3月
「いやー。僕も来年の今頃には卒業かぁ」
「先輩らしくないネガティブ発言ですね」
「後輩ちゃんは僕がいなくなってもこの同好会続けてくれる?」
「続けませんよ。だって一人じゃないですか」
「……えへへー」
「何ですか。急ににやにやと笑い出して…」
「だってぇ?続けないってことは僕以外の人を入部させない、僕以外の人とは一緒に話したくないってことでしょ?」
「発想が偏り過ぎですよ」
「じゃあ、何で?」
「そもそも私はこの同好会に好んで入ってるのではありませんから。どっかの黄色い馬鹿に入れられただけですからね」
「黄色い馬鹿…どこの猿だろう?」
「そこの貴方ですよ」
「僕のどこら辺が黄色いのさー」
「それを本気で聞いているとしたら貴方は気が狂っているとしか思えません。取り合えず鏡を見直してから会話を続けましょう」
「えー、僕は黄色くなんてないけどなーって、本当だ!?」
「気は狂ってないようですね」
「僕の頭がプリン色になってる…いつの間に!?」
「私とのはじめましての時からです。だから、私は貴方のことをチャラついた野郎だと表現したではないですか」
「そんな心外な評価を受けたっけ?」
「あら、言いましたよ?」
「……うむぅ」
「先輩の小さい脳ミソで考えても無駄です」
「閑話きゅーだい」
「恐らく先輩は閑話休題の意味を理解してないと思います」
「そんなのいつものことだろ!」
「決め顔は鏡の中だけにして下さい」
「えー。決め顔は好きな人にしか見せないポリスィーなのにぃ」
「ぶぅっとむくれたって許しません、この腐れチャラ男にも属せない無能な塵虫が」
「あれ!僕、そんなに罵られること言ったの!?ただ好きだって伝えただけなのに!」
「そうやって簡単に好き好きと発言すると好きの重要度だけじゃなくて、先輩の価値までなくなりますよ。まあ、別に私の知ったことではありません」
「好きってそんなにダメなことなの!?」
「先輩に限り使用不可となっております」
「悪徳商業みたいな手口だよ…」
「騙された、みたいな顔は止めて下さい。何も騙してませんし迷惑もかけてるつもりはありません」
「ま、そうだよね。後輩ちゃんがここにいてくれてるってだけで僕は癒されてるから迷惑なんてしてない…むしろ、感謝だ」
「はぁ」
「何喘いでるの。やっらしぃー」
「思考回路がピンク色な先輩といると調子が狂います」
「そのまま僕の色香に染まって狂えば良いんだ」
「ヤンデレみたいな言葉は先輩に似合いません」
「えー。新しいキャラ開発出来るかと思ってたのにぃ」
「狙ってたんですか」
「もちのろん」
「ほんっとうに、先輩といると疲れます。普段の私はこんなに会話しないんですからね?」
「うん。知ってる」
「は?」
「だから、この同好会に入れたみたいな感じだし。まあ、本当の理由は違うけど」
「先輩は分からない人ですね。一体いつから私のことを知っていたのか聞きたくもありませんよ」
「そう言いつつも嬉しいくせにぃー」
「誠に悔しいですが…はい。嬉しいかもしれません」
「え?」
「こうやって会話することってなかったですから…って、先輩の顔から蒸気が出てますよ!?」
「え?」
「わっ、先輩の頬熱いです。何か変な物でも食べました?」
「え?」
「先輩。さっきから同じことしか言ってないの、気がついてます?」
「え?」
「先輩が狂った時の対処法は確か…」
「はっ!?お花畑が見えたよ!」
「それは良かったです。やっぱり殴るのが一番なんですね」
「ん?」
「こっちの話です」
「えっと、何の話してたっけ?」
「もう定時を過ぎたから帰ろうって話です。はい。先輩も床に這いつくばってないで荷物を持って下さい」
「うーん。記憶がないうちに倒れたのかな?あと、右の頬が異常に痛い気が…」
「ぶつぶつ言ってないで…ほら、恒例の」
「ん?」
「『またねー』って、言わないんですか?」
「あっ、ああ!覚えててくれたの!?嬉しいから今日はウルトラハッピーまたねー!だよ!」
「先輩の基準は分かりませんが、それではお先に」
「ウルトラハッピーまたねー!」