2月
「先輩が話す前に言いますが。本日2月3日は節分です。つまり1年の節目なので豆を撒いて鬼を追い出そうという魂胆なのです。理解出来ますか?だから鬼が豆を持って『鬼は外、福は内』なんて言うのは有り得ないのです。はい。分かったらその豆を下ろしなさい」
「後輩ちゃんとは知り合って日は浅いのに僕のことをよく知ってるねー」
「感心してないで豆を置いたらどうですか」
「いやはや。あっぱれ。って、僕は今鬼のコスプレも何もしていない制服のままなのに鬼って?」
「日頃の積もりに積もったストレスを晴らします!!」
「痛い痛い痛い痛い痛いよ、痛いよぉ!!?」
「ふう。これで少しはすっきりしました。私はあまり年中行事を重んじないのですが豆まきは別です」
「うわぁ。これまでにない位の素晴らしい後輩ちゃんの笑顔。喜べば良いのか、怒れば良いのか分からないよ」
「しかし楽しかったのは良いのですが、豆が飛んでいってしまいましたね。どうしてくれるんですか」
「ええ!?何で僕が悪いみたいな顔してるの!?今回に限っては僕は悪くないから!」
「……はぁ。先輩は本当に頼りになりません」
「ん?あれ?何でかな?僕は悪くないのに?」
「つべこべ言わずに豆を拾うのが鬼の仕事でしょう?なら、早く行動すべきだと思うのですが」
「うっうっう……理不尽過ぎるけど逆らえない僕の定めよ…」
「嘆いていないで。私も手伝いますから」
「バラまいた本人だからね。そりゃ手伝うよね。てか、ここ物置の様な汚い場所だからいっそのこと豆ごと掃除機で吸えば良いんじゃない?」
「…先輩にしてはまともなことを言いますね」
「照れるー」
「……」
「無表情で掃除機かけてる後輩ちゃん見て思ったんだけどさぁ!」
「掃除機の音でよく聞こえません!」
「後輩ちゃんって良いお母さんになりそうだよね!」
「先輩の良いお母さんの判断基準が分かりません!…って、何も私まで大声出さなくてもスイッチ切れば良いだけですよね」
「今日の後輩ちゃんはいつもよりも可愛いねぇー…違うからね!?掃除機の吸い取り部分は鈍器じゃないからね!下ろしてみようか!」
「片付けようと持っただけなのに怯えられるのは心外です」
「あ、…ごめん」
「嘘です。エイプリルフールです」
「随分先取りエイプリルフールだね!?泣くのかと思ってドキドキしたっていうのに…」
「そうだ。先輩に言いたいことがありました」
「無視?まあ、良いけど…なぁに?」
「先日私の家に来た時にくれた手土産。…有り得ないです」
「そ、それはどういう評価?」
「何故珍味を丁寧にラッピングして渡したんですか。私が珍味大好き。はぁはぁ。珍味ないと生きてけない。みたいなことを言う様に見えたのですか」
「うん」
「正直ですね。そんなこと思われたの初めてですよ」
「だって珍味って美味しいじゃん。それを後輩ちゃんと一緒に食べたくってさぁ」
「アレは父の胃袋に入りました」
「うそん。でも、良いよ。喜んでくれたのなら」
「はぁ…つくづく先輩の行動は頭を痛くさせますよね。それでは定時なので、お先に」
「へっへへー。またねー」