前編
あぁ、神様……どうしてこうも人は不公平にできてるんですか。
彼と私は同じ父と母から出来た子供なのに、なんでこんなに………――。
「…さん。姉さん、おきて」
「ん……こう…や?」
「うん、そうだよ」
ぼやけた視界に映る人物に、確認のため名前を呼ぶと彼は嬉しそうに頬を緩ませた。
白い…天井?…てことはここは保健室か。
彼の骨ばった手のひらがゆっくりと私の額に触れる。
――…冷たくて気持ちいい。
確か私……また教室で倒れたんだっけ。
授業中に倒れるなんて、これで何度目だろうか………この身体はどこまで脆弱なんだ。
…小さい頃から私は脆く、病弱だった。
少し走っただけで貧血や喘息を起こすくらいだ。
それは高校生になった今でも変わらない…
遅刻、早退、欠席なんて当たり前になってきている。
「姉さん大丈夫?熱もあるみたいだし…今日は早退しよう」
「っ…いや!まだ大丈夫よ!私はまだ帰らない!」
「姉さん……」
幸夜が心配して言ってくれてる事なのは分かる。
こんな顔をさせたいわけでも、困らせたいわけでもない……でも…だけど……――。
「………ねぇ幸夜、私は"普通"には過ごせないのかな…」
…この先も、ずっとこうやって……外の景色をガラス越しに見てるだけなの?
アスファルトを蹴って、心地のいい風を身体に受けながら、白昼の太陽を浴びて走ることさえも叶わないの…?
私は、ずっと……成人しても…結婚をしても、おばあちゃんになっても!!
閉鎖された四角い箱庭のベッドで、私は私自身の身体に飼い殺されていくのかな……。