綺麗な貝がら みんな何とかして生きている
綺麗な貝がら
貝がらを拾い集めて
綺麗なものだけを
選ぶように
捨ててしまった
ありふれた言葉
あるいは
手から零れていく
俗で在る故に
生きている言葉
だからわたしは
いつまでも
歯を食いしばることは
出来なくて
嵐に投げ出された
風船のような
頼りなさで
それでも
まだ終わりたくないと
濡れたアスファルトを
踏んでいる
みんな何とかして生きている
群衆の中の
一人だけの白のような
暗い森の中の
独り言もない石のような
豪雨の中の
光り輝く雷のような
勇気を
水切り石にして
流れる大きな川へと投げる
何度も何度も弾けている
誰にも触れさせない
俊敏な猫のような
空へ一筋に伸びる
若葉のような
嘴よりも鋭く光る
猛禽類の瞳のような
誇りを
黒い雨傘にして
巨大な滝の下へと差す
何度も何度も耐えている
遠い星の最初の光たちを
濃い緑色の瓶に集めたような
海の始まりの記憶を
ちいさな桜貝に閉じ込めたような
わたしたちの先祖たちの声を
わたしたちの中に求めるような
眠りを
ランプの灯として
暗やみの洞窟を歩いている
先を知らず歩いている
お読み頂いてありがとうございます。