11月
「でぃっせんばー」
「……」
「でぃっせんばー」
「…私はどう返事すれば良いのですか」
「でいっ…痛い、痛いよ!?喋ってる途中に叩くなんて一体どうしたの!」
「でぃっせんばー、でぃっせんばーと軽く嘲笑している様な表情で私を見てくるのに腹が立ちました」
「全く悪びれようとしないね。それでこそ後輩ちゃん」
「くねくねしている人に頭を撫でられるのがどれだけ屈辱的か分かりますか?…まあ、良いです」
「あら?後輩ちゃんにしては、めっずらしー」
「私を何だと思っているのですか。あと、今までに3回しか会ったことないのによく私の事を知ってますね」
「ふふふ。僕の情報網を嘗めないでよね!あっ、でも舐めるのはウェルカーム…って、痛い。痛い!?」
「私の蹴りを受け取れるんですよ。誇りに思いなさい」
「ううーん。後輩ちゃんは足癖が悪いちょめちょめちゃんだね」
「先輩は手癖が悪そうですね…チャラい言葉使い…ヘドが出ます」
「えっへへー…って。アレ?もう蹴らないの?」
「会話同好会なんですよね。なら、会話しなくちゃいけないじゃないですか」
「後輩ちゃんは変な所真面目だねー。狭い倉庫に男女2人って言ったらすること決まってるじゃ…いや、ウソウソウソウソ!!手ぇ、出さないから!」
「今日程、先輩を殺したいと思った日はありません」
「ね?信じて?何もしないよ!?だからその鈍器(そこら辺にあった花瓶)を下ろして、ね!?」
「そんなに泣いて懇願している姿を見ると呆れを通り越して可哀想に思えてきましたよ」
「……ひっく。うぅー、怖かったー」
「高校2年生にも男子が泣かないで下さい」
「ぅー…ひっく」
「あー、もう。会話してあげますから泣き止んで下さい。ね?」
「……」
「先程、でぃっせんばーと言ってましたよね。アレは何か理由があったんですか?」
「でぃっせんばーを知らないの?」
「知ってますよ。12月の英訳です」
「ぷふっ。知らないんじゃーん」
「……は?」
「11月だよ?後輩ちゃんは頭良い眼鏡っ娘なのに知らないんだねぇ。こぉんな簡単なこと」
「先輩、眼鏡の装着有無は頭の良さと関係しませんし、こんなに馬鹿にされても腹が立たなかったのは初めてです。流石ですね」
「ん?何か褒められてる?」
「よく受験成功しましたね。先輩が合格出来たのは試験官がミスをしていたか自暴自棄になっていたんだと思います。それじゃなきゃ有り得ません」
「よく分からないけど、え、何?僕の方が有利な立場だったなのにいつの間にか主導権が握られている…様な?」
「あ、定時ですね。それでは帰ります」
「会話同好会3回目からは新しい制度が出来たんだね。知らなかったし一緒に話す時間が短くなるなんて寂しいなぁっ…て、もう行っちゃったの?またねー!」