3月
「後輩ちゃん。3月26日は何の日だと思うかい?」
「はて。それだけの事を言いたいが為に大雪の中やって来たんですか?先輩の家と私の家は住所的には大分離れているはずですけど」
「警報がなってるみたいだね。腰まである雪を掻き分けて歩くってのは結構辛いよ。それより、3月26日だよ」
「知りませんけど。まだまだ先の事じゃないですか。面接日とか、試験日ですか?」
「ちっちっちっ。後輩ちゃんは甘いなー。無駄に勉強ばかりしてたから、社会の動きについていけてないんじゃないの?」
「先輩程社会から見捨てられた人間に言われると、申し訳なく感じますね。雪玉当てますよ」
「こちらとら完全防備のスキーウェアさ。ばっちこい……じゃなくて、本当に知らないのかい?」
「まさかとは思うのですが、新幹線開通……ですか?」
「………………おぅふ」
「当たるとは思いませんでした。先輩が以前に青森函館間の新幹線開通の話をしていたな、確か3月末だと話していたな、と記憶を遡っただけですよ」
「僕の言葉を覚えててくれてるなんて嬉しいや」
「意味のないくだらない会話でも、頭の隅っこには残ってるんですね」
「そうそう。もう少しで新幹線開通するって喜びを伝えに来たんだよ。いやー、嬉しいなぁ」
「先輩は、函館観光大使にでもなる気ですか。それとも、回し者ですか」
「いんや。どんな話題でも良いから後輩ちゃんの家に行く名目が欲しかったのさ」
「先輩は手放しに喜んでますけど、以前までは新幹線が作られずとも飛行機や夜行列車で移動できてたんですよ。なら、わざわざ高い金だして、新幹線に乗る必要ないですよね」
「ほう」
「最初は試しに乗るかもしれませんが、継続するでしょうか?しなければ、運営費だけが馬鹿にかかるだけです。赤字のそれらを賄うのは北海道民の税金。……どうなるんでしょうね」
「……とてつもなく良いこと言ってるのは分かるけど、手足の感覚がどんどんなくなってきたんだよね。ねえ、僕立ってる?」
「最後まで締まらない人ですね」
「そりゃどうも」
「こんな所で立ち話もなんですから、家の中に入れてあげましょうか?その壊死寸前の四肢に免じて」
「その台詞は冒頭で聞きたかったよ。まさか、読者も僕らがインターホン越しに会話してるだなんて思ってないだろ?」
「でしょうね。だって、警報出ているのに外に出るなんて自傷行為じゃないですか。嫌ですよ」
「自傷行為をさせるのならば、これは他傷なのかな?」
「つべこべ言わないでさっさと家に入ったらどうですか?気が変わってこの雪の中ほっぽりだしますよ」
「止めてください、死にます、助けてください」
「最初からそう言えば良いものを」
「へーへー。おじゃましまーす。はい。これは、ご両親に渡してね。ちゃんとした手土産だから」
「ちゃっかりと上がる気で手荷物まで持ってきているじゃないですか。まったくですね」
「それほどでも」
「……いつものはしないんですか?」
「ん?いつものって?」
「またね、ですよ。今日は長くなりそうなので早めに切り上げましょう」
「つまりはまたねの後は後輩ちゃんと僕だけの未公開秘密のレッスンタイムって事だね!!?ひゃっふぅうううううい!!まったねー!!」
「……期待してることはないですよ。それでは読者さん。長くなりそうなので、この辺で」




