのは、由利原学園が誇る300人程の生徒達が集い会う憩いの場であるログハウス型のおしゃれなカフェレストランであった。


「あの大きなログハウスが私達が何時も食事をするために使わせて貰っている食堂だよ」

「わあー綺麗なお店なのです! ふたりとも早く早くなのです!!」

「ちょっとー! そんなに急いだら危ないよ、のぞみちゃん!?」

「ふふふ、はしゃいでいる望さんも可愛いな……」

「空さん! 鼻血が出てるよ、鼻血!! はい、ティッシュ」

「ありがとう秋葉ちゃん、うん?」


秋葉からポケットティッシュを受けとり、興奮のし過ぎで出た鼻血を拭き取りながら空は三人で共に歩いて来た並木道から強い視線を感じ思わず振り返る。

するとそこには目の赤い真っ黒の鳩が一羽木にとまりながら空達を監視するかのように見詰めていた。

「なんだあの黒い鳩は……?」

「空さん?」

「あっ、いや気にしないで。さあお店に入ろうか」


まるで視線から逃れる様にカフェレストランへと入る空を見詰めながら、黒い鳩は信じられない事にしゃがれた声で言葉を放つ。

『ほう、我輩の気配に気付くとはなかなかに有望なお嬢さんだ。油断するなよ、(あるじ)よ……』


そう言って黒い鳩は翼を広げて空へと飛翔して行った。



その大きさは体育館一個分程の広い面積を持ち、生徒達が本日のメニューが書かれたマジックボードが紐で掛けられている二枚扉に木の葉のマークシールがつけられた自動ドアを潜ると、なんという事でしょう!!

太陽光を遮断しないように作られたワッフルの様に木の板で作られた天井と、カーテンも用意された外壁は透明のガラス張りとなっており。まるで森の中にいるような心地好い木漏れ日を感じさせる柔らかな環境をつくりだす匠の業が光っています。


また、レストラン内には天井とベニア板で出来た床を支える長さ6メートル半、横幅が消火器程の木の柱が数本立っており、生徒達が食事をとるための座席は8人掛けの長い長方形のテーブル席と四人がけの四角形の席。そしてカウンタータイプの一人掛けの席も完備されている。


そんな良く整った初めてのレストランカフェに興奮を抑えきれない狐組の二人はあちこちをながめまわしている。

「店内も綺麗ですねぇ。どれだけ手間がかかってるんだろ」

「空お姉ちゃん! 空お姉ちゃん!! この機械は何ですか?」


そして入口の左側には商品を選ぶ為の食券販売機2台横に並べて設置されており、のぞみは機械に指を指しながら空に顔だけ向けながら無邪気に訪ねる。


「ん、これは食券販売機といってここで自分が食べたいと思ったメニューを選んで買うんだよ?」

食券販売機と言うワードを聴いた処でのぞみの肩がびくっと震え、さき程まではしゃいでいた幼い顔付きから凛々しい表情になっていく。


「あー……食券販売機か、僕も良く使った……な?」

「望……さん?」


望の調子が替わった事を感じた空は慌てて望に記憶が戻ったのかと溢れる期待感を胸に望の顔を見詰め直すのだが、

「あれ? のぞみ何してたんだろ……」

「今確かに望さんの人格が戻っていた。もしかしたら望さんの記憶を刺激すればそれが鍵となって治るかも知れない……。 秋葉ちゃん あの……ね?」


「だからいってんだろ?! ラーメンは醤油が王道なんだって!!」

「何よ!! 味噌ラーメンのコクのある深い味わいと、満足感だって負けていないんだから!!」


その重要な発見をした空は同じ悩みを抱えている秋葉と話し合おうとするが、秋葉は赤いジャージと黒のスパッツを履いた小柄で、赤茶色の胸まである三日月型で右向きのロングサイドテールを黒の髪止めで巻いたつり目な気が強い少女とラーメンバトルを繰り広げていた。


「何を!! 味噌なんか入れたら他の素材の味まで味噌が飲み込んでしまって、ラーメンに乗せられた具材の味が台無しになっちまうだろ?!」

「ふん! それは安物の味噌しか食べたことがない人の言う言い分だわ!! いいわ!! 今ここでどちらのラーメンが美味しいか勝負と行こうじゃない!!」

「上等だ!! 舌が味噌漬けになったあんたに味が解るかとは思わないけれどな!!」


「「店長!! 味噌/醤油ラーメン一つ!!!」」

声のタイミングだけでなく、御互いに背中合わせになりながらオーダーを食券販売機の右側に見える食器の返却口へと向かって左右対照に指を突き出してバッチリと決めて魅せる二人であったが。返却口の中の方からは情熱的な彼女とは正反対な気だるそうなおじさんがアクビをしながら顔をだした。


「あいよー……今度から注文は食券販売機で頼むよ御嬢さん達?」

「あっ、ごめんなさい」

「わりぃ親父さん!」


そんな仲が悪いと言うよりも、似た者同士な二人の姿に思わずのぞみは笑みをこぼす。

「お姉ちゃん達、スゴく仲よくなれそうなのです」

「そうだね。あれだけ落ち込んでいた秋葉ちゃんがあんなに楽しそうにしてるし、赤毛の彼女も楽しそう」

「うん!! のぞみも交ぜてもらうのです!! 空お姉ちゃんも一緒に行くのです!!お姉ちゃん達ー! 塩ラーメンは駄目なのですかー?」

「あっ、ちょっとのぞみちゃん!?」


かくしてめでたく由利原学園で出来た友人第一号である彼女を囲んで、賑やかな夕食会が始まり。他の由利原学園の生徒達が夕食を食べに集まって来たこともあり、食堂は一気に賑やかになっていく。




「ふーん……12月ギリギリに学園見学か、もうとっくに募集が締め切られてると思っていたが」

「あはは。まあ、色々とわけがあってね……」

「ハンバーグ~♪ ハンバーグ~♪」

「のぞみちゃん、そんなにハシャイだら他のみんなの迷惑になっちゃうよ?」


食券も買い終わり、料理を待つだけとなった四人は他の生徒達の邪魔にならない様に四人掛けの席に座り、空とのぞみと秋葉と赤茶色の髪の少女とのグループに別れて(くつろ)ぎながら話し合っていた。


勿論、生徒会で働く空に他の生徒達の注目が集まった事もあり、美少女揃いの席にはレストラン中の生徒達の熱い視線が注がれる事となる。

「見てみてあの小さい子! 小学生みたいだけど新入生なのかな!?」

「空さんの妹さんが来年入学してくるとか? でも流石に幼すぎるよね」

「……空姉様今日も素敵、合体したい」

「むっ、運動神経が良さそうだなあの夕焼けの様な髪の子。我が陸上部に欲しいな……」


そんな呟きを聞き流しながら四人の会話は続けられる。

「おっと、そう言えば自己紹介がまだだった、私は1-Bの葛ノ葉 飛鳥【くずのは あすか】」

「私は狐乃街から来た山下秋葉よ、改めてよろしくね飛鳥!」

「良い名前だね秋葉、覚えておくよ。ところで生徒会で有名な空は解るけどそこのおちびさんは誰なんだ? 飛び級にしては若すぎるけど……」


出されたお冷やを飲みほしながら、興味深げに訪ねる飛鳥の質問に思わず冷や汗を流す一堂であったが、訪ねられた本人が明るく答えて行く。


「私は佐々木のぞみだよ飛鳥お姉ちゃん!! 秋葉お姉ちゃんと同じ狐乃街から来たのです!!」

「ふーん……失礼だけど、あんた年齢は?」

「いやっ! 飛鳥それは……」


ボロが出たら不味いと秋葉が間に入ろうとするが、

「はい、のぞみは今年で18才になるのです! 車だって運転出来るのですよ?」

「そうだったんだ、へー……」

「あっ、これは違うの飛鳥!! 実は……」


のぞみが思いっきり誤解される様な爆弾発言をしてしまった為に飛鳥だけでなく、周りでその話を聴いていた生徒達が抱くのぞみに対するイメージが【ぶりっこ女】と言うガタガタのマイナスイメージとなり。彼女ののぞみに対する視線が一気に冷ややかな物と変わってしまったのを秋葉は感じ取り、大好きなお兄ちゃんの名誉回復の為に話を繋げようとするがさらなる乱入者に邪魔をされてしまう。


「思い出した! 貴方、生徒会の人達が御守りを買いにいった時に空さんを誘拐して行った狐娘の子でしょう!? 新聞とニュースで見た写真や動画と同じだもん!!」

「あっ本当だ!!」

「あれ、でも狐の耳や尻尾ないよ?」

「馬鹿ね、あれはコスプレに決まってるでしょ? 人間に狐の耳や尻尾が本当にある訳ないじゃない」


次々と集まる野次馬に飲まれる四人は困り顔になりながら、何とか説明を終える頃に四人がそれぞれ注文した品物をヒラヒラのメイド服姿のウェイトレスの少女が運んで来てくれた。


「御待たせしました、味噌ラーメンと醤油ラーメン、ハンバーグセットに焼き(さけ)定食でよろしいですね?」

「はいその通りです、ありがとうございます」

空の返事を受けたおっとりとした優しそうなウェイトレスさんはほっとした笑顔を見せた後、御盆に乗せたメニューをそれぞれ注文した人へと配り終えて、会釈してから去って行った。


「さて、見せて貰おうかしら……由利原学園の味噌ラーメンの味を!! 頂きまーす!!」


目を輝かせながら二枚のチャーシューやメンマと刻みネギ、煮卵とメンマが浮かぶ湯気と共に食欲をそそる味噌の良い匂いがする熱々の味噌ラーメンに橋を伸ばした秋葉は、食堂のレストランでありながら、行列が出来る程に美味しいラーメンの味に驚かされる。


「何この味噌ラーメン?! 今まで食べたどの味噌ラーメンよりコクがあって、具材との味のバランスも完璧じゃない!! ねえ、飛鳥も食べてみてよ!!」

「ふざけんな何で私まで……。私は醤油ラーメンさえあれば味噌なんていらないよ」

「いいからいいから! 一口でいいから食べてみてよ。はい、あーん?」


そういって、いたずらっ子の笑顔を浮かべて、レンゲの中に麺とスープを入れて飛鳥に突き出す秋葉に、顔を少し赤らめ照れながら飛鳥も対応する。


「おいバカ私はいらないって……あーん……もぐぐっ」

「どう? どうどう飛鳥?」

「あっ美味しい……。うっ、何にやにや見てるんだよ秋葉!」

「ふふふ、どうやら味噌の魅力に気付いてしまったようだね飛鳥! もう戻れないよ?」


そういって勝利を確信した秋葉は八重歯が見える程の満面の笑みで、飛鳥をいじるが彼女もやられっぱなしでは終われない。すかさず秋葉が味噌ラーメンを食べさせて来たように、レンゲにミニ醤油ラーメンを作って見せる。

「くっ、負けっぱなしは気に食わねぇおまえも道ずれだ! そらっ!」

「もぐぅ!?」

「さあどうだ秋葉? 醤油ラーメンの味は!!」

「もぐもぐ……美味しい!!」

「あはははは!! そうだろう秋葉? 醤油ラーメンも味噌に劣らず美味しいだろ!!」


そんなラーメンで意気投合した二人がより一層仲良くなって行く姿を微笑ましく空は見詰めつつ、熱々のグリル用の小さな鉄板に乗せられたのぞみのハンバーグを食べやすい一口サイズに切り分けて、息を吹き掛けてから目を輝かせるのぞみの口へと運んでいた。


「はい、のぞみちゃんもあーんして?」

「あーん! う~ん、凄く美味しいよ空お姉ちゃん!」

「良かった」

「お姉ちゃんにもあーんするね?」

「えへぇ!? のぞみちゃんが私に?!……はっ!?」


思わぬ御褒美に顔を真っ赤にし、デレデレになっていた空がふと視線を正面に向けるとラーメンガールズ達がにやにやしながら空を見詰めていた。


「へぇ、あのクールな林原空様がこんな顔するんだ。これは良いものが見れたかもな」

「いや、これは違うんだ……」

「そう言いつつも涎出てますよ空さん?」

「うぅぅ……仕方ないだろ、これは生理的な物なんだから!」


そんなやり取りを一通り終えた後、仲良くなった飛鳥からのぞみ達はある提案を受ける。


「良かったらお風呂に行かないか? 丁度今の時間だと皆晩御飯を食べに行くから人がすいてるんだ」

「良いね飛鳥! ねえ良いでしょう空さん?」

「うーん……確かに汗もかいたし時間も良いけど……」


普通なら別に気にならない、良い提案なのだが。空は何故か飛鳥の発言に引っ掛かりを感じた。

(……何故かな、彼女は何かを狙って私達をお風呂へと導こうとしているような)


その違和感を感じながら、空がふと飛鳥の表情を見てみると何故か彼女は真剣な表情であり、彼女の視線を辿って見るとお風呂と聴いて天使欄間(てんしんらんまん)にはしゃぐのぞみに向けられている事に気付かされる。

(……彼女は幼児化している望さんの事を嫌がっていたけど、今の彼女の視線からは嫌悪感は感じられない。じゃあ何故あんな鋭い視線を送っているの?)


そんな警戒する空の感情を読み取ったのか、のぞみを見詰めていた飛鳥は目をつむり空に呼び掛ける。

「……そんなに警戒しなくても良いじゃないか、林原。単純に秋葉達にこれから生活する学園を紹介したいだけさ。のぞみもお風呂に入りたいでしょ?」

「うん! のぞみお風呂大好きなのです!!」

「なら問題はないね、着替えは風呂場で貸し出してくれるから心配しなくて良いからさ?」


そういっておどけて見せる飛鳥に連れられて、食事を終えたのぞみ達は食べ終えた食器を銀のトレイに載せて返却口に返してから、レストランカフェを出て歩きながら話をより積めていく事になる。


既に時刻は夕日が殆ど沈み薄暗くなる5時半を回っており、一同は風呂場へと続く人気が無いコンクリートで舗装された四斜線程に広い紅葉が綺麗に下からライトアップされた並木道を通っていき。空が怪しんだ空気を出している為に、はしゃぐのぞみ以外はピリピリとした空気が流れていた。


「ねえ、空さん。飛鳥は何も悪いことは考えていないよ? 飛鳥は口は悪いけど相手を見下したり、本気で傷付けたいと考える人じゃないもん!!」

その純粋なフォローを聴いて、先程までは空と心理戦を張っていた飛鳥は顔を真っ赤にして秋葉に向き直る。


「ぶっ! 突然何を恥ずかしいこと言い出すのよあんたは?!」

「だって飛鳥は何も悪いこと思って無いんだもん!! ただ純粋に私達を歓迎したいと提案してくれたんでしょ?」

「それは……」


秋葉は新たな地で出来た友人を必死に庇おうとするのだが、何故か飛鳥は複雑な表情で言い淀む。その沈黙に流石の秋葉にも違和感が生まれ、彼女に向き直る。

そこには自分の事を純粋に信頼してくれた秋葉に複雑な表情で見詰めながら言い淀む飛鳥がいる。

「飛鳥……?」

「ごめんね秋葉……私は仕事を依頼されて意図的にあんた達に接触した悪魔召喚土件、退魔師を営んでいる者だ」


その聞き慣れないと言うより、フィクションの世界で語られる職業名に呆気に取られる空であったが、ふと希望がよぎる。

「もしかして仙狐さんが依頼主で、望さんを苦しめている原因を飛鳥さんが取り除きに来てくれたの……?」

「そうだったの飛鳥!?」


その希望的観測を語る空達の希望を打ち砕く様に、空からしわがれた男性の声が響き渡る。

『お嬢さん達には残念だが、答えはNOだよ』

「ハルファス! 何時私が出てきて良いっていった?」

『すまないな主よ、しかし私の姿を見て貰う方が主の話に信憑性がたつと思ってね』


そう言いながら飛鳥の右肩に上空から降りつつ見事に着地して見せたのは、空がレストランに入る前に見た黒い鳩であり。空達は普通に言葉を喋り飛鳥を主と仰ぐハルファスの姿を見させられて、彼の発言を裏付けるように飛鳥の話を信じざるをおえなくなる。


「全く、お父さんと同じでお前はお節介な召還魔だな……」

『それが私に与えられた使命でもありますから、御了承ください。さて、主。彼等に我々のお目的をお教えください。主が召還土である事は納得して頂けたみたいですから』


その言葉を聴いて、一呼吸してから飛鳥はのぞみ達を守るリーダー格である空に自らの使命を打ち明ける。


「私があんたたちの前に現れたのは、日本処か世界すら破滅させてしまうかもしれない仙狐の力を受け継いでおきながら、この世界を破滅させようと考えている奴等に傀儡にされかけている“佐々木望”を確保するためだ。勿論、それが不可能であるならば……」


飛鳥は上着として着ている赤いジャージのジッパーを下ろして行く、すると中には白の体操着と刑事ドラマであるような、脇に納めるタイプの銃が納められたホルスターがあらわになる。


「生死は問わないと依頼されている……」

「そんな……嘘でしょ飛鳥? 飛鳥が望お兄ちゃんを襲う刺客だなんて嘘だよね?」

「秋葉……すまない……。これが私の仕事なんだ。私に佐々木望を明け渡して欲しい、決して乱暴はしないと約束する」


その御決まりの台詞を聴かされた空は、望を守るために冷静に追求する。

「貴方達に望さんを引き渡しても望さんが無事でいられる保証もないし、貴方が本物の退魔師であるならば望さんを苦しめている物を取り払う事は出来ないの?」


その質問に目を丸くさせた飛鳥は思わず思考に入る。

(確かに……最近は修行のお陰である程度の悪魔や、呪いならば取り去る事は出来る様にはなって来たけど――うわわ?!)


そんな考え事にふけっていた飛鳥が視線を正面に戻してみると、目を輝かせる秋葉の顔がキスしそうなぐらいの至近距離にあったために思わず小さな歓声をあげてしまう。


「出来るんだね飛鳥!? 望お兄ちゃんを元に戻す方法があるんだね!?」

そんな思わぬ助けに出くわした秋葉からすれば、飛鳥は海で遭難した人を助ける救助船に巡り会えた様なものであり。このチャンスを逃してなるものかと飛鳥にしがみついていた。


そんな彼女の行動に実は人見知りな飛鳥は顔を真っ赤にさせながら、なんとか落ち着かせようと必死になるが。

「おおおお、落ち着け秋葉!! まだそうと決まった訳じゃあ――」

『そんなに慌てずとも呪いを(はら)う事ぐらい出来るではないか主よ。悪魔である我々を従えているくらいならば簡単ではないか? くくっ』

「下手に希望を持たせる様に煽らないでよハルファス!! 今回は大蛇と仙狐の力を同時に処理しないと行けなくて、そんな危険なブラックボックスに考えなしに触れたら我が身処か、お前たちまで被害を被る事になるだろう!!」


『随分と私達の事も思ってくれていたのですね、マスター。私はとても嬉しいです』

『へ~マスターの好きな子ってこう言うタイプだったのね……覚えたわ』

『ドウデモイイガ、メシハマダカ御主人!!』


そんなイタズラ半分な使い魔に怒声を飛ばす飛鳥であったが、彼女の心配を吹き飛ばす為にか三体の彼女に従う召還魔が声をあげたかと思うと、彼女のペッタンコの胸を中心に淡く紅い光が生まれ、そこから流れ星の様に絞り出された三つの光が地上に生まれおち。


その光がそれぞれ彼女に使える召還魔へと姿を変えていく。

『『グウォォォ!!! アノ木ノイエカラ、ウマイ肉ノニオイガスルゾマスター!!!』』


まず初めに現れたのは2頭の首と頭を持つ子牛程の大きさの黒い双頭の犬であるオルトロスであり、(たてがみ)一本一本と尻尾が蛇になっている。彼はギリシャ神話に登場する頭が三つあるケルベロスの弟であり、ヘラクレスに「おまえの守ってる牛が欲しいから棍棒でぼこるわ」とボコボコにされた悲しい召還魔である。


『あらあら、相変わらず犬ッコロはやかましいわねマスター』

艶かしく、人の心を誘惑するだけに聴こえる麗しい声を出す2番目の召還魔は相手の理想の姿に変貌して男性の心を誘惑し、無理矢理に性行為をする事で自らの悪魔の子を産むサキュバスであり、今の彼女は背中にコウモリの様な二枚羽根とお尻からは黒く先端がハート型の尻尾を生やしていて、やたらと布が少ない水着を着た秋葉の姿で立っていた。


「あわわわわ、サキュバス何できわどい水着姿の秋葉になってんのよー!!?」

『ふふっ、私の目標はあらゆる者を惚れさせる事だとこのまえ説明しましたよねマスター?』

「だから何で秋葉の姿で――」

『だってマスター、彼女の事を異性の対象として観ていたでは――』

「ももも戻りなさいサキュバス!!!」

『きゃ~マスターのいけずぅ~』


思わぬ暴露をされて、慌ててサキュバスを自らの身体へと魔力として戻すが目の前には話題に挙げられた秋葉が顔を真っ赤にして自らを見詰めている事に飛鳥は気付かされる。


「あのー……飛鳥さっきの話は……」

「秋葉は何も聴いていなかった!」

「いやでも、私を異性として観ていたって……」


そんな不満げに飛鳥に詰め寄る秋葉に、飛鳥は両手を秋葉の肩にバシッと置いて顔色が赤いのか青いのか解らない顔色で詰め寄る。

「イ・イ・ネ?」

「アッハイ! ワカリマシタ!!」

『ふふふ、こんなに楽しそうなマスターを初めて見ました』

「だれ?」

背後から穏やかな美しい少女の声を聴いた秋葉が後ろを振り返ると、ひとこぶラクダにまたがった美少女の顔を持ちながら身体は少年の姿であり、王冠を被った男の娘がたたずんでいた。


『申し遅れました、私は飛鳥様の召還魔であるパイモンと申します。秋葉さん、これからもマスターと仲良くしてあげてくださいね?』

「勿論です! こちらこそよろしくお願いしますねパイモンさん」


そう言ってラクダの上に座る妖精の様なヒラヒラの白いワンピースを着た金髪のショートヘアーのパイモンと秋葉がにこやかに握手を交わし終えた後、飛鳥は改めて相談役のパイモンに尋ねてみる。

「ふう……。さてと……パイモン。今回も訪ねたい事があるんだけど、いい?」

『勿論ですマイマスター。何なりとお聴きくださいませ』


そう言って微笑みながら答えてくれるパイモンに感謝しつつ、これからの事で飛鳥は相談を始める。

「ありがとうパイモン。実はね……」


パイモンは召還者にあらゆる知識と従える力を与えると伝えると言われている召還魔であるため、大体の問題は解決する能力を持っている。なので何時も彼女(?)に頼っている飛鳥は彼女に望が救われる為の方法を聞き出す事にするのだが、彼女からの提案は斜め上を行くものであった。


『望さんに掛けられている呪縛を取ることは可能ですよ。ただ、条件があります』

「「「条件?」」」


思わず聞き返す空と秋葉と飛鳥に妖精の様な男の娘はとんでもない事を言い出す。


『秋葉さんがマスターの従順な(しもべ)として仕える事です』

「「「え……?」」」

余りのぶっ飛んだ要求に辺りは数秒間静まり返り、自然に皆から出た言葉は一言だけしかだせなかった。





飛鳥「秋葉は私の母になってくれるかも知れない女性だったんだ!!」

望「お母さん……? 秋葉が……」


こんな感じで宇宙から降ってくる惑星を押し返しながら二人が罵り会う最終回が浮かんでしまった礼状と申します。

今回の話から何度も前書き等で書かせて頂いている様に、狐婿は恋愛から現実では起こり得ない事が起きると言う世界観のためファンタジーにジャンルを変更させて頂きました。


冷静に話の作りを考えたら、思いっきりファンタジー作品だったんですよね。特に第2章からは思いっきりその特色が隠しきれなくなって来たと言うより、私自身書いていて違和感と矛盾を感じていました。


今章からそのリミッターを完全に解除し、思いっきりアクセルを踏み込んだ結果。狸族や、主人公の精神崩壊、悪魔召還師の飛鳥の登場等。今まで甘酸っぱい望と空の恋愛を描いていたのですが、突然和食から味の濃い中華料理に変えられた様な全く違う中二展開に突入してしまい。


「可愛い狐っ子を楽しめると思っていたら、またこんな作品かよ……」と感じられた読者の方はすいません。

基本的に各章事に様々な作風に挑戦したいと私は考えていまして、今回書かせて頂いている入学編は中二展開が続き。活動報告に書かせて頂いている予告編の様にまた違う様々な話の展開を考えていますのでよろしければお付き合いして頂ければ嬉しく思います。


最後にいつも読んでくださっている読者の皆様、ジャンルが変わりたまたま見かけて読んでくださった皆様。最後までお付き合いくださりありがとうございました!!


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