4月
「いやぁ、後輩ちゃん。春だねぇ。春日和だねぇ」
「残念ながらここは北国で桜が開花するのは5月後半ですよ。第一まだ雪が積もってるじゃないですか」
「そんなつれないこと言わないでよー。だって、大半の人が4月を春だと思ってるじゃんか。だから、僕も乗っただけで」
「日本の人口の大半は4月には雪融けしてますからね。3月にもう桜が見られる月もある位ですから、私達北国の感性はminorityということになります」
「マイノリティ?なんじゃそりゃ」
「minority……少数派、という意味ですね。minorは知ってますよね?」
「うん。そりゃ知ってるよ。その、マイナーと似た意味ってこと?」
「まあ、そうですね。そう考えたら分かりやすいでしょう。つまり、majorityの逆だと覚えておいてください」
「後輩ちゃんは知らない単語を出して僕を混乱させるのが上手だね。なになに?マイナーの反対が魔女?」
「majorityです。あと、混乱させる気は毛頭ありません。一応、常識として覚えておくべきですよ」
「残念、後輩ちゃん。僕は常識よりも先に卒業するための勉強内容を覚えなくちゃいけないんだ」
「自分で言いますか、確かにそうですけど」
「あ、話戻るけど北海道に新幹線が来るねー。正確には北海道の新函館北斗間に」
「話戻った所か更に先へ進みましたよ。そんな話、1度か話題に出しましたっけ?」
「ような、気がする。気のせいかも。まあまあ、置いといて。今年末に開業するらしいけど、もしも遅れても、来年の3月末迄には開業するって聞いたよ」
「そうですね。北海道に新幹線なんて夢のまた夢の話だと思ってたのですが、簡単に実現されて拍子抜けしましたね。勿論、見えない所で職人さん達の壮絶な努力があるのは分かってますが」
「僕、一度も乗ったことないから、乗るのが夢なんだ。その時には後輩ちゃんも行こうね」
「私は乗ったことあるので良いです。乗る瞬間まではいてあげますから、好きに本州を旅してください」
「なんて寂しい旅行の始まり方なんだろう。未練たらたらでまともに旅を楽しめないよ」
「でしたら、乗らなければ良いじゃないですか」
「そ、それを言われたら、僕の夢物語がゼロになるよ」
「ですね。あ、そう言えばこないだ札幌に繋がる新幹線の開業する日が5年早まりましたよね」
「そうそう。今から15年後の2030年。僕が33歳、後輩ちゃんが32歳になる時か。……僕らはどんな風になってるんだろうね」
「単純計算するとそうですけど、現実の時間の進みとこの世界は違いますからね。サザエさん状態になるかもしれませんよ」
「永遠の18歳みたいな?うあー、ギリR指定の物を買えるからよしとしよう」
「駄目ですよ。判断基準が糞ですね。でも、一年生の時に出会ってこうしてお互い三年生になってる訳ですから、成長するんじゃないですか?」
「それでも良いや。後輩ちゃんとずっと一緒にいれるなら」
「それも、良いかもしれませんね。こんな穏やかな日常が続くのなら……」
「え、どうしたの、後輩ちゃん。熱でもあるの?」
「貴方から話を振ったんですよ。たまには乗ってあげようかと思っただけじゃないですか」
「や、そんな、本音言われると、照れて僕が機能しなくなるから止めて……」
「ああ、そうですね。思い当たる節が多々ありますから、この会話は止めましょうか」
「そうしましょうか。あ、でも、定時の前に1つ言いたいことがある」
「どうぞ、聞いてあげます」
「僕は新幹線が札幌まで来ることに反対だ。そりゃ、当初は新幹線だわーい、だなんて手放しに喜んでたけど、札幌までの新幹線は7~8割近くトンネルの中だと聞いて変わった。つまり、自然を壊すんでしょ?田舎じゃなくても何処でも狸や狐とコンニチハが当たり前な僕らの生活が変わってしまうかもしれない。僕はそんなの嫌だ。だから、僕は反対だ」
「ですね。……新幹線開通には色んな意見があります。本州の人には分からない地元民の気持ちがホンの少しでも伝わって欲しいですねって、先輩こそ熱あるんじゃないですか?こんな真面目なことを言うなんて先輩らしくないです」
「今までどんな目で後輩ちゃんに見られてきたのか分かった気がするよ」
「本当に熱あるじゃないですか。先輩、平熱何度ですか」
「6以下5以上な感じ」
「熱すぎますから。絶対風邪引いてますよ。定時ですし、先輩はこんな状態ですし、今日の部活はお開きにしましょう」
「僕は熱なんてないよ。ただ頭がガンガン痛くて吐き気がして全身熱くて関節痛が酷いだけでなんともない」
「既に風邪の随伴症状が出てるじゃないですか。風邪ですよ。一度診てもらうことをお薦めします。では、失礼します」
「それでは、さようなら」
「いつものまたね、すら出せないとは相当重症な風邪ですね」




