表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
深窓のキミ  作者: のど飴
2/2

中編


「………姉さんは普通の女の人だよ。ただ、人より少し…身体が弱いだけで」


「こう…や?」


「僕には…それでも姉さんが望む"普通"の生活を与える事ができない…」



そっと静かに握られた手は、少しだけ痛くて。

だけど、伝わってくるその熱は確かに優しくて…


「僕が…変わりになれたらよかったのに…ごめんっ…姉さん!」



…弟の悲痛な叫びが静寂な保健室に響きわたった。

まるで、自分自身を責めているようなその言葉は…私の心に重く突き刺ささる。


―――幸夜を、傷つけてしまった。



あなたは何も悪くないのに。

謝る必要なんて全然ないのに…

私があんな事をいったから……

……いや、違う。



幸夜が自分を責めると分かってたのに、私はあの言葉を吐き出したんだ……。


「………ははっ、あはは…」


「…ねぇ…さん?」



――あぁ…やめて幸夜。

そんな瞳で私を見るのは……


あの時のお母さんと同じ顔してるよ…



そして、何とも言えない虚しさの中、私は深い闇へ誘う意識に身体をあずけた――。






―――これは、祖母の口から偶然聞いた事だ。


生まれてすぐ、私の身体は人よりも脆く壊れやすいと知った父は、この言葉を放ったという。


"失敗したのか"…と。


その言葉の真偽は分からないけれど、多分本当の事……



なんで、言いつけをやぶって外に出たの?


ユキちゃんが、ね

あそぼって、いってくれて…だから…


あなたは!人よりも身体が弱いの!

太陽をあびるだけで倒れるのよ!?

なのに、外で遊ぶなんてっ…!


ご、ごめ…ん、なさい…

ごめんなさいママ…


なんでママの言いつけを守れないの!?

ママを困らせたいの!?

そんなにママが嫌いなの!?



私が外に出ると、母はよく癇癪をおこした。

最初は私の身体を案じて言ってくれてる事だと思って、言いつけを守れなかった自分を責めた。







………あの言葉を、聞くまでは。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ